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三 追録~花の色は~

天つ風...

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「修学旅行どうでした?」

「楽しかったけど、なんか疲れた.....」

 ここは、再びじいちゃんの家。俺は馬頭さんにお茶を淹れてもらって、教科書、参考書とにらめっこ。

 修学旅行から帰って、楽しい思い出に浸る間もなく、すぐに中間テストだよ。ひどくない?
 もっとも俺は楽しいばっかじゃなくて、あれやこれやあって頭パンクしそうだったけど。
 そうそう、馬頭さんと牛頭さんにも、テーマパークでキャラクターのキラキラの缶に入ったクッキーをお土産にあげたら凄く喜んでくれた。

『美味しいです』

 さっそくパクつきながらニコニコ。良かった。地獄にはスイーツなんかなさそうだもんな。

 もちろん、お袋や加菜恵にも西陣織りのポーチとかご当地スイーツを買ってきたんだけど、加菜恵は水本にもらったテーマパークのキャラクターグッズに狂喜してた。
 この辺がモテる男とモテない俺の違いなのか。うん、ひとつ勉強になった。

 で、試験勉強しながらやはりふと思うのは、

ー深草少将、ちゃんと成仏したかな?ー

てこと。閻魔さまは大丈夫って言ってたけど、やっぱり心配。結構、頑固なんだよね、あのオッサン。

『もう、転生の準備に入ってますよ』

って牛頭さん達も言ってくれたから、信じよう。

 あれから深草陸海も変わったしな。変わったっていうか、素に戻ったのかな。
 ビックリするほど気さくでフランクになった。反面、群がる女子を塩対応でかわすようになったのはちょっと謎。
 それ以上にビックリだったのは、深草くんが帰国子女だった件。
 両親は日本人だけど、中学校まで、ヨーロッパにいたんだって。お父さん、外交官だって。すんごいエリート。
 うちに転校してきたのは、体調崩して帰国して、入院してたからなんだって。


 牛頭さんにそのことを話したら、

『まぁ外国ならおいそれと近寄れないと思ったんじゃないか?』って。

 結構な力技だな。おとうさん。ま、変わり者だしな。

 結局、深草少将は執念で日本に帰ってきて、小野小町を探してたわけだ。
 それを察知して、父親の小野篁は、現世に出張って警戒していたらしい。無事に一件落着して良かったよ、ホント。

 でもさ、深草少将の件が片付いても、小野崎先生はちゃんと学校にいる。

『お前のこの成績で、安心して向こうにいられると思うのか...!?』

 帰らないの?ってさりげなく訊いてみたら、真っ赤っ赤な古文の小テストを突き付けられて睨まれた。

 野狂な平安時代の天才は、とんでもない教育パパでした。

「それにね.....」

 って、少しばかり深刻そうな表情で馬頭さんが、耳打ち。

「面倒な話が舞い込んできたらしいんですよ、閻魔庁に」

 はぃ?

「今、調整中ですが、もしかしたら手を貸していただくかもしれません」

 はぃ?

 ちょっと待って。
 俺、来年は受験なんだけど。忙しいんだけど。

「それはなんとか調整つけますから、まずは勉強、頑張りましょ」

 はい、そうでした。

 中間テスト終われば、もうひとつの学生さんの一大イベント、学園祭だしね。

 うん、学園祭のアイドルコンテストを楽しみに、俺は頑張る!

 古文も歴史も恐くないさっ!?






天つ風 雲の通ひ路 吹きとぢよ をとめの姿 しばしとどめむ

(僧正遍昭 百人一首 第12番)
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