バックレそびれた(元)悪役令息の冒険日記

葛城 惶

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いろいろと難しいお年頃なんです?

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 干魃の村で自信をつけて、俺達の旅の仕方は変わった。

 相変わらず、町では商売をし、地方の村に行ったら、教会や村長さんの家に泊めてもらう代わりに村の人達の仕事を手伝う。

 収穫の手伝いや土木工事の手伝いをした。
 肉体労働に向かない俺やルードヴィヒは、病気の人にポーションをあげたり、薬を調合して、治癒魔法を施した。
 主人公ちゃんやニコルは炊き出しの手伝い。
 アントーレは......やはり王子様だから肉体労働は向かない。すぐに音をあげるわけじゃないけど、はっきり言って、不器用。手際が悪すぎて、おじさん達に

『あっち行ってろ!』

と怒られる始末。
 炊き出し班にはナイフや包丁の使い方が危なすぎて見ていられないから、と返品を食らった。それでも、


『私にも何か手伝わせろ』

とぷんすかしてむくれるので、みんなが作業している間の子ども達の面倒をみてもらうようにした。

「私が提案したのに!」

 そう村での手伝いはアントーレが提案したのだ。金品での支払いはあまり村人のためにはならない。村長は豊かになるだろうし、教会への献金は教会の雨漏りは直せる。
 でも、お礼はもっと村のためになることがいい、と言ったのはアントーレだった。
 無論、村長や司祭さんにはそれなりのものは渡すけどね。

 ぷりぷりして不貞腐れながらも、子ども達に囲まれるとアントーレは笑顔になった。絵本も読んであげるし、お弾き遊びには自分も夢中になっていた。
 本当に幸せそうで、その顔は慈愛に満ち溢れていた。

「アントーレはもしかしたら、いい君主になれるかもな」

 木の影からこっそり覗きながら、俺が呟いたら、マグリットが
 
「そうかもな......」

と答えた。俺はその表情がほんの少し陰りを帯びていたことが、ちょっとばかり気になったけど、疲れてるんだろうと思った。

 それよりもっと不自然なのは、アントーレだった。
 普通に誉められれば、にこにこして、自慢気に胸を張る。

『ラフィのためたから』

『ラフィが喜んでくれるから』

とか、頭が痛い、というかキモいセリフを連発して、俺に頭を抱えさせるのだが......。

 ある時、ケヴィンに、

「アントーレはいい君主になれるよ」

と言われた途端に、真顔になって、これ以上ないくらい怒りを顕にして、怒鳴った。

「私は君主になんかならない!」

 俺達はアントーレのあまりの怒りの激しさに硬直した。そして彼がとても悲しそうな顔で

「ごめん。悪かった.....」

と呟くまで、言葉はおろか、身動ぎすらできなかった。
 ケヴィンは極めて軽いノリで冗談半分に茶化しただけなのに。
 アントーレがこれまでにないくらい、本気で怒ったことは、俺達には少なからずショックだった。
 そして帝位に関する話は一切しなくなった。



 不自然なことはもうひとつあった。
 クリスが、元主人公が時折、夜更けになると姿が見えなくなるのだ。
 街中や賑わいのあるところなら、ナンパでもしに行ったのかと思うんだけど、寂しい村や野宿の時にも、消える。ほんの小一時間で戻ってくるのだが。

ー転移魔法だな......ー

 一緒に様子を伺っていたマグリットが頷いた

元主人公ちゃんは転移魔法は使えないはずだ。彼自身はすくなくともそう言っていた。

ーなぜ......ー




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