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アントーレside ~想定の範囲内、だけど...~
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「狙われております」
サマリアが相変わらず淡々とした口調で言った。
「やっぱりね」
私も淡々と答える。
信じたくはなかったけれど、あり得ないことではないのがキツい。
あ、申し遅れた。私はアントーレ・マーラー。
ラフィアン・サイラスの元婚約者だ。今は求婚者になるのかな?
色々あって、卒業記念パーティーで婚約解消を申し出て、改めて、ラフィアンに結婚を申し込んだ。
何やってンだって?
堂々とスタートラインに立ちたかったんだ。きちんと仕切り直して、ね。
学園に入学してきた婚約者ラフィアンは、以前に僕の知っていたラフィアンとは違ってた。以前のラフィアンは、まるで人形のようだった。マーラー帝国の大貴族の令息に相応しい生きた人形以外の何物でもなかった。
十歳の私はその重圧に耐えきれず彼の手を振りほどき、そして彼は階段から転落して......別人になった。
明るくて、生き生きとした活発な少年に変貌した。
別人じゃないかって?
それはない。彼の額にはほんの小さくだけど、階段から転落した時の傷が残ってる。普段は前髪に隠れて見えないけど。
それに温泉でも確かめたし...ゲフンゲフン。
とにかく、あんなに綺麗な子は世界中を探しても他にはいない。菫色の瞳に鮮やかな金色の髪、鈴の音のような声を紡ぎ出す薄紅の薔薇のような唇。
彼はまったく意識していなかったけど、ラフィアン・サイラスこそは学園の聖天使だった。学園の闇までキレイにしちゃうなんて、以前のラフィアンには考えられいことだった。
だから私も変わらねばならないと思ったんだ。彼を傷つけたことを詫びて、彼に相応しい男に生まれ変わりたかった。
たとえそれが危険なことでも、彼らとならなんでも出来る気がした。
彼と共に旅をして、彼と彼の友人達と語り合い笑い合える時間はとても幸せだった。
やっと本当の自分に戻れた気がしたんだ。
でも......。
「狙われているのは、私だけか?」
「おそらくは......」
サマリアは私の言葉に小さく頷いた。
「アントーレ様を亡きものにして、ラフィアン様を奪うおつもりではないかと...」
「それだけじゃないだろうけどね」
あの人は私が嫌いだ。
あの人は私が父上に褒められるととても悲しい顔をする。
あの人は私が父上を獲ったと思っている。
あの人のほうが私よりずっと優秀で、
あの人のほうが私よりずっと父上に期待されて、
あの人のほうが私よりずっと父上に愛されているのに。
そして、私はあの人が大好きなのに。
「魔王を退治するまでは、手を出しては来ないと思う」
私の言葉にサマリアは黙って頷いた。
あの人は好きだけど、私はもうボンクラに戻りたくない。
ラフィアンに誉めてもらえる、
ラフィアンに尊敬される男になりたい。
だから......
この旅が終わったら、ラフィアンと逃げる。魔王を退治したら、ラフィアンと一緒に逃げるんだ。
あの人の手の届かないところへ.....。
「戦わぬのか?」
背後からのいきなりの声にギョッとする。
部屋の壁に寄りかかり、深紅のマントを目深に被って、その人は短く言った。
「私はあの人とは戦わない」
私はきっぱりと言い切った。
その人は唇の端を歪めて小さく笑った。
「魔王退治、同行させてもらう。ついでにお主も護ってやろう」
「私は私の身は自分で護る」
そうありたいと思ってる。
その人は小さく鼻で笑って、拳を出した。
私は拳を合わせ、その人の唇がわずかに微笑むのを見た。
サマリアが相変わらず淡々とした口調で言った。
「やっぱりね」
私も淡々と答える。
信じたくはなかったけれど、あり得ないことではないのがキツい。
あ、申し遅れた。私はアントーレ・マーラー。
ラフィアン・サイラスの元婚約者だ。今は求婚者になるのかな?
色々あって、卒業記念パーティーで婚約解消を申し出て、改めて、ラフィアンに結婚を申し込んだ。
何やってンだって?
堂々とスタートラインに立ちたかったんだ。きちんと仕切り直して、ね。
学園に入学してきた婚約者ラフィアンは、以前に僕の知っていたラフィアンとは違ってた。以前のラフィアンは、まるで人形のようだった。マーラー帝国の大貴族の令息に相応しい生きた人形以外の何物でもなかった。
十歳の私はその重圧に耐えきれず彼の手を振りほどき、そして彼は階段から転落して......別人になった。
明るくて、生き生きとした活発な少年に変貌した。
別人じゃないかって?
それはない。彼の額にはほんの小さくだけど、階段から転落した時の傷が残ってる。普段は前髪に隠れて見えないけど。
それに温泉でも確かめたし...ゲフンゲフン。
とにかく、あんなに綺麗な子は世界中を探しても他にはいない。菫色の瞳に鮮やかな金色の髪、鈴の音のような声を紡ぎ出す薄紅の薔薇のような唇。
彼はまったく意識していなかったけど、ラフィアン・サイラスこそは学園の聖天使だった。学園の闇までキレイにしちゃうなんて、以前のラフィアンには考えられいことだった。
だから私も変わらねばならないと思ったんだ。彼を傷つけたことを詫びて、彼に相応しい男に生まれ変わりたかった。
たとえそれが危険なことでも、彼らとならなんでも出来る気がした。
彼と共に旅をして、彼と彼の友人達と語り合い笑い合える時間はとても幸せだった。
やっと本当の自分に戻れた気がしたんだ。
でも......。
「狙われているのは、私だけか?」
「おそらくは......」
サマリアは私の言葉に小さく頷いた。
「アントーレ様を亡きものにして、ラフィアン様を奪うおつもりではないかと...」
「それだけじゃないだろうけどね」
あの人は私が嫌いだ。
あの人は私が父上に褒められるととても悲しい顔をする。
あの人は私が父上を獲ったと思っている。
あの人のほうが私よりずっと優秀で、
あの人のほうが私よりずっと父上に期待されて、
あの人のほうが私よりずっと父上に愛されているのに。
そして、私はあの人が大好きなのに。
「魔王を退治するまでは、手を出しては来ないと思う」
私の言葉にサマリアは黙って頷いた。
あの人は好きだけど、私はもうボンクラに戻りたくない。
ラフィアンに誉めてもらえる、
ラフィアンに尊敬される男になりたい。
だから......
この旅が終わったら、ラフィアンと逃げる。魔王を退治したら、ラフィアンと一緒に逃げるんだ。
あの人の手の届かないところへ.....。
「戦わぬのか?」
背後からのいきなりの声にギョッとする。
部屋の壁に寄りかかり、深紅のマントを目深に被って、その人は短く言った。
「私はあの人とは戦わない」
私はきっぱりと言い切った。
その人は唇の端を歪めて小さく笑った。
「魔王退治、同行させてもらう。ついでにお主も護ってやろう」
「私は私の身は自分で護る」
そうありたいと思ってる。
その人は小さく鼻で笑って、拳を出した。
私は拳を合わせ、その人の唇がわずかに微笑むのを見た。
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