バックレそびれた(元)悪役令息の冒険日記

葛城 惶

文字の大きさ
23 / 36

不覚をとりました..... ※

しおりを挟む
「入るよ」

「うん」

 マグリットが衣服を脱いでおずおずと近寄ってきた。見上げると、筋肉の綺麗に乗った逞しい肢体が視線を奪う。

「マグ、また背が伸びた」

「ラフィも伸びてるじゃん」

 俺達はもう十八歳。はにかみがちに笑うマグリットの顔は大人の男の顔だった。
 ダンジョン攻略の間に受けた傷があちこちにあったが、それ以外にも古い傷痕が幾つも腕や脚に残っている。

「騎士って大変なんだな」

「ん?」

「傷だらけだ」

「大したことないよ」
 
 ざばりと肩から湯をかけて、マグリットがにっと笑った。

「やっぱりふたりはきついかな」

 俺ひとりなら、そこそこ手足は伸ばせるが、大の男ふたりとなるとさすがに狭い。

「こうすれば、大丈夫」 

「わわっ......」

 マグリットが俺の腕をぐいっと引いた。身体が反転して、俺はマグリットの身体の上に抱き抱えられるように倒れ込んだ。

「ラフィはまたキレイになった」

 低い声が耳許で囁いた。耳から犯されるってこういう感じ?
 ヤバい。ヤバいシチュエーションだぞ、これ。

 なんとかマグリットの理性を喚起せねば。尻大事。

「マグはさ......」

「ん?」

「この旅が終わったら、また騎士団に戻るの?」

「トリスタン様にはそう言われてる」

「トニー兄さんか......」

「ラフィはどうするの?学園に戻るの?」

 俺が旅立った時、俺は学生であと二年の就学期間を残していた。

「どうしようかな......」

 治療師の資格は既に取っている。世の中に出てやっていけないことはない。

 突然、マグリットの表情が険しいなる。

「アントーレ殿下と結婚するの?」
 
 ぐるりと身体を反転させられ、視線がぶつかり合う。俺はくすっと小さく笑った。

「それは無い」

「なぜ?」

「僕は、アントーレと結婚したいとは思ってないから」

 俺にとって、やっぱり結婚は女の子とするもんだ。可愛い女の子が白いウェディングドレスで隣でにっこり微笑む。文金高島田でもいいや。そうして、毎朝、ー行ってらっしゃいーって笑顔で送り出してもらって......。だから、

「じゃあ、俺と結婚して」

とマグリットに言われて、

「ほへ?」

って変な声が出ちまった。途端にマグリットが哀しそうな顔をする。

「俺が嫌いなの?」

「そんなこと無いって......」

 嫌いな相手と一緒に風呂なんか入らないから。

「俺達、もう大人なんだよ、ラフィ」

 そう、この世界の成人は十八歳。ある意味、前世の世界とあまり変わらない。

「ラフィ、君が欲しいんだ」

 ドキリと胸がはねた。脚のあたりになんか硬いものが.......。
 そ~っと、そ~っと目をやると、マグリットのパオンが、見事にパオンしてました。それにしてもお前の立派ね。憎たらしいわ。
て、そんな場合じゃない。

「マグ、それは......ダメ」

 そんな立派なもんお迎えしたら、絶対、大惨事なことになる。座薬だって入れたこと無いのに。
内視鏡検査だって、どえらい恥ずかしかったし、痛かった。

「なぜ駄目なの?」

「それは......」

 俺は口ごもった。だって怖いんだもん。それに俺は男。入れる側であって入れられる側じゃないもん。わかって......って言っても無理みたい。
 マグリットさん、目が野獣になってます。まじ怖いです。
 俺は覚悟を決めた。

「マグ、信じられないかもしれないけど、僕は......」 

 

 俺は転生してきたこと。前世は地球の日本というところにいて、サラリーマンしてたこと。そこには男と女がいて、普通は結婚は女性とするもので、エチエチなことも女性とするものであって......。

「ふ~ん」

 マグリットはひとしきり俺の話を奇妙な顔をして聞いていたが、俺が話終わると、にっこり笑った。わ、わかってくれたかな?

「だからね、マグ。マグの事は大好きだけど、恋愛っていうのはさ......」

 言い終わらないうちに、俺の身体が宙に浮いた。えっ?

「大丈夫だよ。ラフィは前世とかの世界の女の子とかよりずっと可愛いから」

 いや、そうじゃなくて......。
お前、なんか勘違いしてない?

 マグリットは俺をいわゆるお姫様抱っこで、満面の笑みを浮かべた。格好いいね、お前。本当にお前の方が王子さまっぽいわ。
  
「大丈夫、優しくするから.....」

 待て待て待て、違うだろ!
 お前、人の話聞いてる?

「暴れると危ないよ。落ちるとケガするよ」

 そうして、マグリットは俺をそのまま寝室に運び......。




......後は訊かないで。



 結局、俺は翌日、一日ずっとベッドで唸って過ごす羽目になった。ぐっすん.....。





しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?

cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき) ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。 「そうだ、バイトをしよう!」 一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。 教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった! なんで元カレがここにいるんだよ! 俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。 「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」 「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」 なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ! もう一度期待したら、また傷つく? あの時、俺たちが別れた本当の理由は──? 「そろそろ我慢の限界かも」

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学で逃げ出して後悔したのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される

水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。 行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。 「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた! 聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。 「君は俺の宝だ」 冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。 これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。

処理中です...