30 / 36
どうしたんだよ!?
しおりを挟む
そして......
みんなの転移が済み、俺がマグリットを転移させようとした時、マグリットがひどく転移を嫌がった。
「何処かへ、ふたりで逃げないか?」
急に言い出したマグリットに俺は困惑した。
「なんでだよ?僕は王都に戻るよ。僕だって決着をつけなきゃいけないんだ」
言い切って魔方陣を描く俺の腕をマグリットが強く掴んだ。
「公爵と対峙するなんて無茶だ」
「無茶は承知だよ」
構わず、俺は魔方陣を完成させた。詠唱によって陣がまばゆく光りだした。
「行くの?行かないの?」
「君が行くなら、行く」
渋るマグリットとともに転移した先生の家は.......なぜか騎士団に囲まれていた。
中心にいたのは......トニー兄さんだった。
「な......ぜ?」
呆然とする俺にレイトン先生が淡々と言った。
「読まれていたみたいだね。それとも情報が漏れていたか.....」
「まさか、クリスが?」
歯噛みするアントーレに先生は小さく首を振り、すっと腕を伸ばした。
「君だよね。ルードヴィヒ君」
杖に手を伸ばす暇もなく、ルードヴィヒの身体は先生の魔術で捕獲された。
「ルー、なぜ......?」
驚愕して言葉を失う俺に、先生が静かに言った。
「私達が旅立つ前、彼らはそれぞれの上司に謁見している。その時に何かを指令されていてもおかしくはない。......ルードヴィヒ君が私達に隠れて使い鳥を飛ばすのを、ウチのドローンカラスがキャッチしている」
「僕はただ......報告を入れるよう指示されていただけです」
光の輪の中でもがきながら、ルードヴィヒが言った。
「そうだろうね。......ラフィアンがサイラス家と敵対するとは思ってはいなかったからね。最後の使い鳥は転移することを決めた直後だろう?」
ルードヴィヒは唇を噛んで項垂れた。
「だって父さんの......」
「そう。ワグナー先生はサイラス家との関わりが深い。人質みたいにされる可能性もあった」
ルードヴィヒは小さく頷いた。
直後に、マグリットが腰から鞘ごと剣を外し、アントーレの前に膝をついた。
「申し訳ございません、殿下」
「マグリット?」
「俺は、殿下を亡き者にするように命じられておりました。けれど、やはり出来なかった......」
やはり項垂れるマグリットに、俺は呆然とした。
「なぜ?マグは、僕をちゃんと守っていたじゃないか!?」
「君を守ることと、私を排除することは矛盾しないよ。ラフィ」
アントーレが小さく首を振った。
「けれど、マグリットは私に向かって剣を抜くことはしなかった。ダンジョンでもあの隠れ家でも、いくらでも私を殺すことはできた。でもしなかった」
アントーレの言葉に、マグリットがはっ......と頭を上げた。
「彼の......君への愛も帝国への忠誠も本物だよ」
アントーレの言葉に耐えきれなくなったのか、マグリットは、苦しげに真相を吐露した。
「殿下を亡き者にして、ラフィを連れて逃げろ......と。ほとぼりが覚めたら、ラフィと結婚させてくれるって......トリスタン閣下が......」
「トニー兄さんが?」
俺は地面が崩れ落ちる音を聞いた気がした。その場に崩れ落ちそうな身体をアントーレが抱き止めた。
「それは嘘だな」
ふっと目をやると、エメルさんが立っていた。
「お前が命令を実行したら、お前は王子を殺して婚約者を奪って逃げた罪人として殺されるだけだ」
エメルさんの言葉が突き刺さる。
「でも何故そうまでしてアントーレを......」
幼い子供の俺達を婚約させたのは父親だ。
「アントーレ、ジラルド様が病で急死された。三月前だ」
「ジラルド様が?」
エメルさんの言葉にアントーレが目を見開いた。ジラルド様は確か、ウィスタリア殿下の配偶者だ。サイラス家と並ぶマーラー帝国の有力者、ナジェスタ家の出身だ。
「おそらくは.......毒殺だ。サイラス公爵がとうとう牙を剥いたな」
つまり、俺を皇太子のパートナーの後釜に据えるために、アントーレが邪魔になった......というのか。
「なぜ!?父はそんな人じゃない!」
喚く俺を制して、エメルさんが厳しい顔で言った。
「黒幕がいる、と言ったろう?」
「それはともかく......この包囲をなんとかしないと」
トニー兄さんは強い。戦って正面突破は難しい。だが、もう一度、転移するだけの体力は無い。
「なに、心配はいらない。もうすぐ迎えがくる」
エメルさんがニヤリと笑った。
みんなの転移が済み、俺がマグリットを転移させようとした時、マグリットがひどく転移を嫌がった。
「何処かへ、ふたりで逃げないか?」
急に言い出したマグリットに俺は困惑した。
「なんでだよ?僕は王都に戻るよ。僕だって決着をつけなきゃいけないんだ」
言い切って魔方陣を描く俺の腕をマグリットが強く掴んだ。
「公爵と対峙するなんて無茶だ」
「無茶は承知だよ」
構わず、俺は魔方陣を完成させた。詠唱によって陣がまばゆく光りだした。
「行くの?行かないの?」
「君が行くなら、行く」
渋るマグリットとともに転移した先生の家は.......なぜか騎士団に囲まれていた。
中心にいたのは......トニー兄さんだった。
「な......ぜ?」
呆然とする俺にレイトン先生が淡々と言った。
「読まれていたみたいだね。それとも情報が漏れていたか.....」
「まさか、クリスが?」
歯噛みするアントーレに先生は小さく首を振り、すっと腕を伸ばした。
「君だよね。ルードヴィヒ君」
杖に手を伸ばす暇もなく、ルードヴィヒの身体は先生の魔術で捕獲された。
「ルー、なぜ......?」
驚愕して言葉を失う俺に、先生が静かに言った。
「私達が旅立つ前、彼らはそれぞれの上司に謁見している。その時に何かを指令されていてもおかしくはない。......ルードヴィヒ君が私達に隠れて使い鳥を飛ばすのを、ウチのドローンカラスがキャッチしている」
「僕はただ......報告を入れるよう指示されていただけです」
光の輪の中でもがきながら、ルードヴィヒが言った。
「そうだろうね。......ラフィアンがサイラス家と敵対するとは思ってはいなかったからね。最後の使い鳥は転移することを決めた直後だろう?」
ルードヴィヒは唇を噛んで項垂れた。
「だって父さんの......」
「そう。ワグナー先生はサイラス家との関わりが深い。人質みたいにされる可能性もあった」
ルードヴィヒは小さく頷いた。
直後に、マグリットが腰から鞘ごと剣を外し、アントーレの前に膝をついた。
「申し訳ございません、殿下」
「マグリット?」
「俺は、殿下を亡き者にするように命じられておりました。けれど、やはり出来なかった......」
やはり項垂れるマグリットに、俺は呆然とした。
「なぜ?マグは、僕をちゃんと守っていたじゃないか!?」
「君を守ることと、私を排除することは矛盾しないよ。ラフィ」
アントーレが小さく首を振った。
「けれど、マグリットは私に向かって剣を抜くことはしなかった。ダンジョンでもあの隠れ家でも、いくらでも私を殺すことはできた。でもしなかった」
アントーレの言葉に、マグリットがはっ......と頭を上げた。
「彼の......君への愛も帝国への忠誠も本物だよ」
アントーレの言葉に耐えきれなくなったのか、マグリットは、苦しげに真相を吐露した。
「殿下を亡き者にして、ラフィを連れて逃げろ......と。ほとぼりが覚めたら、ラフィと結婚させてくれるって......トリスタン閣下が......」
「トニー兄さんが?」
俺は地面が崩れ落ちる音を聞いた気がした。その場に崩れ落ちそうな身体をアントーレが抱き止めた。
「それは嘘だな」
ふっと目をやると、エメルさんが立っていた。
「お前が命令を実行したら、お前は王子を殺して婚約者を奪って逃げた罪人として殺されるだけだ」
エメルさんの言葉が突き刺さる。
「でも何故そうまでしてアントーレを......」
幼い子供の俺達を婚約させたのは父親だ。
「アントーレ、ジラルド様が病で急死された。三月前だ」
「ジラルド様が?」
エメルさんの言葉にアントーレが目を見開いた。ジラルド様は確か、ウィスタリア殿下の配偶者だ。サイラス家と並ぶマーラー帝国の有力者、ナジェスタ家の出身だ。
「おそらくは.......毒殺だ。サイラス公爵がとうとう牙を剥いたな」
つまり、俺を皇太子のパートナーの後釜に据えるために、アントーレが邪魔になった......というのか。
「なぜ!?父はそんな人じゃない!」
喚く俺を制して、エメルさんが厳しい顔で言った。
「黒幕がいる、と言ったろう?」
「それはともかく......この包囲をなんとかしないと」
トニー兄さんは強い。戦って正面突破は難しい。だが、もう一度、転移するだけの体力は無い。
「なに、心配はいらない。もうすぐ迎えがくる」
エメルさんがニヤリと笑った。
10
あなたにおすすめの小説
魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由
スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの二人は、スキルを得た事で魔王討伐に旅立つ勇者と彼の帰還を待つだけのただの親友となる。
勇者と親友の無自覚両片想いのじれったい恋愛の物語。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
いい加減観念して結婚してください
彩根梨愛
BL
平凡なオメガが成り行きで決まった婚約解消予定のアルファに結婚を迫られる話
元々ショートショートでしたが、続編を書きましたので短編になりました。
2025/05/05時点でBL18位ありがとうございます。
作者自身驚いていますが、お楽しみ頂き光栄です。
転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~
トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。
突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。
有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。
約束の10年後。
俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。
どこからでもかかってこいや!
と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。
そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変?
急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。
慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし!
このまま、俺は、絆されてしまうのか!?
カイタ、エブリスタにも掲載しています。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる