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七章
53/雨上がり
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ショルダーバッグ、ヘアワックス、デオドラントスプレー、メンズ用のコロン。
男ならではの必需品を二人は揃えてくれる。
洗濯機も最新ではなく手頃な型落ち品を選んでくれた。
テキパキと買い進め、頼もしいな、こんな風に頼りになる彼氏がいたとしたら。
恋に縁遠い蓮美も、ちょっとだけ想像を膨らませたりする。
あらかた買い揃えると食材探しも手伝ってくれた。
「狐乃さん、前から気になってたんですけど……」
霧人が惣菜コーナーのひじきと狐乃を見比べる。
「何だ?」
「普段食った物ってどうなってるんですか?」
「俺も気にしてた、トイレに行かないですよね?」
言われてみれば蓮美も見ていない。
やおよろず生活安全所にも、もちろんトイレはある。
近代的で古くはない、温泉と同様に空間をつなげて移動させたらしいが、職員の利用はなく命と蓮美専用になっていた。
「食ったもんは力だ、自然の力に還元されて神通力に変わるんだ。形にはならねぇ」
「じゃあウンコは異次元にでも行くんですか、胃の中がブラックホールになってるとか?」
「説明を聞いてたか……」
「……」
誰かが言いそうなコメントだと隣で蓮美は考える。
誰であろう、命だ。
なぜこうも男子からウンコの話しを聞くのだろう。
もしかして世の男子の半分位がウンコに興味があるのだろうか。
将来彼氏ができたとしたら、ウンコについて語らう事はできるのだろうか。
生物は食物を供給すれば、体内から排泄物を出すのは当たり前だ。
場合によっては自然の力を借りてバクテリアが分解、新たなエネルギーを生み出すが、それは人類を救う資源となるかもしれない。
(※研究者の皆様「もう調査してる」)
明日にはウンコが光るかもしれない。
明後日にはウンコが空を飛ぶかもしれない。
「一年後にはウンコが地球を救うかもしれないっ!」
(※研究者の皆様「急すぎるわ」)
作者が熱い想いを馳(は)せていると、蓮美は支払いを終えて買い物は終了となっていた。
傘置き場で傘を取ると雨は止んでいる。
食品から運ぼうと、軽トラまでついて来た二人がゲラゲラ笑いだした。
「きゅっ、きゅっ、狐乃さんがっ」
「けっ、けっ、軽トラに乗っ、グフッ」
「これな、借りもんなんだがブレーキのかかりが甘いみたいでよ。確認したいから前に立ってくれ、俺の安全のために」
霧人と琉星はダッシュで駆け出し、代車を借りて商品を運び出してくれる。
洗濯機は店も手伝ってくれ、ブルーシートで固定して積み込みを完了した。
「助かりました」
「どう……」
「……いたし」
どういたしまして、と二人は言おうとしたが蓮美の後ろで狐乃が目配せをする。
気を利かせろや。
指示を出すアニキの眼(まなこ)は殺(や)る気満々だ。
「え、あ、な、なら、また店に遊びに来てよ。か、か、寛大な狐乃さんのおごりでいいから……」
「太っ腹なきゅっ、きゅっ、狐乃さんのおごりでいいから……」
嘘という名のすり鉢が割れんばかりに、琉星と霧人は全力でゴマを擦った。
「おいおい、お前ら~」
持ち上げられたアニキは白々しく棒で読む。
「まいったなぁ。こう言ってるし、近いうちに来てみない?」
「……ここで決めるのは」
彼女の表情が嬉しげではないと、勘のいい琉星はピンときた。
途中で狐乃と何かあって、返事に困っているのでは。
「いきなりじゃ予定もわからないよね」
財布を取りだすと名刺を一枚取り出し渡す。
洲汪からも貰った彼らの店の物だ。
「メールでも電話でも予約していいよ、狐乃さんだって都合のいい時に来てほしいですよね?」
「じゃ、俺らは帰ります。帰って寝なおします」
「待て」
メシでも食って帰れと狐乃が五千円札を渡し、二人は歓喜する。
「よっしゃ!」
「あざっす!」
何を食おうかと、はしゃぎながら乗って来た車へと歩いて行った。
「さて、帰ろうか」
「……」
狐乃が運転席に乗り込み、蓮美もドアに手を掛けようとしたが。
「狐乃さん、少し待ってて下さい」
「ん、いいけど」
蓮美は広い駐車場を慌てて走り出す。
「霧人さん、琉星さん」
呼び止められた二人は追ってきた彼女に驚いた。
「どうしたの、買い忘れでもあった?」
「違います、さっき人間みたいだなんて私が……」
「あー、俺が言った事か」
気にしないでと霧人は手を振る。
「人間の蓮美ちゃんが嫌いって意味じゃない、言い方が悪かったな。言葉が足りねー」
琉星が車にキーを差し、パワーウインドウを開け放った。
「根っから人間みたいにはならないって伝えたかったんだろ?」
「そう、それ」
それそれ、それが言いたいんだと霧人が興奮する。
「こんな生活してても狐だって忘れてないって意味。やべー、言葉なさすぎてホント客が付かなくなる」
「それな、いつまで補欠でいるんだよ。新人に抜かれてんだぞ、気合い入れろよ」
お前に言われるとムカつく、だったら売れろと言い合いが始まり、本気のケンカになりかけた。
「稼いでるからってあんま調子乗んなよ」
「同じこと狐乃さんの前で言えんのか?」
「言えるに決まってんだろ」
「じゃあミーティングに来たら同じ事言えよ」
言い合いしながら車に乗り込み、そのまま去っていく。
車を見送り、蓮美が戻ろうとすると風が吹き抜けた。
初夏の香りを含んだ風に、なびく髪を抑える。
「眩し……」
見上げると雲の切れ間が広がり、頭上に光が差し込んでいた。
男ならではの必需品を二人は揃えてくれる。
洗濯機も最新ではなく手頃な型落ち品を選んでくれた。
テキパキと買い進め、頼もしいな、こんな風に頼りになる彼氏がいたとしたら。
恋に縁遠い蓮美も、ちょっとだけ想像を膨らませたりする。
あらかた買い揃えると食材探しも手伝ってくれた。
「狐乃さん、前から気になってたんですけど……」
霧人が惣菜コーナーのひじきと狐乃を見比べる。
「何だ?」
「普段食った物ってどうなってるんですか?」
「俺も気にしてた、トイレに行かないですよね?」
言われてみれば蓮美も見ていない。
やおよろず生活安全所にも、もちろんトイレはある。
近代的で古くはない、温泉と同様に空間をつなげて移動させたらしいが、職員の利用はなく命と蓮美専用になっていた。
「食ったもんは力だ、自然の力に還元されて神通力に変わるんだ。形にはならねぇ」
「じゃあウンコは異次元にでも行くんですか、胃の中がブラックホールになってるとか?」
「説明を聞いてたか……」
「……」
誰かが言いそうなコメントだと隣で蓮美は考える。
誰であろう、命だ。
なぜこうも男子からウンコの話しを聞くのだろう。
もしかして世の男子の半分位がウンコに興味があるのだろうか。
将来彼氏ができたとしたら、ウンコについて語らう事はできるのだろうか。
生物は食物を供給すれば、体内から排泄物を出すのは当たり前だ。
場合によっては自然の力を借りてバクテリアが分解、新たなエネルギーを生み出すが、それは人類を救う資源となるかもしれない。
(※研究者の皆様「もう調査してる」)
明日にはウンコが光るかもしれない。
明後日にはウンコが空を飛ぶかもしれない。
「一年後にはウンコが地球を救うかもしれないっ!」
(※研究者の皆様「急すぎるわ」)
作者が熱い想いを馳(は)せていると、蓮美は支払いを終えて買い物は終了となっていた。
傘置き場で傘を取ると雨は止んでいる。
食品から運ぼうと、軽トラまでついて来た二人がゲラゲラ笑いだした。
「きゅっ、きゅっ、狐乃さんがっ」
「けっ、けっ、軽トラに乗っ、グフッ」
「これな、借りもんなんだがブレーキのかかりが甘いみたいでよ。確認したいから前に立ってくれ、俺の安全のために」
霧人と琉星はダッシュで駆け出し、代車を借りて商品を運び出してくれる。
洗濯機は店も手伝ってくれ、ブルーシートで固定して積み込みを完了した。
「助かりました」
「どう……」
「……いたし」
どういたしまして、と二人は言おうとしたが蓮美の後ろで狐乃が目配せをする。
気を利かせろや。
指示を出すアニキの眼(まなこ)は殺(や)る気満々だ。
「え、あ、な、なら、また店に遊びに来てよ。か、か、寛大な狐乃さんのおごりでいいから……」
「太っ腹なきゅっ、きゅっ、狐乃さんのおごりでいいから……」
嘘という名のすり鉢が割れんばかりに、琉星と霧人は全力でゴマを擦った。
「おいおい、お前ら~」
持ち上げられたアニキは白々しく棒で読む。
「まいったなぁ。こう言ってるし、近いうちに来てみない?」
「……ここで決めるのは」
彼女の表情が嬉しげではないと、勘のいい琉星はピンときた。
途中で狐乃と何かあって、返事に困っているのでは。
「いきなりじゃ予定もわからないよね」
財布を取りだすと名刺を一枚取り出し渡す。
洲汪からも貰った彼らの店の物だ。
「メールでも電話でも予約していいよ、狐乃さんだって都合のいい時に来てほしいですよね?」
「じゃ、俺らは帰ります。帰って寝なおします」
「待て」
メシでも食って帰れと狐乃が五千円札を渡し、二人は歓喜する。
「よっしゃ!」
「あざっす!」
何を食おうかと、はしゃぎながら乗って来た車へと歩いて行った。
「さて、帰ろうか」
「……」
狐乃が運転席に乗り込み、蓮美もドアに手を掛けようとしたが。
「狐乃さん、少し待ってて下さい」
「ん、いいけど」
蓮美は広い駐車場を慌てて走り出す。
「霧人さん、琉星さん」
呼び止められた二人は追ってきた彼女に驚いた。
「どうしたの、買い忘れでもあった?」
「違います、さっき人間みたいだなんて私が……」
「あー、俺が言った事か」
気にしないでと霧人は手を振る。
「人間の蓮美ちゃんが嫌いって意味じゃない、言い方が悪かったな。言葉が足りねー」
琉星が車にキーを差し、パワーウインドウを開け放った。
「根っから人間みたいにはならないって伝えたかったんだろ?」
「そう、それ」
それそれ、それが言いたいんだと霧人が興奮する。
「こんな生活してても狐だって忘れてないって意味。やべー、言葉なさすぎてホント客が付かなくなる」
「それな、いつまで補欠でいるんだよ。新人に抜かれてんだぞ、気合い入れろよ」
お前に言われるとムカつく、だったら売れろと言い合いが始まり、本気のケンカになりかけた。
「稼いでるからってあんま調子乗んなよ」
「同じこと狐乃さんの前で言えんのか?」
「言えるに決まってんだろ」
「じゃあミーティングに来たら同じ事言えよ」
言い合いしながら車に乗り込み、そのまま去っていく。
車を見送り、蓮美が戻ろうとすると風が吹き抜けた。
初夏の香りを含んだ風に、なびく髪を抑える。
「眩し……」
見上げると雲の切れ間が広がり、頭上に光が差し込んでいた。
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