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令嬢と魔法師団長 6
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戻って来た時間の流れを前に、アルマニアが表情を正してアトルッセを真正面から見返す。そして彼女は、緑の瞳に強い意志と光を宿して口を開いた。
「ただの虐殺と選別とを混同するなんて、一国の兵を纏めていたはずの人間が笑わせてくれるわ」
「選別だと!? 虐殺行為を選別とのたまった上に、まるで己が選ぶ立場に立ったかのような物言いをするのだな! 小娘風情が恥を知ったらどうだ!」
「恥を知るのは貴方の方だわ。未来の王に対し、よくもこれほどの無礼を働いてくれたものね。いい加減この汚い手を放したらいかが?」
「貴様、何様のつもりだ!」
声を張り上げて怒鳴ったアトルッセに、しかしアルマニアは怯まずに彼を睨み上げる。
「言ったでしょう。私は近々この国の王になる人間よ。だから、選ぶ立場に立ったかのような、ではないわ。選ぶ立場に立っているの。私はこの国の王になる人間として、国家繁栄のために必要なものを選んだだけ。それを愚弄するだなんて、貴方こそ何様のつもりなのかしら。貴方のそれは、最初から論理なんて存在しない、ただの感情任せの怒りでしかないわ。無知が許される民ならばともかく、貴方のような立場の人間がそんな有様で良いのかしら」
飽くまでも淡々と、しかし強い音で発されたそれに、アトルッセが僅かに言葉を詰まらせる。しかしそれでもアルマニアの胸倉から手を放すことなく、彼はすぐさま言葉を返してきた。、
「シェルモニカ帝国の次期皇后がこの国の未来の王とは、帝国はこの国に戦争でも仕掛けるつもりか」
「あら、さすがに私の名前は知っていたのね。でも、貴方のその情報は古いわ。今の私は、皇太子から婚約を破棄され、国外追放をされた身。ああ、そんなことはどうでも良いのよ。大切なのは、そう、私が三国を平定して世界を統べる王となるということだけ。ザクスハウル国は、そのための足がかりよ。まずはこの国を賢人たちの手から救い出し、その玉座に私がつくわ。どうせ未来に王になるのだから、先んじて民の選別を行ったところで、何の問題もないでしょう?」
そう言ったアルマニアに、アトルッセは一瞬絶句したあとで激昂した。
「ふざけるな! 生まれ育った国を追われたからと他国で王位簒奪を謀る神経も、上に立つ存在ですらない身で民の選別を口にする思考も、そもそも民を選別するという思想自体も、何もかもがおぞましい! この国の万の民は、貴様のその幼稚な考えのために無意味に死んでいったのだぞ!」
「いいえ、そうではないわ、オートヴェント」
叫ぶアトルッセに反し、凪いだ水面のようなアルマニアの声が、しかし明確な強さを以って彼の言葉を否定した。
「無意味な死ではないのよ。意味はあるの。だって、その万の民の死は、魂は、貴方を生かす糧になったのだから」
「っ、言っただろう! 守るべき民の命を犠牲に得られた生で、俺が喜ぶと思ったのかと!!」
「勘違いも甚だしい! 誰が貴方を喜ばずためと言ったの!? 誰が貴方のためだと言ったの!?」
叫んだアルマニアが、アトルッセを睨み据えて言葉を続ける。
「私のためでも貴方のためでもないわ! この国のために、この世界のために、貴方は絶対に欠かすことができない存在だと、そう私が判断したのよ! だから私は選んだ! 貴方の存在は万の民の命にも勝ると確信し、天秤が傾いた方を選び取った! それだけだわ! 私のためでも貴方のためでもなく、上に立つ者として、最良を選んだだけなのよ!」
そう言ったアルマニアが、首元を締め上げるアトルッセの手首を掴み、強く爪を立てる。
「それを貴方は、守るべき民の命がなんだ自分の喜びがなんだと! 己の立場を理解すべきは貴方の方だわ! 貴方はかつて、高みにてこの国の守護の一画を担っていた身なのでしょう!? それならそれらしく、自分の価値を正しく認識しなさい! 王となる私が、貴方にそれだけの価値を見出し、多くの犠牲を払ってでも貴方を生かしたの! ならば貴方には、その意味を理解し、糧となった命たちに報いるだけの働きをする義務がある! 民が大切だと叫ぶのなら、貴方が何よりもすべきことはそれなのではなくて!?」
己よりも十は若い娘から叱咤の声を浴び、アトルッセは今度こそ明確に言葉を詰まらせた。だがやはりその僅かな躊躇いはすぐさま振り払われて、彼はアルマニアの襟元を握る手に更に力を籠めた。
「貴様の判断が正しいと、どうしてそう言える! そも、貴様がこの国の王として立つという話自体、根拠の乏しい妄言ではないか! 独りよがりな妄想にふけって王の真似事をする者が見出した価値などに、一体何の意味があるというのだ!」
アトルッセの言は正しい。アルマニアの主張は、飽くまでもアルマニアが正しく王にふさわしい人物であった場合にのみ意味を成すものだ。そして今のアトルッセが、そう判断できるほどのものを彼女に見出すことはないだろう。だからここからが、アルマニアにとっての本番だ。
今一度気を引き締めた彼女が、ひとつ大きく息を吐き出してから、より強い瞳で以てアトルッセを睨む。
「この国は今、八賢人の手によって著しく悪い方向へと転がっているわ。そう思ったからこそ、貴方も賢人たちに逆らい、ここに投獄されたのでしょう? しかし、八賢人の手からこの国を救うことは、貴方にも、そして唯一離反した賢人ノイゼにも成せなかった。……けれど、私ならできる。私なら、この国を救うことができるのよ」
紡がれたそれに、アトルッセが一瞬目を見開き、しかしすぐにその目に疑念の色を浮かべる。
「……到底、信用できる話ではないな」
「私のことを信じられないのは理解するわ。というより、これだけで信用してしまうような愚か者では、貴方を生かした意味がない。けれど事実よ。私には、八賢人を相手にこの国を奪えるだけの力がある。正確には、それだけの強大な力を持った生き物を従えている」
その言葉に、アトルッセがヴィレクセストにちらりと視線をやった。
「……妙な力で俺を回復させた、あの男か」
「ええ。彼の力と、ノイゼが率いるレジスタンスの力、そして、貴方が持つ優れた空間魔法の力。それらを合わせれば、賢人たちを倒してこの国に立ち込めている暗雲を掻き消すことができるの。……と言っても、結局今ここで何を言ったところで口先だけのものだわ。だから、ひとまず今は、私の手を取りなさい。そのあとでノイゼに会って話を聞けば、貴方も少しは納得できるでしょう」
「ノイゼが貴様に操られていないという保証はない。強大な力を持つというあの男ならば、人間一人を操るくらい訳ないのだろう?」
「あら、用心深いのね。それ自体はとても良いことだと思うけれど、今ここでその点に言及するのはナンセンスだわ。ノイゼが正気かどうかなんて、この場で貴方に判断できることではなく、問答をしたところで、私は操っていることを悟らせるような真似はしないわ。だから、貴方に残された選択肢はひとつよ」
そう言ったアルマニアが、アトルッセの腕を掴んでいない方の手を彼に向ける。
「この手を取りなさい、オートヴェント。私の話の真偽など、手を取ってから考えれば良い。どのみち、貴方がここから一人で逃げることなんて不可能なのだから、精々私たちを利用すれば良いわ。その上で、私が過ちであり、この国にとっての災厄であると思うのならば、私を殺しなさい。勿論、私は私が過ちであり災厄であると確信しない限り、ただで殺されはしない。けれど、そうなったときに私を殺せるだけの力が貴方にないのであれば、ここで私の手を振り払って逃れることも不可能だわ。……何が賢明な判断なのか、貴方なら判るのではなくて?」
アルマニアの緑とアトルッセの橙とがぶつかり合い、暫しの間辺りに沈黙が降りる。そうして短くはない時が流れたあと、先に動いたのはアトルッセの方だった。
「…………良いだろう。独断で数多の民を踏みにじった罪は赦しがたいが、今の俺が知り得る全てでは、そこに正義がなかったと断ずることはできない。……ならばその命、暫し預けておいてやる」
低く唸るような声でそう言ったアトルッセが、言葉と共にアルマニアを解放する。ようやく首元の圧迫感が消えたアルマニアは、乱れた襟元を綺麗に正してから、アトルッセを見上げて貴族令嬢のお手本のような微笑みを浮かべてみせた。
「それ、良いわね。この先もずっと、そうしていてちょうだい」
アルマニアのその言葉に、アトルッセは心底嫌そうに顔を歪めたが、声に出して何かを言うことはなかった。そんな彼にもう一度だけ微笑んでから、次いでアルマニアは沈黙を守り続けていたヴィレクセストへと視線を移す。
「という訳よ、ヴィレクセスト」
言外にこれでどうだ、と伝えてきた彼女に対し、ヴィレクセストが肩を竦めて返す。
「及第点ってところかね。こんなとこで躓かれちゃあ、王になるどころの話じゃねぇからな」
「まあ、生意気」
「よく言うぜ」
そんな軽口を叩いてから、次いでヴィレクセストはアトルッセへと視線を向けた。
「あー、ええと、まあ呼び方は団長殿でいいか。俺はヴィレクセスト。この名で呼ぶことを許してるのはそこの公爵令嬢だけだから、ヴィとでも呼んでくれ。ま、末永くよろしくな、団長殿」
そう言って笑ったヴィレクセストが、アトルッセに向かって片手を差し出す。胡散臭そうな表情を隠しもせずにそれを見たアトルッセは、差し出された手を握ることはせずに口を開いた。
「末永く、といけば良いがな」
「いくさ。なにせ、この俺が選んだ女だからな」
そういって片目を閉じてみせたヴィレクセストに、アトルッセはやはり嫌そうに眉根を寄せたが、それ以上何かを言うことはなかった。
「ただの虐殺と選別とを混同するなんて、一国の兵を纏めていたはずの人間が笑わせてくれるわ」
「選別だと!? 虐殺行為を選別とのたまった上に、まるで己が選ぶ立場に立ったかのような物言いをするのだな! 小娘風情が恥を知ったらどうだ!」
「恥を知るのは貴方の方だわ。未来の王に対し、よくもこれほどの無礼を働いてくれたものね。いい加減この汚い手を放したらいかが?」
「貴様、何様のつもりだ!」
声を張り上げて怒鳴ったアトルッセに、しかしアルマニアは怯まずに彼を睨み上げる。
「言ったでしょう。私は近々この国の王になる人間よ。だから、選ぶ立場に立ったかのような、ではないわ。選ぶ立場に立っているの。私はこの国の王になる人間として、国家繁栄のために必要なものを選んだだけ。それを愚弄するだなんて、貴方こそ何様のつもりなのかしら。貴方のそれは、最初から論理なんて存在しない、ただの感情任せの怒りでしかないわ。無知が許される民ならばともかく、貴方のような立場の人間がそんな有様で良いのかしら」
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「シェルモニカ帝国の次期皇后がこの国の未来の王とは、帝国はこの国に戦争でも仕掛けるつもりか」
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そう言ったアルマニアに、アトルッセは一瞬絶句したあとで激昂した。
「ふざけるな! 生まれ育った国を追われたからと他国で王位簒奪を謀る神経も、上に立つ存在ですらない身で民の選別を口にする思考も、そもそも民を選別するという思想自体も、何もかもがおぞましい! この国の万の民は、貴様のその幼稚な考えのために無意味に死んでいったのだぞ!」
「いいえ、そうではないわ、オートヴェント」
叫ぶアトルッセに反し、凪いだ水面のようなアルマニアの声が、しかし明確な強さを以って彼の言葉を否定した。
「無意味な死ではないのよ。意味はあるの。だって、その万の民の死は、魂は、貴方を生かす糧になったのだから」
「っ、言っただろう! 守るべき民の命を犠牲に得られた生で、俺が喜ぶと思ったのかと!!」
「勘違いも甚だしい! 誰が貴方を喜ばずためと言ったの!? 誰が貴方のためだと言ったの!?」
叫んだアルマニアが、アトルッセを睨み据えて言葉を続ける。
「私のためでも貴方のためでもないわ! この国のために、この世界のために、貴方は絶対に欠かすことができない存在だと、そう私が判断したのよ! だから私は選んだ! 貴方の存在は万の民の命にも勝ると確信し、天秤が傾いた方を選び取った! それだけだわ! 私のためでも貴方のためでもなく、上に立つ者として、最良を選んだだけなのよ!」
そう言ったアルマニアが、首元を締め上げるアトルッセの手首を掴み、強く爪を立てる。
「それを貴方は、守るべき民の命がなんだ自分の喜びがなんだと! 己の立場を理解すべきは貴方の方だわ! 貴方はかつて、高みにてこの国の守護の一画を担っていた身なのでしょう!? それならそれらしく、自分の価値を正しく認識しなさい! 王となる私が、貴方にそれだけの価値を見出し、多くの犠牲を払ってでも貴方を生かしたの! ならば貴方には、その意味を理解し、糧となった命たちに報いるだけの働きをする義務がある! 民が大切だと叫ぶのなら、貴方が何よりもすべきことはそれなのではなくて!?」
己よりも十は若い娘から叱咤の声を浴び、アトルッセは今度こそ明確に言葉を詰まらせた。だがやはりその僅かな躊躇いはすぐさま振り払われて、彼はアルマニアの襟元を握る手に更に力を籠めた。
「貴様の判断が正しいと、どうしてそう言える! そも、貴様がこの国の王として立つという話自体、根拠の乏しい妄言ではないか! 独りよがりな妄想にふけって王の真似事をする者が見出した価値などに、一体何の意味があるというのだ!」
アトルッセの言は正しい。アルマニアの主張は、飽くまでもアルマニアが正しく王にふさわしい人物であった場合にのみ意味を成すものだ。そして今のアトルッセが、そう判断できるほどのものを彼女に見出すことはないだろう。だからここからが、アルマニアにとっての本番だ。
今一度気を引き締めた彼女が、ひとつ大きく息を吐き出してから、より強い瞳で以てアトルッセを睨む。
「この国は今、八賢人の手によって著しく悪い方向へと転がっているわ。そう思ったからこそ、貴方も賢人たちに逆らい、ここに投獄されたのでしょう? しかし、八賢人の手からこの国を救うことは、貴方にも、そして唯一離反した賢人ノイゼにも成せなかった。……けれど、私ならできる。私なら、この国を救うことができるのよ」
紡がれたそれに、アトルッセが一瞬目を見開き、しかしすぐにその目に疑念の色を浮かべる。
「……到底、信用できる話ではないな」
「私のことを信じられないのは理解するわ。というより、これだけで信用してしまうような愚か者では、貴方を生かした意味がない。けれど事実よ。私には、八賢人を相手にこの国を奪えるだけの力がある。正確には、それだけの強大な力を持った生き物を従えている」
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「ノイゼが貴様に操られていないという保証はない。強大な力を持つというあの男ならば、人間一人を操るくらい訳ないのだろう?」
「あら、用心深いのね。それ自体はとても良いことだと思うけれど、今ここでその点に言及するのはナンセンスだわ。ノイゼが正気かどうかなんて、この場で貴方に判断できることではなく、問答をしたところで、私は操っていることを悟らせるような真似はしないわ。だから、貴方に残された選択肢はひとつよ」
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そんな軽口を叩いてから、次いでヴィレクセストはアトルッセへと視線を向けた。
「あー、ええと、まあ呼び方は団長殿でいいか。俺はヴィレクセスト。この名で呼ぶことを許してるのはそこの公爵令嬢だけだから、ヴィとでも呼んでくれ。ま、末永くよろしくな、団長殿」
そう言って笑ったヴィレクセストが、アトルッセに向かって片手を差し出す。胡散臭そうな表情を隠しもせずにそれを見たアトルッセは、差し出された手を握ることはせずに口を開いた。
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