戦国魔法奇譚

結城健三

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玉龍

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頭を振りながら、起き上がる満腹丸
「天女様、ありがとうございました」

「亀とハチドリの融合、素晴らしい発想でしたよ これからが楽しみです!」

「ありがとうございます でも自分で見て観察した事のある生き物にしか変幻出来ないのです 熊や虎を見てみたいです。。。」

「虎は、難しそうですね。。。でも昆虫等は、どうでしょう? 自重の数倍もの重量を持ち運ぶ蟻ですとか、大きな鎌を備えたカマキリですとか、神経毒を持った蜂や毛虫など
面白いと思いますけどね」

「あっ!本当ですね!!明日から昆虫採集もしてみます!!」


北条氏直が、エヴァの前に進み出て、頭を下げる
刃の精霊フーカーの新たなスキル【物理·魔法防御】を得た事により
戦闘態勢になると、自動的に半透明な、西洋風の甲冑が全身を覆う 刃の精霊らしく
肩や肘、膝といった所に鋭利な刃を備えた 凶悪な様相を呈した代物である
右手にハルバードを持ち、左手の前腕にアランから送られた 円形の盾を手首と肘に
固定装着し エヴァに挑む
「天女様、よろしくお願いします」

「はい 氏直君、始めましょうか」
エヴァが言い終わると同時に、縮地術を使い一息に距離を詰めて来る 氏直
エヴァの足を狙って、ハルバードを地面すれすれに横に薙ぐ
ハルバードの斧の部分を、石突で叩き落とされ 氏直は、低い姿勢から盾を下から上へと
払い上げる「シールドバッシュ!!」
その盾に、左手の指を3本添え 衝撃を殺しながら
氏直の頭上で回転すると、背後に着地する エヴァ
背面からハルバードの石突きを突き出し それを玉龍の柄で弾かれた勢いのままに
エヴァと対峙する 氏直 試合開始から、ここまでの攻防、時間にして1秒にも満たない
「刃の精霊フーカーのスキルを、使いこなせていますね 努力してきた事が、窺えます」

「ありがとうございます 天女様、まだまだこれからです!」
目にも止まらぬ速度で、操剣·操槍のスキルを駆使して切り結ぶ エヴァと氏直
長柄武器同士の剣戟は、2人の周囲に残像と火花を残す 息を呑んで見守る 子供達
剣舞のような2人の攻防は、徐々に一方が押し込まれ始め 呆気なく幕を閉じる
瞬歩で氏直の懐へと潜り込み 玉龍の柄を両手で持ち、水平に捻りを加えながら
氏直の胴へと打撃を叩き込む 盾で受けたものの錐揉みをしながら 吹き飛ぶ 氏直

「参りました!」
目が回っているのか、ふらふらと立ち上がる
「とても楽しかったですね 氏直君」


「天女様、井伊直政参ります!!」
三叉の槍、宝戟を後ろ手に持ち、その柄の長さを隠すように 摺足で距離を詰める

「直政君は、時の精霊ハオルの能力で時間を遅延させる事が出来ますから 接近戦は不利ですね」

「天女様 今では、僅かですが時間を止める事もできます 一太刀入れられれば、僕の勝ちで宜しいですね 天女様に怪我をさせたくありませんので。。。」

「あらっ優しいのですね 直政君は いいでしょう私に触れることが出来れば、直政君の勝ちです」
そう言いながらも、その場から動かず 宝戟の届く距離まで直政を迎え入れる
遅延した時間の中、エヴァの視線は正面を向いたまま 
右から回り込み 槍を突き出す 直政の動きを目で追えてさえいない 

ー『もらった!! 僕の勝ちだ!!』ー
穂先が、エヴァに触れると思った瞬間 “カツンッ”と槍先が弾かれる

ー『!?』ー  いつの間に発動していたのか、円状の結界が現れ エヴァを守る
それならばと、時間停止を使い 刺突を上下左右に散らす
槍先が、エヴァに触れる瞬間に結界が現れ、同じように弾かれていく
“カツンッ!カツンッ!カンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッ!!!”
止まった時の中、直政の耳にだけ虚しく響く 打撃音
エヴァの全方位に張り巡らされた結界を破る力は、今の直政には無い

ー『限界だ、時間が。。。動き出す。。。』ー

最後の一撃と宝戟にすべての力と風魔法を纏わせ、エヴァの左肩に槍を走らせる
軽く身を捩ったエヴァの左側を宝戟が虚しく空を切り
直政の喉元に添えられた 玉龍の刃先
「参りました。。。」


「直政君には、ちょっと意地悪をしてしまいましたね ハロルの時間停止を破るには
あれしか思いつかなかったので。。。不可視化した結界を攻撃させて、時間切れを狙った苦肉の策です」

「いえ天女様、勉強になりました 生意気なことを言って申し訳ありません」

「天狗になるのも無理がないほどのスキルですからね~ 停止できる時間が延びれば
まさに無敵と言えるでしょうからね」

「はい ありがとうございました」


練兵場の入り口から、ブルートが現れる
「特殊な魔力の流れを感じたので来てみれば、楽しそうな事をしているじゃないか?」

「ええ 久しぶりにみんなに稽古をつけている所です」
これまでの経過と年長組が火竜の討伐に参戦したいという意志をブルートに伝える

「なるほど いいんじゃないか? 少なくとも信忠と直政は、十分に戦力になると思うぞ 
エヴァも信忠には手を焼くと思うけどな」
楽しそうにニヤニヤと笑う ブルート

「「ありがとうございます ブルート先生!」」

「嫌な笑い方ですね ブルート いいでしょう そこまで言うのでしたら信忠君のお手並みを拝見させてもらいましょう」
羽衣を翻し、玉龍を一振りし正眼に構える エヴァ

「天女様 よろしくお願いします! あの本当に手加減無しで、宜しいのですね?」

「はい 大丈夫です 遠慮は不要ですよ こう見えても丈夫ですから」

「わかりました 怪我だけは、されないで下さい 出し惜しみ無しで、最初から全開で
行かせていただきます!! 土の精霊ノーム!金の精霊ウィル僕に力を!!“ゴーレム”」

「へっ!? ゴーレム?」

「ああ 土を操るノームと錬成と創造を司るウィルだからこそ出来る術だな」


信忠の体が空中に浮き、岩の塊と金属片が次々と信忠の体に吸い込まれ張り付いていく
みるみるうちに巨大化していき 5mを超えたところで、両拳を胸の前で撃ち合わせ
戦闘態勢に入る 飾り気も何もない無骨な 信忠ゴーレム

「ブルート。。。信忠君、中で操作するのですか?」

「ああ まだ外から操れるほど、同期出来ていないんだ 中に入ってしまえば、自分の手足のように操れるからな 見てわかると思うが、セラミックに金属を融合させているからな。。。硬いぞ!」

「千代ちゃん エント·キングの方が、大きくって可愛いですね」
千代の耳もと小声で囁く 茶々

「そうだね~ きっとエント·キングの方が強いよ!」

姿勢を低くして頭から一直線に突っ込んでいく 信忠ゴーレム
その見た目からは想像できぬほどに鋭く早い それを避けようと大きく右に飛ぶ エヴァ
それを追尾するように、生物では決して出来ない動きで、未だ空中に居るエヴァへと方向を転換すると、その巨大な手で掴み取ろうと腕を伸ばす
あらかじめ空中に浮遊させていた円状の結界を左足で蹴り 真上へと飛ぶ エヴァ
逃すまいと、真上へと、さらに腕を伸ばすが、玉龍の一撃を受け軌道を逸らされる
信忠ゴーレムが腕を戻すよりも早く、落下に風魔法による加速を加え、頭部に向け玉龍を振り下ろす
“ガキンッ!!”玉龍の穂先が火花を点てて弾かれる 空中に押し戻されながらも
頭頂部、首の付け根へと2撃、3撃目と玉龍を突き立てる エヴァ
一切の傷を負うこともなく、エヴァを払い落とそうと腰の接続部分、上半身だけを急回転させ 左右の腕をエヴァへと叩きつける 
巨大な質量の前腕を玉龍の柄で受け 信忠ゴーレムから20m離れた地点に着地する

「練兵場が壊れたら、後で僕のノームで修復しますので!!」
そう言うと、左右の腕を前に突き出し、両腕の拳が“ゴトリッ”と落下する
手首の切断面の空洞がエヴァを捕捉し“バシュッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!”
高速の弾丸が発射される
玉龍の穂先が青く光り エヴァの姿が一瞬ぶれる 青い光の尾を引き、信忠ゴーレムへと
突き刺さる 進路上に転がる、切断された 弾丸
信忠ゴーレムの周囲を、結界を足場に飛び回り ガシッガシッと削っていく エヴァ

「天女様。。。耳と尻尾が生えてます。。。お玉様だ!!」 茶々が叫ぶ

至近距離で玉龍を振るうエヴァを捕らえることも出来ずに、腕を足を切断され、ゴーレムの装甲をすべて削り剥がされた信忠が、その場にへたり込む。。。
玉龍の穂先を地面に向け、頭に金色の三角の耳、金色のふさふさとした尻尾をくゆらせ
顔を紅潮させ、立ち尽くす エヴァ
「参りました!」
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