戦国魔法奇譚

結城健三

文字の大きさ
148 / 201

満腹丸の大冒険

しおりを挟む
玉龍の光も収まり、いつの間にかエヴァの耳も尻尾も消えている 
幻でも見ていたのかと全員が、自分の目を疑っていると 興奮から冷めたエヴァが
へたり込んでいる信忠に手を差し出す
「大丈夫ですか? 楽しかったですね」 子供のような笑顔を信忠に向ける

「いえ。。。恐ろしかったです。。。この世の者と戦っているとは、とても思えませんでした。。。」
顔面を蒼白にして答える 織田信忠

「ルイやアランやブルートは、私よりもっと強いのですよ? 私が最弱です」

『『『『『『『『『『『そんなわけが無いだろう!!!!』』』』』』』』』』』
全員が、心の中で一斉にツッコむ

「では、ブルートも言っていたように信忠君と直政君は合格という事にします
火竜との決戦がいつになるかは、まだわかりませんが 竜の息吹に耐えられるくらい
防御力を高めておいてください 直政君は時間停止や遅延を攻撃にでは無く 回避に
使って欲しいと思います 攻撃には、また別の方法を考えましょう アランもそれで良いですね?」

「ああ。。。」

「「ありがとうございます!! 必ずお役に立ちます!!」」

「氏直君に満腹丸君は、保留ですね いっそうの精進に期待します」

「「はい!頑張ります!!」」
それぞれの課題を見つけ、修練へと散っていく子供達 満腹丸はただ一人 昆虫採集の為に階段を駆け上がっていった


「それにしても、その薙刀。。。玉龍といったか? まるで生きているようだな」

「青龍とお玉様が側にいてくれるような、安心感がありました 玉龍が身体の一部に
なったような 武器を振るう事が、こんなに楽しいと思ったのは、初めてです」

「エヴァ。。。狐のような耳や尻尾が生えた事に気づいていなかったのか?」
自分のお尻を触る エヴァ

「はっ!? 何を馬鹿な冗談を言っているのですか? ブルートらしくもない!」

「いや。。。エヴァ。。。本当だぞ。。。」

「アランまで!いい加減にして下さい!!」



この苦しみ、この痛みが永遠に続くのならば、自分の生を手放したいと何度も考える
しかし。。。あの人の笑顔をもう一度だけでも見るまでは、死ぬわけにはいかない
愛しい我が妻の、白く細い指に触れるまでは、長くしなやかな黒い髪の匂いに
抱きしめれば壊れそうな弱々しい肩に、淡く透き通り真珠のような、その肌に
戦う以外、なんの取り柄もない俺を待ってくれている人が居る 帰らねば!

手の指先、足の爪先から始まった 細胞がひっくり返るような痛みは、この地獄のほんの序章でしかなかった 今になり思い返せば 笑って耐えられるほどの痛み
手の指先から始まった痛みは、肩口で止まり 足の爪先から始まった痛みが
腰にまで達し、今もゆっくりと上がって来ている 自分の生殖器の細胞が、ひっくり返るような痛み 
噛み締めた奥歯が粉々に割れた。。。 筆舌に尽くし難い痛みもようやく通り過ぎ
今は、はらわたを荒縄を巻いた手で握りつぶされるような 毒手で捏ね回されるような
永遠とも思える 痛みにただ耐える ひたすらに耐える なんの抗う術も持たぬのだから 
大海原を小さな筏で漂流する 手も足も動かす事も叶わず 
自分の身体を見下ろす事さえ出来ずに、ただ一点。。。空だけを睨む
自分に出来る事は、ひたすらに痛みに耐えるか、舌を噛み切り、死を選ぶ事のみ

通り過ぎる雲を眺める あの雲は、黒髪をなびかせた天女様の横顔によく似ている
あっちに見える雲は、小振りではあるが、まさに雲のようにシミ一つ無い天女様の双丘に見える 
ちょっと待てよ? この痛みが、心の臓まで上がってきた時に俺は、耐える事が出来るのだろうか? 
ああ! あの雲は、天女様のしなやかな腰のクビレから、尻にかけての。。。
絶対に耐えて帰らねば! 帰って本物の天女様にあんな事やこんな事を!!


岐阜城下を抜け、長良川に向かい 街道ではなく、金華山の獣道を北に向かう 満腹丸
エヴァに言われたように昆虫の生態を観察するために手作りの虫取り網と虫籠を下げ
鬱蒼と茂った 下生えを掻き分けながら進む
目の前を滑空する 大きな蜻蛉に人差し指を立てる
「こっちにおいで」
満腹丸の目前を通過した蜻蛉が旋回すると、なんの躊躇いも見せず 人差し指に泊まる

「お前は、強いのかい? なにができるんだい?」
鼻息が掛かるほどの距離まで顔を近づけ、観察するが 蜻蛉は逃げる素振りも見せない

「うん!?お前は、オニヤンマと言うのか 黒と黄色の模様が、虎みたいで強そうだな! なになに? 
翅《はね》は、4枚あって仮に欠損しても、左右に1枚ずつ残っていれば飛ぶことができるのか 
6本の脚を檻のような形状に折り獲物を捕らえる 肉食で蚊や蝿を捕食する、人にとっては益虫である 
なるほど鋭くて大きな歯を持っているものな
滞空も出来て、空を自由自在に飛び回ると 特筆すべきは、複眼による視界の広さで
左右の目が、頭頂で接しており 270度の視野の広さを持つ」
対象となる生物を一定時間、観察することにより、ビシューのスキルでその生態が満腹丸の頭に自然に流れ込み 従属、変幻が可能であるか 判定される
「従属も変幻も可能だって、偵察任務に持ってこいの能力だな! 仲良くしような!!」

その後も、岐阜城から北上を続け 
途中、糸で強靭な網を張る女郎蜘蛛や、鋭く大きな鎌を持つ大蟷螂
巨大な体躯と猛毒を持つ大雀蜂、威風堂々 昆虫の王様といった風格のカブトムシ
強大な顎を持つオオクワガタ 姿だけでなく匂いまでも擬態する尺取虫
様々な、昆虫をつぶさに観察することで、従属、変幻が出来る種を増やしていく
そして、ビシューに新たなスキルが追加された 従属、変幻に続き【交雑】
つまり異系交配、掛け合わせというスキルが使用可能となった事を、満腹丸に告げた
「交雑!? 何が出来るんだろう?」
自分の中に居る、ビシューに意識を集中させ 交雑と強く念じる
従属、変幻で学習した要領なので慣れたものではあるが 異なっているのは、満腹丸の
視界の範囲にある生物が、赤く点灯する
蝶や蜜蜂、カナブンにナナフシ 視線を落とすと地面を這うミミズや蟻
そして視線を上げると、空を飛ぶ雀にトンビなど様々な生物が赤く光っている
「掛け合わせると言うんだから この中から、選ぶという事か?」
蝶に意識を向ける 赤く光っていた蝶がパチンッとスイッチが切り替わったように
青い光を発し始める
同じように、今度は蟻に向かって意識を向けてみると青い光に包まれ
2つの青い光が、満腹丸の目の前で絡み合い、融合されていく
時間の設定を念じ、魔力を与えよという指示が頭の中に響き 目の前の青い光に
手を翳し、言われるままに1分間と念じながら 自分の魔力を注いでみる
一瞬更に強く光ったかと思うと、徐々に光が霧散していき、満腹丸の手の平には
手の平から、はみ出す程の大きさの蝶の羽根を付けた巨大な蟻が、満腹丸の目を
覗き込んでいた
「凄い!2種類の生物をくっつける事が出来るんだ!!言う事を聞いてくれるのかな?
飛んでみて!」
ゆっくりと蝶の羽根を羽ばたかせ、満腹丸の頭上を旋回し、しばらく飛び回ったあと
地上に降り、元の蟻と蝶に分かれた

「なるほど!時間の設定というのは、交雑している時間の長さという事か。。。
与える魔力が、もっと多ければ、もっと大きくなるのかも!? 色々と試してみないといけないな 
きっと火竜との戦いに役に立つと思うぞ!!」
鬱蒼とした雑木林を抜けると古井の滝へと出る 夢中になっていて気づかなかったが
陽も傾き始めていた

「もうこんな時間か、急いで帰らなければ、みんなが心配するな」
踵を返そうとすると、足元に置いていた虫取り網を蹴り 滝壺に落としてしまう

「あっ!?考えたら、僕に虫取り網は必要ないな 虫が寄ってきてくれるんだから」
そのまま岐阜城へと向け 走り出す 満腹丸
すると満腹丸の背後で、ブクブクッと滝壺の水面が泡立ち河童が顔を出す

「おい!小僧 お前が落としたのは、この金の虫取り網か? この銀の虫取り網か?」
それに気づかず 山を登っていく 満腹丸

「お~~い小僧!!金の虫取り網も銀の虫取り網も両方やるから、相撲をとってくれ~」
河童を観察できる、機会をみすみす逃した満腹丸であった
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

北白川先生(♀ 独身)に召喚されました

よん
青春
小田原の県立高校に勤務する国語教諭――北白川。彼女はある目的を果たすために、自分が受け持つ五人の生徒を毎晩二時に召喚するようになった。一日一度のことわざ、そこに込められた思いとは……。 『イルカノスミカ』『フラれる前提で私にコクる鈴木くん』のスピンオフ。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部
ファンタジー
 ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。  背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。  母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。  セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。  彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。  セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。 「セラ、ウミ」 「ええ、そうよ。海」 ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します! カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

処理中です...