【R18】異世界で傭兵仲間に調教された件

がくん

文字の大きさ
26 / 37

ウソツキ4(非エロ)

しおりを挟む
「アサァー……アサァー……」

朝日が差し込み、ぬるく湿った風とともに空を飛んでいるアサドリ。
いつもなら小ばかにしてると思うようなアサドリの鳴き声のはずが、どうにも今日に限っては気を紛れさせるのんきな鳴き声のようである。
傭兵たちの朝食の準備を手伝うために村酒場へと向かうケントとハーヴェイ。だがその足取りはいつもよりどこか重そうだ。

「今日は忙しくなりそうっスねぇ」

「そうだな」

「──元気なさそうッスねぇ、昨日の事でも気にしてるんスか?」

「そりゃなぁ……やっぱ問題なんだろうなぁ」


     *


「──何をやっとるか貴様らはぁ!」


──あの時、団長はしばらく固まった後、強く言葉を吐き出したが何を思ったのか無言で天幕を去っていった。
ケントたちも団長たちが帰ってくるだろうとは聞いていたが、まさかあんな時間にわざわざ自分たちの天幕に来るなんて予想もしていなかった──しかも最悪のタイミングで。
団長に見られた事で、ケントはただただ困惑し、翌日の今でも不安がっている。

ハーヴェイも驚いてはいたが、性格も相まって、すぐにケロっといつも通りになった。
さすがにそのまま性行為を続けるほど無粋ではなかったが、今ケントの隣にいるハーヴェイはいつも通りのハーヴェイと何も変わらない。

マラークは興ざめだと言いながら行為をやめた。
その後はやる気のなさそうないつも通りの態度、そしていつも通りの表情だった。
ただ唯一、天幕を去っていくときにほんの一瞬だけ見えたその表情をケントは見逃さなかった。
マラークは不敵に笑っていた──まるであの状況すら楽しんでいるかのように。

そしてルヴィ団長。サンダーライト傭兵団をまとめ上げる唯一の女性。
入団当時、レックスはともかくグリフやマラークのようなひと癖もふた癖もある男たちをまとめ上げているのが、若い女だったなんてケントは信じられなかった。
現代なら若い女社長に、男社員が働くブランド会社──というのはまぁわりとあるようなものだが、いかんせんここは力がモノを言う傭兵団。
しかしそんな疑問は日をまたぐごとにいつのまにか消えていった。団長の決断力は的確であり、もちろん強者としての風格もある。矜持もある。その矜持のおかげでケントもハーヴェイも見習いとして入団させてもらった。
だからこそケントは今も驚いている。
あんなに声を荒らげる団長は初めて見たからだ。

不安が思考を加速させていくのはケントの性格なのか、それとも人間の性質なのか。
他人が判断する事など、いくら考えても仕方のない事だとは理解してもケントは考える事をやめられない。


     *


大した会話もないままケントたちが朝食の用意を手伝うために村酒場へとたどり着いた。
木製の扉を開けると小さな鐘が鳴り、ケントは村酒場の主人にあいさつをしながら中に入っていく。

「おはようございますサーズさん」

「おはよう2人とも」

「──遅いぞおまえら!」

いつもなら村酒場の主人であるサーズだけの返事のはずが、さらにハスキーな声が奥から聞こえてきた。

「げ……この声は」

ハーヴェイが小さくつぶやくと、食材を置いている奥の倉庫から男の姿が見えた。

「──ルッツ。帰ってきてたのか」

その姿はハーヴェイの背丈とそう変わらず、現代でいう少し古いスポーツ漫画のように左方の一方通行の短い髪形。
ケントがルッツと呼んだ男はケントと同じサンダーライトの見習い傭兵だ。
見習い傭兵といってもケントよりは入団時期がわずかに早く、もちろんそれだけ先輩にあたる。
遠征組の雑用要因として団長たちとともにこの村を離れていたが、彼もまたルヴィたちとともにこの村に戻ってきた。

「久しぶりだな2人とも。しかしおまえら気がたるんでるんじゃないのか?」

「は?」

「来るのが遅いってことだ。新人なら一番に来るべきだろう」

「あーあーでたっスよ……」

ケントの背後にいるハーヴェイが珍しく気だるそうな顔をして、目を背けるように壁を見ている。
そんなハーヴェイのつぶやきを聞いて、小さくため息をはくケント。

(相変わらずハーヴェイはルッツの事が苦手なんだな。ま、俺もなんだけどさ)

「そんな事じゃ遠征に出たらやっていけないぜ?ま、やっていけないから遠征組に参加させてもらえなかったんだろう。明日からはもっと早く──」

「ああルッツ君。わたしがもっと遅く来てもらうように2人に頼んだんだよ」

「え?」

村酒場の主人サーズがルッツの言葉をさえぎると、驚いたようにルッツが振り向いた。

「あんまり早く来られても、こっちが焦っちゃうし、早く作りすぎても朝食の時間と合わないからね」

実際、以前にそういうやりとりがあった。だからケントたちはこの時間に来ている。
もし見習いとして対応していたのがケントとハーヴェイでなければ、恐らくサーズはもっと遅い方がいいだなんて遠慮して言えなかっただろう。
ケント自身に自覚はないが、ケントの村人との打ち解け方は他の傭兵たちと比べると群を抜いて信頼を置かれている。
それはケントの気遣いの精度の高さから得たものなのだろう。

「し、しかしサーズさん、見習い傭兵なら見習いらしく」

(ルッツはこういう所なんだよな……サーズさんに傭兵の道理なんて関係ないのに)

ケントは自身の頭をポリポリとかくと、厨房で料理の仕込みをし始めた。

「ルッツ。みんなが帰ってきたなら今日は忙しくなるんだろ?早く準備しよう」

「ぐ……」

こうであってほしい願望を、こうあるべきと論じる話し方をする人を見抜くのがケントはうまかった。
ただの個人の傲慢(ごうまん)ともいえる望みを正当化するために、正論を並べて他人を動かそうとする行為は、決まって他者を不幸にする。
それはあの親の元で育ってきたケントだからこそ至った結論なのだろう。
ゆえにケントはルッツのようなタイプのあしらい方を熟知していた。


     *


食事が次々と出来上がり、続々と起きた傭兵たちが村酒場へと集まってくる。
遠征に出ていた傭兵たち、村に滞在していたフェイやオルバー、それに当然マラークも。

現実のように、全員がそろうまで食事に手をつけないなんて事もなく、席について適当に食事を食べ、流れで酒を飲み始めた。
ひと仕事を終えたら傭兵は宴会をすると相場は決まっている。
今日は朝からみんな酒を飲んで騒ぐに違いない、誰もがそう思っていた。

ひと際遅れて団長のルヴィが扉から入ってきた。
そのルヴィの姿、そして表情を見て、村酒場にいた傭兵たちの会話が少しずつ減っていく。
何も考えずに1人の傭兵がルヴィに声をかけた。

「団長、おはようござい……」

「……」

話しかけた傭兵をにらみつけるような表情をしたルヴィは、あふれるような殺気ともいえる雰囲気をかもし出していた。
機嫌が悪いというにはあまりにも空気が張り詰めており、その表情は戦場に出ている時となんら変わらないほどの冷たい表情だった。
ルヴィのピリついた空気を察知したのか、傭兵たちに緊張感が波及していく。
気まずいのか、傭兵がコソコソと耳をうつように話している。

「なぁ……団長どうしたんだ?」

「なんか領内でヤベー事でも起こったのか?」

そんな小声の会話をする傭兵たちよりも、より一層と怖がってる者がいた──ケントとハーヴェイだ。

(俺らのせい……なのか……)

(やばい絶対怒ってるッスぅ……)

他人の空気に鈍感なハーヴェイでさえ、ルヴィから出ている緊張感を察知していた。
心なしかルヴィの体からはドス黒い魔力のような圧迫感を誰もが感じていた。

その場にいる多くの傭兵たちが心の中で委縮している中、ケントはふと好奇心からマラークを見た。
肝心のマラークはいつもとなに一つ変わらず、テーブルの上に足を置き、静かに朝から酒を飲んでいるようだった。
マラークがケントの目線に気づくと、マラークは横目のまま頬を上げ、不敵に笑った。

(いったいどんな神経をしてるんだよアイツ……!)


席についたルヴィにルッツが食事と酒を持っていく。
無関係のルッツでさえ、テーブルに皿を置く際には緊張感でツバをのみ込むほどだった。
ルヴィの空気がピリついてる理由を知っているのは、まだこの場に来ていないレックスとグリフ、そして当のルヴィだけだった。



(飲みすぎた……二日酔いだ……)


昨日、グリフが持ってきたテルミア産のサラマンダー酒。
酒にも多くの種類が存在するが、火酒というのは火を付けると燃えるほどアルコール成分が高い蒸留酒の事である。
サラマンダー酒という名前は、燃え盛るようなサラマンダーの炎を表現したテルミア産の強い火酒であり、そのアルコール濃度の高さは火酒の中でもトップクラスである。
しかし、ルヴィは知らずにグラスのサラマンダー酒を飲み干し、ケントたちの行為を目撃したあと、レックスたちの元に戻って再びサラマンダー酒のヤケ飲みをした。
そして今、頭痛と気持ち悪さを隠し、団長としての威厳を維持しようとするその様が、他人から殺気のような空気感に見えている。
しかしそれを知っている者はこの場には誰もいない。
憶測による緊張感によって、朝から傭兵たちに重いプレッシャーを与えているこの状況は、とても楽しい宴会とは言えず、この場にいるほとんどの者がこう思ってただろう。


(──全然たのしくねぇ──)


そんな状況に救いを差し伸べるかのように、遅れてレックスとグリフがやってきた。

「──おいおい、なんだこの空気は……」

「葬式でもやってんのかねぇ」


こうして不穏ともよべる空気からサンダーライト傭兵団全員による宴会が始まった。



しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

「大人扱いしていい?」〜純情当主、執務室で策士な従兄の『相性確認』にハメられる〜

中山(ほ)
BL
「ルイン、少し口開けてみて」 仕事終わりの静かな執務室。 差し入れの食事と、ポーションの瓶。 信頼していた従兄のトロンに誘われるまま、 ルインは「大人の相性確認」を始めることになる。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

悪役令嬢の兄、閨の講義をする。

猫宮乾
BL
 ある日前世の記憶がよみがえり、自分が悪役令嬢の兄だと気づいた僕(フェルナ)。断罪してくる王太子にはなるべく近づかないで過ごすと決め、万が一に備えて語学の勉強に励んでいたら、ある日閨の講義を頼まれる。

処理中です...