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十九章 おめでたい話があっても夜遊び
468 大怪我の理由
フレドリク邸から脱出したフィリップたちは、驚く護衛騎士の操る馬車に乗り込む。死に掛けていたフィリップがスキップで現れたらから、幽霊かと思ったらしい。
馬車の中では、一番近い話題。アレだけ心配していたフレドリクがフィリップよりルイーゼを選んだから、さすがにオーセとカイサも不思議に思ったらしい。
この辺はフィリップは予想があるけど、「ゾッコン」の一言で処理。オーセたちは「カイ様とモンス様のあの雰囲気も怪しいよね~?」と、かなり不敬なことを言っていた。皇后様の浮気を疑ってるんだもん。
根城に帰ったフィリップは、体操服を自分で脱ぎ出したのでようやくオーセとカイサは怪我を思い出した。
「「プーちゃん! 体は大丈夫!?」」
「うん。聖女ちゃんが治してくれたから大丈夫だよ。でも、服が血塗れのビリビリ。気に入ってたのにな~」
「よかった~」
「心配するとこ、そこ?」
オーセは普通に喜んだけど、カイサは服に食い付いた。
「この服、帝都学院の体操服だから、非売品なの。あ~あ。もったいないことしたな~」
「それぐらい作ってもらったらいいじゃない?」
「オーセ、待って。クローゼットにあと5着なかった?」
「あったかな~? あ、似たようなのが何着かあったね」
「アレは5年生の予備と、残りは4年生と3年生のだよ」
「「変なところでケチね……」」
フィリップが体操服をコレクションしていたから、変に感じるオーセたち。こんなに大金持ちが保管するような物じゃないもん。
フィリップは乙女ゲームで出て来た物だから捨てられないだけ。3年生の物はもう着れないけど、観賞用に取ってあるのだ。
「ピッタリじゃない?」
「うん。前のヤツは大きい気がする」
「クッ……背が伸びると思って大きく作ってたんだった……」
「それがいまピッタリって……」
「3年間で目標に届かなかったんだね……」
「「きゃははははは」」
フィリップ、大誤算。2人に笑われて、涙ながらに床を叩くのであっ……
「「それで体は大丈夫??」」
「もう大丈夫って言ったじゃ~ん」
本当は2人の心配をかわそうと、体操服の話題を広げただけのフィリップであったとさ。
オーセたちの心配は適当に大丈夫と言って乗り切ったフィリップ。2人が仕事で中央館に向かうと、残されたフィリップはベッドに寝転んで天井を見ていた。
「ああ~……痛かった。ダンジョンでもアソコまで怪我したことなかったのに……」
実は、けっこう無理していたフィリップ。ダンジョンではソロプレイだったから、安全策を取っていたから大怪我とは無縁だったのだ。
「しかも、カイのあの攻撃なに? たいして痛くなかったし。鎖骨ぐらい折ってくれたら楽だったのに~~~」
レベル99の弊害。フィリップはわざとカイの模擬刀に当たりに行ったのだ。もちろん寸止めも予想しての体当たり。
小麦粉と氷魔法の併用でカイの視界を完全に奪い、寸止めよりも少し前を狙ってジャンプ。自分の速度とカイの剣速によって大怪我すると思っていたのは大誤算。
多少痛い程度だったから、フィリップは氷の足場を蹴って地面と平行に飛び、石の壁に直撃。前のめりに倒れたと同時に、ダンジョンで手に入れたナイフの中で一番攻撃力の高い物で自傷したのだ。
ちなみに血を吐いたのは、演技。モンスが来る前に口に血を含み、タイミングを見て吐き出したのだ。
「ま、これでしばらくは仕事しろとは言って来ないかな?」
ここまでやったのは、単純に仕事をしたくないだけ。最近フレドリクが仕事しろとうるさかったから、カイを使って大怪我しようと企んだのだ。
やり方はカイをおちょくるだけ。根城でアレほど迎え撃っていたのも、カイを苛立たせて1対1に持ち込ませようとしていたのだ。カイが喜んでいたのは誤算だけどね。
「それにしてもカイは、他とは別格だったな~。1人では足りないけど、兄貴たち全員となら、僕といい勝負できるかも? でもな~。戦う理由がない。クーデターで兄貴の命を狙うか、はたまた聖女ちゃんをさらってみるとか? フフ……それじゃあ魔王みたい。完全に悪役だな。フフフ……」
こうしてフィリップは、逆ハーレムパーティとの戦闘を夢見ながら眠りに就くのであった……
フィリップが変な時間に寝たからには、あとからやって来たフレドリクに「フィリップ~!」と大声で眠りを邪魔されるのは当然。なかなか起きないから心配だもん。
とりあえずフィリップは大丈夫だったので、フレドリクは長期の休暇を命令。フレドリクが帰ったらオーセたちに「それ、プーくんの日常だよね?」と言われてた。
これで心行くまで仮病を使えるので、夜型になったらキャロリーナの下を訪ねた。
「殿下! 大丈夫? 怪我は??」
今日のキャロリーナはいつもと違う。フィリップの体をまさぐるだけだ。
「あ、ひょっとして、僕が怪我したのこっちでも話題になってる??」
「ええ。大怪我したんでしょぉ~? どこ? ここかしらぁ~。ちぃ~ん」
「あうっ……」
まさぐるだけだじゃなく、フィリップの服を剥ぎ取って体を隅々まで確認するキャロリーナ。フィリップのフィリップを指で弾いたあとは、いつも通りのマッサージだ。
「本当に大丈夫そうねぇ。最近、こっちに来る頻度が少ないからぁ心配してたのよぉ~」
「それはお兄様が働け働けうるさかったからだよ。もう、会計やらされたり見習い騎士みたいなことやらされたりで大変だったよ~」
「それは~……当然のことを言われてるだけねぇ~」
まったく仕事をしていないんだから、キャロリーナも言われて当たり前だと思ってる。
「ところで、どんな噂が流れてるの?」
「殿下が訓練でぇ、見習い騎士にぃボコボコにされて大怪我したってねぇ。さすがにウソよねぇ?」
「ウソだね。近衛騎士の副団長を僕がリンチしたら、仕返しされただけだよ」
「そっちのほうがウソに聞こえるんだけどぉ~?」
「あ、リンチは言い過ぎた。運動しろって毎日来るから、5人掛かりで石投げまくって怪我させただけ。そしたらめちゃくちゃ怒ったんだよ~?」
「そりゃ怒るでしょうね……そもそも本当の話なの??」
「なんで伝わらないんだろ……」
フィリップが本当の話をしているのに、キャロリーナにはウソに聞こえる様子。近衛騎士の副団長という偉い人物が、命を懸けて守ると誓った皇家のご子息に怪我を負わせるなんて、あってはならないことなのだから……
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