502 / 522
二十章 最後まで夜遊び!!
502 戦勝ムード
しおりを挟むイデオン元騎士団長の手紙を読んだフィリップは、ダンジョンで怒りを吐き出してから帰宅。グウスカ寝ていたら夕方に、興奮するカイサとオーセに起こされた。
「陛下、大活躍だったんだって!」
「城ではもう、大盛り上がりだったんだよ!」
「知ってる知ってる。だろうね。ムニャムニャ」
「「寝てるヤツが知るわけねぇだろ!!」」
でも、二度寝。どうやらこのネタは昨日の夕方頃に城の上層部は知って、朝方に発表したらしいけど、フィリップは全部知ってるんだもん。カイサたちは口が悪くなって来たな。
「ふぁ~。さすがお兄様だね~。てか、何があったの?」
「ちゃんと聞いてから褒めなさい」
「これだからプーくんは……」
目が覚めてからは、真面目なフリして聞くフィリップ。カイサたちはフレドリクの活躍を見て来たみたいに語っていた。
「たぶんだけど、お兄様が千人斬ったって話は嘘じゃないかな~?」
「えぇ~。あの伯爵令嬢、確実な情報って言ってたよ?」
「貴族令嬢の話って、基本的に嘘が多いよ~?」
「そうだけど……じゃあ、百人の兵で万の敵軍を蹴散らしたってのは?」
「ウソ。誇張されまくってる。逆に聞くけど、なんで信じた??」
「「本当だと思ったんだも~~~ん」」
どうやらカイサたち、戦争の常識を知らなかったから、貴族令嬢にからかわれた模様。フィリップが戦争とはなんたるかを教えてあげたら、フィリップも疑われていた。
2人の中では、嘘つきナンバー1に君臨している人なんだもの。
この件はボエルに聞けば真実がわかると締めて、フィリップは他にも話はないかと聞いてみたが、フレドリク伝説しか2人は知らないそうだ。
「聖女ちゃんは?」
「誰も噂してなかったわ」
「今回はちゃんとできてるんじゃない?」
「あの聖女ちゃんがね~……」
「「うっ……なんか心配になって来た」」
ルイーゼのマナーの悪さは2人も承知していること。ただ、この戦勝ムードを悪くしたくないフィリップは、ルイーゼの話題を避けるように2人に言い聞かせるのであった。
それからの帝国は、まずはお城で戦勝ムードが活気付き、貴族街や貴族が通う店で働く人の口から戦勝ムードが帝都中に広がる。
その戦勝ムードは国境付近からゆっくりと帝都に向かって広がり、3日遅れぐらいで旅商人が「こんなことあったんでっせ~?」と帝都のお得意さんに喋ったが「おっそ」と笑われたんだとか。
帝国中が戦勝ムードに喜ぶなか、フレドリクが帰国。どこの町に寄っても万歳する民に出迎えられる。
帝都に着いた時も、民が自然と駆け付けて、フレドリクを万歳で褒め称える。その声は大きく、根城にまでうっすらと聞こえていたから、フィリップはお腹を押さえていた。
「また仮病?」
「まだ何も言ってないんだけど……」
「昨日、陛下の出迎え、行きたくないってゴネてたじゃな~い」
「お腹痛い気がする……」
「「ゴネるなと言っている……」」
フィリップは本当に胃がキリキリしてるのに、カイサとオーセは仮病認定。フィリップを馬車に積み込み、家臣が勢揃いする正面玄関前に放り出した。
フィリップがブーブー言うなか……いや、家臣が一言も喋らないなか、正門が開いただけではち切れんばかりの大歓声。その中を先頭の騎士が入場したら下を向いた。
「そりゃ恥ずかしいよね~?」
「「話し掛けないでください」」
「こんだけうるさかったら許されるって~」
理由はフィリップが言った通り。家臣の皇帝コールが凄いから、騎士は場違い感が凄いのだ。
カイサたちも、フィリップが場違いだと感じてる。ここは静粛にしないといけない場なんだもん。
ついにフレドリクが乗る馬車が入場すると、もう一段声援は大きくなったけどピタリと止まった。
「息切れかな?」
「「黙れ。てか、早く立ち位置に戻れ」」
「えぇ~……どこだったかな?」
もう一度言おう。ここは静粛にしないといけない場。だから家臣一同はフレドリクの馬車が入って来たら、そのことを思い出してピタリと止まったのだ。
それなのにフィリップと来たら持ち場を離れてカイサたちに話し掛けていたから怒られているのだ。
結局どこかわからなくなったので、フィリップがウロウロしていたら、ヨーセフに首根っこを掴まれてなんとか元の位置に戻れた。
家臣一同に「またあの馬鹿は」と見られていたが、フィリップは何もなかったかのようにフレドリクを出迎えた。
「皇帝陛下、長旅お疲れ様です。遠い地でのご活や……」
「フィリップ君。ただいま~。体は大丈夫?」
でも、完璧な挨拶はルイーゼに邪魔されて失敗。フィリップも口をパクパクしてフレドリクを見てる。
「うん。出迎えご苦労。今回の旅は、とても有意義な旅だったぞ」
「そのまま続けるんだね……あ、もう行くんだね……」
でも、フレドリクはルイーゼファースト。何もなかったかのように、入口に向かって歩き出す。それと同時に家臣一同は、大声でフレドリクの活躍を褒め称え続けるのであった……
その夜……
「僕、ちゃんとやってたのに~~~!!」
「「まぁまぁ……プププ」」
根城の中に、フィリップの嘆き声が響き渡るのであったとさ。
21
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる