【完結】夜遊び大好きショタ皇子は転生者。乙女ゲームでの出番はまだまだ先なのでレベル上げに精を出します

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十七章 大事件が起きても夜遊び

405 いい女

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「あ、そうだ。これあげる~」

 薬屋のキムから必要な薬を買って脅しておいたフィリップは、ショルダーバッグから液体の入ったビンを数個取り出してテーブルに乗せた。

「これは?」
「ポーション。聞いたことぐらいあるでしょ?」
「こ、こんな貴重な物を……」
「各種状態異常のポーションもあるから、作れるか研究しといてよ。特に麻痺ポーションは、死痛病にも使えるか早く知りたいな~?」
「はいっ! ちなみに優先順位は、ポーションからでよろしいのですか?」

 脅し過ぎたかもしれないのでフィリップがアメを渡したら、キムはポーションに興味津々。薬屋としては、貴族にしか出回らない薬がいつも気になっていたのだ。

「う~ん……麻痺ポーションの次は、避妊薬がいいんだけど」
「それだと時間が掛かり過ぎますよ~~~」

 でも、フィリップが新薬を欲していたので、いつになったらポーションに取り掛かれるのかと嘆くキムであったとさ。


 今までフィリップに協力していたキャロリーナだが、落胆するキムがちょっとかわいそうなので助言。避妊薬は腕のいい人に譲ればポーションを研究する時間が取れると折中案を出していた。
 しかし避妊薬が成功すれば、多大な研究費と利益が約束されるので、キムも大いに悩む。ひとまず麻痺ポーションから取り掛かってから業務委託は決めるみたいだ。

 とりあえず欲しい薬は全て手に入ったから帰ろうとしたら、隣の待合い室に移動したところでキャロリーナはフィリップの首根っこを掴んでテーブル席に座らせた。

「どったの?」
「ひとつ聞きたいことがあるんだけどぉ……ライアン君が危険を冒してまで直接出向くってことは、もしかして痛み止めが必要な方は、あの方なのでは?」

 キャロリーナが神妙な顔で質問すると、フィリップは悩む仕草をしてしまったので、失敗したと表情を崩した。

「さすがキャロちゃんだね~。症状のことはまだ僕の侍女や騎士も知らないことだから、絶対に表に出さないでね?」
「ウ、ウソ……治らないなんてウソよね?」
「それは神のみぞ知るだよ。僕は最悪のケースを想定して動いてるの。少しでも苦痛を取り除けるようにね」
「その最悪のケースって……もう長くないってこと?」
「うん。もって半年。奇跡が起きて1年。早いと1ヶ月以内……キャロちゃんも覚悟しておいて」

 驚愕の表情で話を聞いていたキャロリーナだったが、フィリップの冷淡な言い方のおかげで冷静さを取り戻した。

「ライアン君は大丈夫? 肉親でしょ??」
「まぁ……いまのところはね。昨日お兄様とやり合ったから、冷静になれたってのもある。その時が来たらわからないけど……」
「そうよね……あたしに何かできることがあったらぁ、なんでも言ってよねぇ」
「うん。その時は頼むよ」

 こうして2人はもう少し喋ってから、薬屋を出るのであった。


 馬車に乗り込んだフィリップは、徹夜がこたえたのかコテン。キャロリーナの太股とお胸に挟まれて幸せそうな顔で眠る。
 そのだらしない顔を正面から見ているカイサとオーセは、何か言いたそうだ。

「あなた達ぃ……」
「「はひっ!」」

 それを察したキャロリーナが声を掛けると、2人はビックリしたのか声が裏返った。

「取って食べたりしないからぁ、そう緊張しないでぇ」
「「はあ……」」
「ライアン君にぃこんなにかわいいメイドさんがいたなんてねぇ。もう長いのぉ?」
「い、いえ。夏からです」
「そうなのねぇ。ところで彼のことわぁ、2人とも好いてるのぉ?」
「好きと言えば好きですけど……」
「で……主人は女癖が悪いので……」
「ウフフ。それは大変ねぇ」

 キャロリーナはカイサたちのことを知ってるクセに、知らないテイで会話を続ける。

「あたしもライアン君のこと大好きよぉ。だから2人に頼みたいことがあるのぉ」
「頼み、ですか……」
「ええ。これから彼に辛い試練が訪れるわぁ。その時わぁ、一番近くにいるあなた達に支えて欲しいのぉ。お願いねぇ」
「はい。できることなら……」

 予言めいたことを言われたカイサは、なんのことがわからなくても無難な返しをする。それとは違い、オーセは……

「キャロリーナ様は、占いもできるのですか?」

 空気が読めない。なのでカイサは驚いて横向いてる。

「ウフフ。そんなんじゃないわぁ。ただの女の勘よぉ。ウフフフ」
「女の勘……カッコイイ……どうしたらキャロリーナ様のような女性になれるのですか?」
「オーセ。いい加減にしなさい。キャロリーナ様に失礼でしょ」
「いいのよぉ。こんなにかわいい子に褒められてぇ、喜ばないおばさんなんていないわよぉ」
「おばさんなんてとんでもないです!」
「私も正直言いますと、キャロリーナ様のようになりたいです……」
「そうねぇ……女を磨くことわぁ、おこたっちゃダメねぇ」

 馬車が奴隷館に着くまでキャロリーナのいい女講座が続き、カイサとオーセは終始尊敬した目をしていたのであった。


 フィリップが目覚めたのは、馬車が城に着いてから。キャロリーナがいなかったのでカイサたちに聞いたら、違和感が凄い。

「キャロリーナ様わぁ、奴隷館で降りて行きましたわぁ」
「殿下にぃ、よろしくと言伝を頼まれましたわぁ」
「2人とも何それ? オーナーの口癖が移ったの??」
「「いい女の喋り方よぉ~」」

 どうやら2人は、習ったことをすぐにやりたいお年頃らしい。

「う~ん……似合わないな。普通にしてよ」

 でも、フィリップは辛辣だ。

「「なんでよ~~~!!」」
「わっ! ここ玄関だから! 大声出しちゃダメだって~」
「「あっ……」」

 それで2人が怒ったので、その現場を数人の貴族にバッチリ見られてしまうのであった。
 もちろん貴族の間では、「第二皇子は少女にもナメられている」と一気に広がったらしい……
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