【完結】夜遊び大好きショタ皇子は転生者。乙女ゲームでの出番はまだまだ先なのでレベル上げに精を出します

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十七章 大事件が起きても夜遊び

406 皇太子の決断

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 痛み止め薬を購入したフィリップは城の中を急ぎ足で歩き、頭を下げる遠方から登城した貴族を無視して皇帝の私室にやって来た。
 カイサとオーセはドアの前に待機させてフィリップは中に入ると、皇帝の看病をしていたアガータに声を掛ける。

「お疲れ様。父上、目を覚ました?」
「いえ。お昼から病状に変わりはありません。時々苦しそうにしておりました」
「そっか。ちょ~っとお婆ちゃんに頼みがあるんだけど……体で痛いところとかある?」
「もう歳なので、節々痛みます。それと頼み事はどう関係しているのですか?」
「んっとね。僕、さっきまで……」

 フィリップが説明すると、アガータはこころよく無理な頼みを引き受けてくれるのであった。


 フィリップが私室に戻ると、皇帝を看病する人員はアガータが手配してくれていたので、やんわりと戦力外通告されていたけど居座る。
 お腹が空くと皇族食堂で食べ、カイサたちと一緒に皇族専用風呂に入ったら、2人は口をあんぐり。豪華絢爛で広々したお風呂だから、天国と勘違いしたらしい。

 綺麗サッパリになったフィリップは私室に戻ると、カイサたちの仕事はここまで。明日の朝に顔を見せるように言って根城に帰した。
 ここでしばらくアガータと一緒に看病していたら、今日の仕事を終えたフレドリクがやって来た。

「フィリップ。父上はどのような状態だ?」
「変わらず。ずっと寝てたよ」
「そうか……」

 フレドリクが暗い顔をするなか、フィリップはお願いをしてみる。

「お昼間に薬屋に行って来たんだけど、父上に痛み止めの薬を使っていい?」
「薬屋だと? フィリップにそんなツテがあったのか?」
「ないから、僕の従者に紹介してもらって、そっから聞き込みして腕利きを探したの」
「その薬屋は信頼できるのか? もしも体調が悪化したとなると、裁かなくてはならないんだぞ??」
「それは許してやってよ~。てか、すでにお婆ちゃんに使ってもらって検証済みだよ」
「なんだと!?」

 フィリップがアガータにしたお願いとはモルモット。そんな危険なことをさせていたので、フレドリクも驚愕の表情でアガータを見た。
 しかしアガータは表情を一切変えずに淡々と報告する。どうやらこの痛み止めはなかなか有効で、節々の痛みがケロリと消えたらしい。

「本当に大丈夫なのか? 何か体に違和感はないか?」
「特にはございません。しいて上げるなら、薬を飲んでから眠気がある程度でしょうか」
「その程度ならば……」

 アガータならば信頼できるから、フレドリクも薬の服用を許可してもいいかと考える。

「お婆ちゃんに飲んでもらったのは、効果が弱いヤツなんだよね~。薬屋の人が言うには、強い物ほど体に影響があるみたい。なんだったかな……そうそう。眠気や吐き気、特に依存性が高いらしいの。原料は麻薬ってなってるな」

 フィリップが薬屋に書かせたメモを読むと、フレドリクは今度は唸り出した。

「それでね。すっごく言い辛いんだけど、薬屋は父上と同じ症状の人を何人も看ていたの」
「言い辛いというと、そういうことか?」
「うん……痛みをやわらげるか、痛みから解放してあげるしか方法がないって……」
「そ、そんな……」

 フレドリクも覚悟はしていたが、フィリップの口から救いようがないと聞かされて後退り、ソファーに足が当たったと同時に腰を落とした。

「僕は父上に、その時が来るまで安らかに過ごして欲しいけど、薬を使うには皇太子殿下の許可がないとできない。どうか、この薬を使わせてください。お願いします」
「私からもお願い致しします」

 そこにフィリップは涙目で頭を下げると、アガータも味方に付いて頭を下げた。だが、フレドリクの返事はなかなか来ない。父親の死は受け入れ難いのだろう。
 しかし、フィリップが皇太子と口にしたのだから、徐々に次期皇帝の顔に変わって行った。

「わかった……これは皇太子である私の決断だ。どのような結果になろうとも、私の責任とする。フィリップ……薬の使用を許可する」
「はっ!」

 さすがは誰もが認める次期皇帝。その決断の仕方にフィリップでさえ惚れ惚れして、大きな声で返事をするのであった。


 それからフィリップの指示で経口薬を粉々に砕いて水に溶かした物を、皆で協力して皇帝にゆっくりと飲ませる。
 しばらく待つと、心なしか皇帝の顔が安らいで見えたので、フィリップたちは抱き合って喜んでいた。

 その結果のせいで、薬の手配はフィリップの仕事に。フィリップも薬屋のことは自分しか知らないから、快く了承していた。
 そのついでに、フィリップはお願い。もっと効き目のある薬を探すと言って、平民街の有力者を全て紹介してもらった。

 名簿の中にはキャロリーナの名前があったので、フレドリクが出て行ったらニヤリ。どうやら有力者を紹介してもらったのは、キャロリーナと会ったことのアリバイ作りらしい。
 いつ会ったかなんて、些末な問題。これで堂々とキャロリーナの名前を出せるから、薬屋のことも説明できるとほくそ笑んでいる。
 ちなみにフィリップが新しい薬屋を探すかは気分次第。キャロリーナに絶大な信頼をしているから、いまよりいい薬屋がいるとは思ってないのだ。ていうか、面倒なんだろうね。

 今日のフィリップも昨日と同じく夜通し看病。限界が来たらソファーで眠り、何かあったらメイドに引っぱたいてでも起こせと命令していた。
 そんなことを言われたメイドはドキドキ。皇帝が急変しませんようにと祈りながら朝を待つ。第二皇子なんか叩けないもん。

 その祈りが通じたのか無事朝になり、人の入れ換えで病室が少し賑やかになった頃に、フィリップはその声で目覚めた。

「ふぁ~……お婆ちゃん、おはよ~」
「おはようございます。いまはまた薬を飲ませている最中です。殿下のお食事も御用意しておりますよ」
「うん。ありがとう」

 フィリップはムシャムシャとサンドウィッチを食べながら、皇帝の様子を見守る。食事を終えた頃にフレドリクがやって来たから「変化なし」と報告し、軽く話す。
 フレドリクが仕事に向かい、お昼も近付くとフィリップに眠気が来たのでもうひと眠りしようかと考えていたら皇帝から声が漏れた。

「父上! 父上僕だよ! 聞こえる!? フィリップだよ!!」

 覚醒のきざしだと感じたフィリップは皇帝の手を取って何度も大声で声を掛ける。すると数十秒後に、皇帝の目がモソモソと動いて、完全に開いた。

「フィ、フィリップ……」
「父上! 起きた! やった~~~!!」

 皇帝が名前を呼んでくれたので、フィリップは飛び跳ねて喜ぶ。そんな2人を見た私室にいる者は、歓喜の声をあげるのであった……
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