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十七章 大事件が起きても夜遊び
416 死痛病の写本
しおりを挟むエイラとダグマーが訪ねて来た翌日。フィリップは昼頃にようやく起床。慣れない仕事をしたから疲れていたのだ。
カイサとオーセも慣れない仕事をして疲れていたけど、朝には目覚めている。しかし疲れが溜まっているのか、フィリップが寝室を出たらゲッソリとした顔をしていた。
「ど、どったの? パーティーばっかりで疲れた??」
「「62番目の女……」」
いや、2人はアレから眠れなかっただけ。10歳の経験人数じゃないもん。自分たちは何百番目なのかも気になっていたんだって。
「62番目の女……なにそれ?」
「ダグマー様よ! プーちゃんは62番目にした人って言ってたよね!?」
「10歳でそんなに抱いたの!?」
「あぁ~……寝惚けてたんじゃない? ダグマーは2番目だよ。それまではずっとエイラにマッサージの作法を教えてもらってたの」
「そ、そうよね。エイラ様がいるんだから困らないよね」
「プーくんは女癖悪すぎるから、本当かと思ったよ~」
「やだな~。いくら女好きでも、10歳でそんなにできるワケないじゃな~い。ちょっとトイレ行って来るね~」
カイサとオーセは、フィリップが眠りながら喋っていたのを見ていたので、これは信じてくれた。そのフィリップはトイレに入って便座に座ったら……
「ヤッベ~……焦った~」
ドッキドキ。どうやら寝惚けていたから真実が漏れたみたい。ちなみに現在のフィリップの経験人数は、300人超え。
100人までは名前と容姿をまとめてナンバリングしていたけど、面倒になってやめたから、もう自分でも何人とマッサージしたかわからなくなってるんだとか。
それまで平均すると年間30人だったから、この計算式でいいやと思っているらしい。毎年増えていることに気付かずに……
フィリップは心を落ち着かせて出す物も出したらリビングへ。2人ともグロッキー状態なので昼食後は休ませる。
カイサとオーセが眠りに就いたら、フィリップは平民服に着替えてお出掛け。護衛騎士を連れて薬屋に向かった。
薬屋では各種薬を買い取り、死痛病の写本もできていたからそれも受け取る。あとは避妊薬のことを聞いていた。店主のキムは「覚えてたんだ!?」と焦ったらしいけど。
新薬は時間が掛かるのはフィリップもわかっているので、特に何も言わず退散。キムは「助かった~」と、肝を冷やしたんだとか。やってはいたけど、まったく進んでなかったんだって。
根城に戻ったフィリップは、今度は中央館に顔を出すからと護衛騎士に準備させ、着替えていたらカイサたちが目を覚ました。
フィリップは寝ているように言っていたが、2人は仕事にプライドがあるからついて行くとのこと。どちらかというと、フィリップのようにサボっていると思われたくないらしい……
そこまで言われてはフィリップも好きにさせて、2人を連れて中央館へ。執務室の前室にいる執事に「お兄様ひとり?」と軽く言ったら仕事中とのこと。執事も「邪魔するな」って顔に書いてる。
それでもフィリップは、ワガママ言ってなんとか入室。カイサたちも「邪魔しませんように!」と祈りながら見送った。
「忙しいところゴメンね~。他に誰かいたら諦めたんだけど、チャンスだったから~」
「珍しく無理を言うと思ったら、そういうことか。そっちに掛けてくれ」
「さっすがお兄様~」
フレドリクは誰にも聞かせられない話イコール皇帝のことだとすぐに気付いて、ソファー席に移動してそこで話を聞く。
「今日は薬を購入して来たよ。あとで父上に届けておくね」
「ああ。助かる。そういえば購入資金はどうしているのだ?」
「僕のポケットマネーから出してるけど……」
「領収書を出せ。それは皇家の財布から出す物だ」
「あっ。そりゃそうか。バタバタしてたからすっかり忘れてたよ~」
お金の問題はフレドリクも忘れていたので、どちらも反省。ただ、皇帝の病状を悟られてはいけないから、皇家の財布でも個人資産から出すらしい。
「用件はそれだけではないのだろう?」
「そそ。薬屋に頼んでいた死痛病の写本が完成していたから、それも買い取っておいたよ。あ、これ、適当に値付けしたから領収書ないや」
「金額だけ言ってくれたら問題ない」
フィリップが金額を告げると、フレドリクはそんなモノかとメモをする。フィリップ的にはいつもの感覚で出し過ぎたと思っていたけど、フレドリクには端金だったみたいだ。
そのフレドリクは写本をパラパラと斜め読みして質問する。
「誰1人名前が書かれていないが、これには理由があるのか?」
「あぁ~……なんかね。安楽死の薬を処方した人もいるからね。薬屋も表に出すのビビったみたい」
「なるほどな。確かに間接的にだが殺したことになるから、人には言えないか。亡くなった者の家族も知られたくないだろうな。うむ。そういったことの法整備も必要になるか……」
これはフィリップのウソ。フレドリクに見せることになるのだから、家族や薬屋が裁かれる可能性があるから全て数字に統一したのだ。薬屋は気付かずにそのまま写本しようとしてたけどね。
「そういえば、神殿からはなんかいい情報手に入った?」
「それが神殿には、死痛病の患者が1人もいなかったのだ」
「ゼ、ゼロ? 薬屋1人で30人近くもいたのに、ゼロなんてありえるの??」
あんなに大きな組織がゼロでは、フィリップも驚きを隠せない。
「それがありえるのだ。また神殿の闇が暴かれて頭が痛い。はぁ~……」
フレドリク曰く、この調査は秘密裏にしないといけないから親友のモンスを頼った。モンスは何も聞かずにその調査を引き受けてくれたが、死痛病なんて病気は誰も知らなかったとのこと。
モンスもおかしいと思い、違う名前で呼ばれているのではないかと調べ直す。するとすぐに、ふたつの名前が出て来た。
「不治の病は、まぁ普通だね。でも、天の罰は、本当に病名なの?」
「病名でもなんでもない。神官が治せないと言えないから、神が下した罰ということにしているのだ」
「しょ、職責放棄……」
「それだけならまだいいのだ。よくはないが、まだな。最悪なことに、天の罰は上級神官案件にして、お布施が足りないから神がお怒りだと、患者から根こそぎ奪っていたのだ」
「えげつな!?」
神殿の闇が深すぎて、フィリップも驚愕を通り越してブルッと震える。普段ならもっと踏み込むフィリップだが、この先が怖くて聞きたくなくなるのであった……
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