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おまけ クーデター後のお話
130 説明6 二度目のフレドリク
しおりを挟むフィリップが皇帝になってから早2ヶ月。1ヶ月が経った辺りからフィリップの仕事は格段に減ったので、この間に後回しにしていたことを消化していた。
まずは元皇后ルイーゼの罰。1ヶ月間猶予を与えて、子供と過ごす時間を取らせたがついに引き離した。
ルイーゼが大泣きするからまたフレドリクが反抗的になったが、残りの逆ハーレムメンバーは帝都にいないから、フィリップは楽々力で押さえ付けて強引に奪い取った。フレドリクとのタイマン勝負を楽しんでいた節はあるけど……
これは罰なのだから子供の居場所は秘密。2人には一切の接触を禁じた。もちろん逆ハーレムメンバー全てだ。
ちなみに逆ハーレムメンバーの3人は実家にて蟄居中。カイだけは実家が帝都なので、3年前から国境付近に左遷された父親の下に送って、国境線を守らせている。
近々3人に、フィリップが選別したドエロイお姉さんを送り込んでムリヤリ結婚させるらしい。最低3人の子供を授からないといけないらしい……変な罰だな。
それが終われば遅ればせながらの戴冠式。翌日には結婚式を行い、帝都民から大いに祝福された。
さすがにフィリップも嬉しいのか笑顔。その翌週にはエステルの御懐妊も発表されたから、民はまた祝福。フィリップも顔が緩みっぱなしだ。
そんなフィリップがいま力を注いでいる仕事とは……
「フィリップ……なんで職人にまざって作業なんかしてるのだ?」
フレドリクが指摘した通り、何故か機関車工場で油にまみれてる。
「だって~。やることないんだも~ん」
国に必要な制度は全て整えたし、そもそも議会制にして皇族の出番をほとんど削ったから、フィリップの仕事はほとんどないのだ。
「それにしてもこれはないと思うぞ?」
「そう? 僕がいたほうが効率的でしょ。本当は兄貴にやってもらったほうが早いと思うんだけどね~……忙しそうだし」
「忙しいのはフィリップのせいだ」
フレドリクの現在の仕事は、ホーコン議長の秘書的な立場。議員の話を精査したり議会の雑務もしているので忙しいのだ。
でも、天才フレドリクに掛かればこの程度の仕事量は軽々やっているよ。8時間労働って枠に収めるのが大変ってだけで、ルイーゼと一緒に過ごす時間もたっぷりあるもん。
「それで~? なんか用? 誰かのお小言伝えに来たの??」
「いや、以前した話を詳しく聞かせてもらおうと思ってな。暇な日を聞きに来たのだが……」
「休みの日は忙しいんだよね~。えっちゃんたちの機嫌を取らないといけないし。たまには仮病で休む?」
「そんなことできるワケなかろう」
「有給休暇とったらいいじゃん。有給は労働者の権利だよ」
「はぁ~……フィリップを見ていると真面目に働くのが馬鹿らしくなるな」
1ヶ月前まではフィリップも真面目に働いていたのだから、この変わり身にフレドリクはついて行けない。
本当に馬鹿らしくなったので、フィリップの命令ってことで有給休暇を申請するフレドリクであった。
それからフレドリクが休みの日。フィリップがフレドリクの屋敷にやって来た。自分の家では話をしたくないらしい。働いていないことがエステルにバレるもん。
そんなことだろうとわかっているフレドリクはため息まじりに書斎に通して内緒話だ。
「で……なんかお願いでもあるのかな? 聖女ちゃん関連なら一切聞かないよ??」
いや、フィリップは疑っている。
「フフ。なんだ。バレていたのか」
「あんなところまで来るんだも~ん。かなり探したでしょ?」
「ああ。皇帝が作業員してるなんて、想像もしてなかったからな」
「んで? 話は終わり??」
「ああ。ルイーゼのことではないから聞いてくれ。私が個人的にやっていたことを、続けさせてほしいだけなのだ」
フレドリク個人となると、フィリップも予想がつかないので小首を傾げた。
「ある人物を追っていてな。その者が帝都に戻ったらしいから会って話をしてみたいのだ。夜の帝王ハタチ……フィリップは知っているか?」
でも、面白い名前が出たから笑いそうだ。
「知ってるも何も……」
「知っているのか!?」
「目の前にいるじゃん」
「ここには誰も……」
「違う違う。僕の目の前じゃなくて、兄貴の目の前」
「私の、目の前……」
後ろを振り向いたフレドリクは、ゆっくりと前に視線を戻す。
「そう! 僕が夜の帝王ことハタチ! またの名を、遊び人のキンさんだ~~~!!」
するとフィリップは勢いよくテーブルに飛び乗り決めポーズだ。
「プッ……ククク。それは見付からないはずだ。クククク」
「えぇ~。なんで笑ってるの~? もっと驚いてよ~~~」
「ククッ。せめて最後は本名を名乗れ。アハハハハ」
でも、まったく決まらない。そりゃどちらも偽名では、締まらないよね~?
フレドリクの笑いが止まるのを待ってどうしてそんなに冷静なのかと聞くと、フィリップの強さはすでに知っているから合点がいっただけだって。
それから7歳からダンジョンに通い、8歳から娼館に通っていた逸話を聞かせてあげたらやっとフレドリクも驚いてくれた。主に娼館通いに、だ。
「ところで世界最高の暗殺者やクレーメンス伯爵たちを殺したのもフィリップなのか?」
「そそ。兄貴が勘付いていたからこっちがビックリしたよ」
「私の考えは間違いではなかったのだな……他にも貴族を殺したりはしてないか? 帝都では不審死する貴族が多かったのだが……」
「女に暴力を振るうような小物は名前は覚えてないんだよね~……」
「やはりそうだったのか……」
これもフレドリクが疑っていたのかと、フィリップは二度ビックリだ。
「大物だとレンネンガンプ侯爵ね。アイツ、僕のこと殺そうとしたんだよ~?」
「レンネンガンプ侯爵もか!?」
「あ、驚いた。あと、アードルフ侯爵と~……確かフリューリング侯爵だったかな? 娘がムカついたから」
「アードルフ侯爵とフリューリング侯爵まで!? そのせいで派閥がめちゃくちゃになったのだぞ~」
大物を出したらフレドリクも二度ビックリしてくれたから、フィリップもしてやったり。それから裁いた経緯を説明してあげるのだが、どう見ても殺人事件の取り調べになってるよ。
「まぁ情状酌量の余地はあるが……このフリューリング侯爵は、どうして離れた地の犯罪をフィリップが知っていたのだ?」
だいたい酷いことをしていたのだから、フレドリクも見逃してもいいと考えたが、一件だけは腑に落ちない。
「あぁ~……僕、未来から来たような話をしたでしょ? その世界ではこの世界は物語になってたの。その中にフリューリング侯爵が出てたから、犯罪を全て知ってたんだ」
「俄には信じられないが、それぐらいじゃないとフィリップが知りようがないな……」
「フフ。天才は話が早くて助かるよ。ちなみにそいつの娘、聖女ちゃんをビンタしたり監禁したりする、酷い設定だったんだよ~?」
「ルイーゼを……許せないヤツだな。先に手を打ってくれて助かった」
「そこでなんでポンコツになるかな~?」
ルイーゼを出しただけで無罪放免になったから、フィリップも笑えねぇ。
「てかさ~……いい加減、昔の兄貴に戻ってくんない?」
「昔も今も、私は私だぞ?」
「ぜんぜん違うよ。僕たちは物語の主要キャラ。聖女ちゃんが出演してから、その設定を強制されているの。だから逆ハーレムなんて異常な事態も兄貴は受け入れているんだよ」
「どこが異常なのだ?」
「そこだよ。皇帝がハーレム作って世継ぎを残すのはわかるよ? 皇后がハーレム作ったら皇家の血はどうなるの? 兄貴ならわかるよね??」
フレドリクはハッとした顔を見せた。
「脈々と受け継いだ血が途絶えてしまう……」
「そうだよ。帝国の歴史はおしまい。正確には、新しい歴史の始まりだ。そうなったらお父さんもお母さんも泣いてたよ?」
「わ、私は、どうしてそのことを気付かなかったのだ……」
「それが強制力。カイもヨセーセフもモンスも、それに巻き込まれてるの。だから僕は殺す選択はしてないんだ。わかった?」
フィリップが問い質すと、フレドリクは何か憑き物が落ちた顔になった。
「確かに、よくよく考えてみるとおかしなことだらけだ。それはルイーゼと出会ってから始まってる……」
「やった! ついに呪いは解けた! だったらえっちゃんのことも嫌いになれないよね??」
「エステルのことは、ちょっと好きになれそうにない……」
「なんで!? 僕が聖女ちゃんの暗殺止めたんだから、たいしたことしてないでしょ~~~!!」
でも、強制力はまだ解除ならず。なのでルイーゼもスキスキ。
「もう! 聖女ちゃんとラブラブするのは許すけど、国に変なことしないでよ!!」
というわけで、怒って帰るフィリップであったとさ。
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