131 / 142
おまけ クーデター後のお話
131 誕生
しおりを挟むフィリップが皇帝になってから早10ヶ月。この日のフィリップはエステルの傍から離れなかった。
「パパでちゅよ~?」
そう。ついにフィリップの子供が……
「まだ産まれてませんわよ。毎日毎日、お腹に喋り掛けて……仕事はどうしているのですの?」
いや、まだ産まれてない。エステルの大きくなったお腹に喋り掛けてばっかりだ。あと、さらに大きくなった胸にも……
「だって~。気が気じゃないんだも~ん」
「陛下がそんなに子供好きだったとは思いもしませんでしたわ。孤児も邪険にしてましたし」
「アイツらは、ほら? 他人だし。遊んで遊んでってうるさかったから。我が子は目に入れても痛くないんだろうな~。男の子と女の子、どっちだろうな~? 女の子だったらえっちゃんに似てかわいいんだろうな~」
フィリップのニヤケ顔が止まらないので、エステルもため息が出てしまう。
「はぁ~。ですから、必ず男の子を産むと言ってますですわよね?」
「どっちでもいいじゃ~ん。女帝もかっこよさそうだよ?」
「ですから、帝国の文化を私の代で終わらせたくないと言ってるのがわからないのですの?」
「そんなに怒らないでよ~。お腹の子に響くじゃ~ん」
「怒っていませんわ。こんな顔で悪かった…デス、ワネ……」
「ん~??」
エステルの目付きが悪いのは生まれ持ってのこと。そのことにイラッとしたエステルだったが急に声が小さくなったので、フィリップは首を傾げた。
「どったの?」
「うっ……」
「っまれる~~~!!」
「先に言わないでださいまし!!」
大事なセリフを取られたエステルは激怒。それでもフィリップは大慌てだ。
「聖女ちゃん! 聖女ちゃん呼んで来ないと!!」
「陛下! 病気じゃないんですから!!」
「薬屋! 薬屋はどこだ!?」
「だから病気じゃないと言ってるでしょ!!」
「えっちゃんが死ぬ~~~!!」
「「出て行け~~~!!」」
というワケで、エステルの世話をしていたカイサとオーセがフィリップの両脇を抱えて強制排除するのであったとさ。
エステルが産気付く前から、産婆と女性神官が配置に就いていたので何も心配はない。皇后様の出産で次期皇帝が生まれるかもしれないのだから、準備万端に決まっている。
それなのに暴れたフィリップは、部屋の外でカイサとオーセの説教。土下座で「中に入れてくだせぇ。おでぇかん様~」とやってるから立場が真逆だ。
その結果、フィリップの入室は許可。皇帝の言葉と言うより、「皇帝に土下座させてる」とヒソヒソ言う周りの声にカイサたちは負けたのだ。
フィリップはそれを見越してやっていたので、顔を上げたあとは悪い顔してたけど……
「ヒッヒッフー。ヒッヒッフー。はい! えっちゃんマネして」
「はぁはぁ……なんですのそれ……ぐうぅぅ」
「ラマーズ法って言って、痛みが引く呼吸法だよ。はい、ヒッヒッフー、ヒッヒッフー」
「ヒッヒッフーーー! はぁはぁ」
「頑張って! ヒッヒッフー!」
「ぐうぅぅ……はぁはぁ」
「ヒッヒッフー! ヒッヒッフー! だよ? あ、痛いなら麻痺ポーションあるけど使う? 薬屋お墨付きだよ??」
「うるさ~い! はぁはぁ」
中に入ったら入ったで、フィリップは邪魔。エステルに怒られたので、何も言わずただただ手を握り続ける。口はパクパク「頑張れ」って言っていたけどね。
エステルはラマーズ法の呼吸が楽だったのか、途中からマネするようになり、10時間……
「オギャー! オギャー!」
ついに赤ちゃんのお目見えだ。
「や、やりましてよ……」
「えっちゃ~ん。ありがと~う。よくがんばった~~~。うわああぁぁ~~~ん!!」
「泣き過ぎですわ。でも、ずっと手を握ってくれて、心強かったですわ」
「うわああぁぁ~~~ん。男の子だ~~~」
「オギャー! オギャー!」
「赤ちゃんもうるさいと言ってますわよ?」
エステルに感謝して大泣きしていたフィリップは、赤ちゃんを抱いたところでギャン泣き。赤ちゃんもギャン泣きしてるので、フィリップは再び追い出されるのであったとさ。
それからのフィリップは、赤ちゃんがいる寝室に入り浸り。オモチャや服だけでなく、どこで買って来たのかわからない怪しい物が部屋の中にどんどん増えて行く始末。
「これ、何に使う物なのですの?」
「それは~……まだ早かったね。成人したら渡すよ」
「何に使う物なんですの!?」
大人が使うようなオモチャも混ざっていたので、フィリップは黙ってしまう。エステルはこう見えて純情だから、何かはわからないしね。
赤ちゃんのごはんの時間になってもフィリップは出て行かない。
「美味しいのですの?」
「バブー」
「言葉を使ってくれません?」
だって、フィリップだもん。何を飲んでいたかというと、ご想像にお任せします。
そんなことばかりしているので、フィリップはとうとう追い出された。泣きながら何度も謝るから入室は許可されたが、1時間に15分の制限時間が設けられたんだとか……
こうなっては仕方がない。フィリップはオーセとカイサに抱きついて、バブバブ言ってる。ハマったみたいだね。
「バブー」
「プーくん、本当に赤ちゃんみた~い」
「うん……これ、ペトロネラ様と一緒の時に聞こえて来た声だよね……」
「あっ! あった!? ということは……」
「バッブーーー!」
「「あ~れ~~~」」
結局フィリップの頭の中はそれでオッパ……いっぱい。第一皇子も生まれたこともあり、オーセとカイサは晴れて側室に昇進。本格的な子作りも解禁になったとさ。
22
あなたにおすすめの小説
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる