【完結】悪役令嬢と手を組みます! by引きこもり皇子

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二章 引きこもり皇子、外に出る

027 招かれざる客2

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「ねえ……これって必要??」

 今日はカイ・リンドホルム近衛騎士長来襲イベント。辺境伯邸で出迎えるために玄関まで連れて来られたフィリップは、エステルを見上げた。

「はい。バレないためには必要ですわ。かわいらしくって、お似合いですわよ? プッ……」
「いま笑ったよね!?」
「「「「「あはははは」」」」」

 エステルが軽く吹き出してフィリップがツッコンだら、辺境伯夫妻だけでなく執事やメイドも大爆笑。フィリップは辺境伯邸に馴染みすぎているどころか、その性格と容姿のせいで地位を忘れ去られているようだ。
 ちなみに皆が笑っている理由の大半は、フィリップがドレスを着せられて化粧までしているから。元々美男子だから女性に変装することは容易なのだが、どう見ても小学生の女子。
 金髪ロングのカツラを被れば、エステルの子供の頃に来ていたフリフリドレスが似合いすぎているので、皆は少しのことで笑ってしまうのだ。

「わたくし、兄しかいなかったから妹がほしかったのですわ。エステルお姉様と呼んでくれませんこと?」
「エ、エステルお姉様……」
「おかわいいですわ!!」
「オッフ……」

 エステルの要求通り言ってみたら、フィリップは谷間に挟まって嬉しそう。あと、ちょっと苦しそう。

「この破壊力は凄いね。ちょっと揉んでいい??」
「キャッ!? 何をなさりますの!?」
「そっちが挟んで来たんだろ~」

 なので男を思い出させてあげたら、フィリップはエステルに変態扱いされるのであったとさ。


 それからフィリップが皆からチヤホヤされて迷惑していたら、外を見張らせていた執事が馬の集団を確認したと呼びに来たので、ホーコンたちは外に出る。しかしその時、フィリップはエステルに肩を掴まれた。

「どちらに行かれますの?」
「え? カイのヤツを出迎えに……」
「エリクちゃんは、屋根裏部屋に隠れていてくれたらいいですわよ」
「はい?? 出席しなくていいなら、なんでドレスなんて着せたの!?」
「念の為ですわ。プッ……ウッラ。連れて行きなさい」
「いま笑っただろ~~~……」

 こうしてフィリップはウッラの肩に担がれて、屋根裏部屋に隔離されるのであった。でも、ウッラと2人きりでサボれるので、ラッキーとか思っているフィリップであったとさ。


 辺境伯家族や従者一同で玄関先で待っていると、10人もの馬に乗った男たちがその前で止まる。そして全員馬から下りると、一際豪華な衣装を身に纏った背の高い筋肉質で黒髪の男が前に出た。

「出迎えご苦労」
「はっ! カイ・リンドホルム近衛騎士長も、長旅お疲れ様です」

 地位的にはホーコンのほうがやや高いが、カイは皇帝の名代となっているので、ホーコンは下手に出て握手を交わす。

「さっそくだが、調査に入りたい。部屋を用意してくれ」
「はっ。帳簿も軽食も用意しておりますので、ゆっくりとして行ってください」

 簡単な言葉を交わすと、辺境伯家族で視察団を案内。大部屋には書類を山積みにした長いテーブルを複数と、人数分以上の椅子。壁際にある長いテーブルには飲み物や軽食が並んでいる。

「なかなかの量だな」

 大部屋の中を見回したカイはホーコンに喋りかけたが、エステルがしゃしゃり出る。

「ここは帝都から遠く離れていますから、それだけ準備をする時間がありましてよ」
「エステル嬢……」

 ヒロインをイジメていた人物が妖しい笑みを浮かべながら喋りかけて来たので、カイも警戒している。

「わたくしの顔に何かついてまして?」
「いや……よく俺の前に顔を出せたモノだと思ってな」
「何をおっしゃいますか。陛下から無期限の蟄居ちっきょを言い渡されているのですから、それで罪は帳消しですわよ。それとも、わたくしを私的に罰したいのですの? それこそ陛下を侮辱しているようなものですわよ」
「相変わらずよく喋る女だ。ならば、先に取り調べをしよう。お前たちは帳簿を調べておけ。もうひとつ部屋を借りるぞ」

 カイは仲間の騎士に元奴隷の雇用先を調べさせ、エステルを小部屋に連れて行こうとする。しかしホーコンが「嫁入り前の娘を男と2人きりにはできない」とか騒ぎ出したので同席することとなった。


「取り調べと聞いてもまったく動じないのだな。普通、何を調べられるか聞くものではないのか?」

 取り調べが始まりホーコンたちが堂々と座っていると、カイはエステルに向かって言い放つが、エステルは笑みを浮かべたままだ。

「どの領主も貴族も、他領に人を送って情報を手に入れることをしているのに、強奪犯を捜しているぐらい知らないと思ってまして? 早馬のほうが早いに決まっていますわ。そんな普通のことも知らないなんて、そちらこそ大丈夫ですの?」
「情報を手に入れようとしているとは、犯人だからではないのか?」
「わたくしの話、聞いてまして? 情報を手に入れるのは、わたくしたちの仕事のような物ですわ。でないと、領民も領地も守れませんことよ。それを罪と言うのならば、どうぞ、領主、貴族、全員の首をねてくださいませ。あなたにその権限があればですけどね」
「くっ……」

 取り調べをしているのはカイなのに、エステルが押しまくり。一の質問に対して倍以上の言葉で反論するので、カイの顔も歪んでいる。

「こちらには、目付きの悪い女が小さな男の子と一緒に正門を見張っていたと情報が入っているのだぞ! その目付きの悪い女とは、エステル嬢……貴様だろ!!」

 なので、早くも切り札を出しちゃった。

「お父様、わたくしは目付きが悪いですの?」
「まぁ、少しは……でも、エステルぐらいの目付きなら五万といるから、そう卑下することではないぞ」
「そんなに多くいるのですか。でしたら、どうしてあの方はわたくしと断定しているのでしょう??」
「それは……どうしてですかな? その女性の服装、背丈、体型、髪の色、連れていた男の子の見た目、その他にも特徴があったらお教え願おう」

 エステルが涙目でそのようなことを言うと、ホーコンもノリノリでカイを睨んだ。そのカイはというと、焦って手帳を捲っている。

「いや、その……髪は黒……女は、物静か……男の子は社交的……それと……以上だ……」
「まあ! それですと、平民が当て嵌まりますわね。だいたい百万人ぐらいにはなると思いますが、全員に聞き取り調査をしましたの? その結果、当て嵌まらないから金髪のわたくしにも調査を広げたのですわね。大変でしたでしょう??」
「いや、そんなには……」
「いやいや。そんな情報だけで、娘を犯人扱いしているのか? 酷いにもほどがある……この件は、正式に皇帝陛下に抗議しますからな!!」

 エステルが労い、ホーコンが怒る。完璧なタッグで捲し立てられたカイも、こうなっては手帳を閉じるしかない。

「いまのは、ただのカマカケだ。失礼を言って申し訳ない」

 カイの謝罪を取り付けた2人は、完全に勝ったと悟って畳みかける。

「そもそもアルマル男爵から、わたくし共にも捜査協力を求めてられていましてよ。確か、大きな男と細い男でしたか?」
「ああ。姿絵も送られて来たから、全領土で捜すように指示を出している。その者を捜さずに、どうして娘が犯人扱いされているのかわかりかねる」
「そこまで知っているとは……」
「ですから、わたくしたちには情報は必須なのですわ。無駄な取り調べをする前に、知り得た情報の優先順位をしっかりと見極めるべきですわよ。それが、何より帝国のためになるはずですわ」
「もういい! 取り調べはこれで終わりだ!!」

 エステルにトドメを刺されたカイは、逆ギレして部屋から出て行くのであった……
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