【完結】悪役令嬢と手を組みます! by引きこもり皇子

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二章 引きこもり皇子、外に出る

036 フィリップの秘策

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 城塞都市ルレオに到着してベルンハルド・ダンマークと面会したフィリップとエステルは、この日は辺境伯家族が滞在する部屋で一夜を過ごす。ただ、エステルはベルンハルドに呼び出されていた。
 呼び出しの理由は、「本当に第二皇子? 騙されてない??」とのこと。あと、「一緒の部屋で寝るの? お兄さんは許しません!!」とのこと。フィリップのことは秘密裏にされていたから心配で仕方なかったようだ。

 エステルは「本物で結婚を取り付けたから大丈夫」的なことを言って別れたが、ベルンハルドは結婚に驚いて放心状態になっていた。
 その後、エステルはいまからフィリップと同衾どうきんするのかと緊張して部屋に入ったけど、フィリップはすでにグウスカ寝ていたので、頬をペシッと叩いて隣のベッドで横になった。自分は緊張しているのにと腹が立ったみたいだ。


 そうして翌朝早く、ベルンハルドとエステルは外壁の上からボローズ軍を見ていた。

「なかなか多いですわね。一万はいますでしょうか?」
「一万では利かないな。一万五千……下手したら二万はいるだろうな」
「そしてうちの兵力は……」
「五千だ。皇帝陛下に軍事費を減らされてなかったら、倍近くいたから耐えるぐらい楽勝だったのに……そこに父上の兵が加われば、壊滅的被害を与えられたはずだ」

 2人で戦力確認をしていると、近くにいた兵士が不安になる。その不安は、徐々にだが広がって行った。そこに、あの人の声が聞こえて来る。

「あっれ~? そこにいるのはエステル嬢じゃな~い??」

 めちゃくちゃ皇族っぽい服を着たフィリップだ。のん気な声を出しながら歩いて来たので、エステルはめっちゃ睨んだ。けど、皇族の登場なので、エステルとベルンハルドは急いでひざまずいた。

「「これはこれは第二皇子殿下。何故、このような場所に??」」

 そして、大声でフィリップの肩書を説明したので、周りの兵士も津波の如く跪く。

「あ、楽に楽に。たまたま一人旅をしていたら、こんな現場に出くわしたんだ。アハハハ」

 フィリップが笑うとベルンハルドとエステルも立ち上がったので、兵士も前列から順番に立ち上がって行く。

「久し振りだね~。帝都学院以来だっけ?」
「ええ。お久し振りですわ」

 フィリップが近付くと、エステルは小声で喋る。

「どこから現れていますの! 下にいる兵士に連れて来られるのではなかったのですの!?」
「いや、説明するの面倒だったから……」
「不自然すぎますわよ!!」
「なんかすんません」
「ゴホンッ!」

 小声でもエステルの圧に推されたフィリップが謝っていたら、ベルンハルドが咳払いした。皇族に対しての、エステルのやり取りが怖くなったのであろう。

「そっちは、エステル嬢のお兄さん?」
「はっ! ベルンハルドと申します!!」
「なんか大変なことになってるみたいだね。僕がボローズ王国と話をつけて来てやるよ」
「はっ! さすがは殿下。では、護衛の兵士を用意しますので、少々お待ちください」

 ここまでは、少し筋書きはおかしかったけど、だいたい筋書き通り。しかしフィリップが嫌な笑い方をしているので、エステルの悪い予感が働く。

「そんなのいらないいらない。僕1人でいいよ」
「しかし……」
「ザコなんて邪魔なだけだと言ってるんだ。それとも何か? お前は僕の命令は聞けないと言いたいの??」
「い……いえ!」
「そこの彼女~? そのレイピアって、大事な物? そうでなかったら貸してくれな~い??」

 ベルンハルドと喋っていたのに、フィリップは女騎士に近付いてナンパ。いや、レイピアを鞘ごと借りて、装備してもらっていた。しゃがむ女騎士をエロイ目で見てたけど……

「ちなみに、本陣はあの一番大きなテントかな?」
「おそらく……父の宿敵の、イェルド将軍が指揮を執っていると思われます」
「ふ~ん……イェルド将軍ね。わかった。んじゃ、僕が戻るまで、絶対に兵を外に出さないでよ。行って来るね~」

 装備を調え、大将の位置を確認したフィリップは手をヒラヒラと歩き出したが、ベルンハルドは焦って止める。

「そちらでは……ああ!? 殿下~~~!!」

 フィリップが外壁に向かっていたから止めたけど、飛び下りてしまったからにはベルンハルドは蒼白の顔でダッシュ。エステルも慌てて外壁の下を覗き込んだ。

「だ、大丈夫そうですわね……」
「ああ。ピンピンしてるな……」

 下を見た頃にはフィリップは砂煙を上げて走っていたので、2人は呆れている。だが、ベルンハルドは納得いかないらしく、同じく下を見ていた近くの兵士を怒鳴り付けて遠くに追いやった。

「なんなんだあいつは! 作戦と全然違うじゃないか!!」

 そう。ベルンハルドはフィリップから外壁の下から案内されて現れ、護衛をつけてボローズ軍に向かうと聞いていたのだから苛立ちを隠せない。同じくエステルもそう聞いていたからめっちゃ怒っているけど、ベルンハルドよりは冷静だ。

「殿下は自分に都合の悪いことはひた隠しにするのですわ。今回のことも、絶対に止められると思ったから黙っていたのですわ」
「止めるに決まってるだろ! 外壁から飛び下りるなんて、普通死ぬぞ! その上、2万の兵士に突撃するなんて正気の沙汰ではない! 我々も出るぞ!!」
「お待ちください!」

 兵士に命令しに行こうとしたベルンハルドの腕を両手で掴んで止めたエステル。

「このままでは殿下が殺されてしまう。そうなっては、うちは殿下を見殺しにした家だと末代まで言われ続ける。いや、お取り潰しは確実だ!」
「いえ、殿下は考えがあっての行動ですから、死ぬことはありませんわ」
「あの軍勢だぞ!?」
「まだ話をしていませんでしたが、殿下はかなりお強いですわ。20人を超える盗賊を瞬殺し、お父様をも子供のように扱ったのですわ」
「父上があんな子供に負けただと……」
「ええ。さらには絶大な威力の氷魔法の使い手……おそらくわたくしたちの仕事は、掃討戦しか残らないことでしょう」

 エステルの信じがたい話の説得で、ベルンハルドも少し様子を見る流れになり、兵士に望遠鏡を用意させてフィリップを探す。

「いましたわ。もう敵陣の目の前ですわ」
「本当だ……どれだけ足が速いんだ……」

 敵陣まで、馬でももう少し時間が掛かりそうな距離なのにフィリップは今まさに到着しそうなので、ベルンハルドはエステルの話は噓ではないと思った。
 しかしその矢先……

「飛びましたわね……」
「敵陣に飛び込んだな……」

 フィリップはピョ~ンッと大ジャンプ。敵陣奥深くに消えたのであった。

「「はあ~~~!?」」

 剣も抜かない、氷魔法も使わないのでは、エステルとベルンハルドは驚きっぱなしであったとさ。
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