【完結】悪役令嬢と手を組みます! by引きこもり皇子

ma-no

文字の大きさ
53 / 142
三章 引きこもり皇子、働く

053 来客1

しおりを挟む

「娘に何かしました?」

 救済プランの前倒しが決まった翌日、少し手の空いたホーコンがフィリップの前までやって来て質問している。

「顔を赤くしてたり、頭をグルグル振り回している時があるのですけど……」
「特に……というか、えっちゃんガード堅すぎ」

 ちょっと恥ずかしいけど、フィリップは父親であるホーコンに相談。
 フィリップがエステルに慰めて欲しかったと言った日に、いちおう2人はベッドで服を着たまま抱き締め合っていた。
 そこでフィリップは、もう少し発展させようとジャブ程度に胸を揉んだら、エステルは痴漢にあったかの如く奇声を発し、ビンタして逃げて行ったのだ。

「なんと言ったものか……でも、あの顔は嫌ってことではないと思いますよ」
「えっちゃんって、意外とムッツリだったんだね。でも、ゴールするまでに僕の体が持つかどうか……」
「わかりました。私が体を張って教えて来ます!!」
「それ、キモイよ? 僕でも引くわ~」

 父親が娘に手を出そうとしていたので、フィリップも真っ青。その顔を見たホーコンは、エロ本を使って教えようとしていただけと言い訳するのであったとさ。


 それから数日経ったある日のお昼過ぎ、エステルとの長話から逃げ出したフィリップは、暇潰しに何をしようかと考えながら廊下を歩いていたら、窓から門を潜る馬車が目に入った。
 フィリップは特に気にせずボーっと見ていると、見覚えのある人物が馬車から降りて来たので、思わず身を隠してしまった。

「何をしてますの?」
「わっ!?」

 そこをエステルに見られたので、めっちゃ驚いている。

「あら? イーダじゃないですの。今日やって来るのを忘れていましたわ」
「え? 僕、聞いてないよ??」
「わたくしが友達に会うのに、どうして報告が必要なのですの?」
「いや、その……」
「さっきからおかしいですわね。隠れたり驚いたり……エリクはイーダと面識がありまして?」
「ないない。まったくない。ピュ~」

 フィリップが口笛を吹きながらとぼけると、エステルの目が妖しく光った。
  
「へ~……わたくしの取り巻きの小さい子と以前言ってましたのに、知らないとおっしゃるのですわね? トイレの件で、わたくしと一緒に謝罪したはずですのに」
「あっ! 思い出した思い出した。あの子ね~」
「そうですわ。よかったら、エリクも同席しませんこと?」
「いや、僕は……顔出しは控えているから遠慮しとくよ。楽しんで来てね~……へ??」

 フィリップが歩き出したら、エステルに首根っこを掴まれて運ばれる。

「あの~……断ってるじゃない?」
「その姿のエリクがわかるかどうか見てみたいのですわ。わたくしのたわむれに少し付き合ってくださいませ」
「え~! 絶対わからないよ~」
「わからないならいいじゃないですか」
「えぇ~……」

 というわけで、エステルに拉致られたフィリップは食堂にて待機。メイドのウッラが迎えに来て、背が低くて少し意地悪そうな顔をしたイーダ・ノルデンソン男爵令嬢の待つ談話室に連れて来られたのであった。


「エステル様! お久し振りでございます」

 エステルの顔を見た瞬間、イーダは立ち上がって嬉しそうな声を出す。そして近付き、エステルを見上げるように笑顔を向けた。

「ええ。久し振りですわね。もう子供の病気は良くなりましたの?」
「はいっ! エステル様からの手紙を読んであげたら、すぐによくなりました」
「ウフフ。そんなわけありませんでしょ。長旅も疲れたでしょ? 座って話しますわよ」
「そうですね。久し振りにお会いしたので、少し興奮していました」

 お互い笑顔で挨拶を交わし、テーブル席に移動する時にイーダは、エステルが手を引く下を向いたままの黒髪の男の子に気付いた。
 しかし、立ち話はエステルに悪いと気を遣い、全員が座ってウッラがお茶を全員分入れてから、イーダは質問する。

「そちらの方は……もしかしてエステル様の……」
「ええ。そうですわよ」
「ええ!? ついにエステル様にもいい人が現れたのですね! おめでとうございます!!」
「す、少し早とちりしていますわよ。これは、父が母に黙って作った子供ですわ」
「あっ! 私ったら、なんてことを……申し訳ありませんでした!!」

 イーダの発言は正解であったからエステルは少し焦っていたけど、表情は崩さずにドッキリのレールに戻す。

「気にしていないですわ。それよりエリク。いつまで下を向いてますの? 顔を見せて挨拶しなさい」

 エステルに紹介されたからには、フィリップも顔を上げて声を出す。

「エリクだよ……」
「エリク君って言うのですか。人見知りなのですね~……って、殿下!? フィリップ殿下じゃないですか!?」
「はやっ! 気付くの早すぎるよ~」

 できることならバレたくなかったフィリップは、苦笑いしながらカツラを取って金髪パーマを振り回す。

「イーダは、えらく早く殿下の顔がわかったのですわね。わたくしでも、すぐには気付かなかったのですわよ?」
「えっと……それは……皇族ですし……」

 エステルに睨まれたイーダは、しどろもどろ。フィリップも黙っていろみたいな仕草をしているので、板挟み状態だ。

「先程も、殿下はイーダの顔を見るなり隠れましたのですわ。会うことも嫌がっていましてね。連れて来るのは大変でしたわ」
「そうなのですか!? 私は会いたくて会いたくて仕方がなかったのに……こちらに殿下が現れたと聞いて、会えないと知りつつも来たのですよ!!」
「おお~い。そんなこと大声で言ったら、僕たちの関係がバレバレだよ~」
「あ……」

 イーダが周りを見渡すと、エステルは驚愕の表情。ウッラもティーポットに注いでいたお湯があふれ出ている。

「えっと……イーダとは、学院時代に……まぁアレだ。体の関係だったんだよね~。アハハハハ」

 あとからバレるよりは、いま真実を語ったほうが傷が浅いと判断したフィリップであったが……

「「「ええぇぇ!?」」」

 エステルもイーダもウッラまでも、同時に驚きの声をあげるのであった……
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

処理中です...