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三章 引きこもり皇子、働く
059 イーダとの別れ1
しおりを挟むエステルがフィリップの部屋に籠城して機嫌を直した翌日。エステルはフィリップの腕の中で目覚め、清々しい朝を迎えた。
「何してますの?」
「う~ん……スライム揉み揉み……」
でも、フィリップが眠りながら胸を揉んでいたので、エステルは清々しくなくなった。
それからエステルは、一向に起きる気配と胸を揉むことをやめないフィリップをビンタして起こす。
「いったいな~。もっと優しく起こしてよ~」
「その手はなんですの? ゆっくりと愛を育むとか言ってませんでしたか??」
「いや、これは……男の性??」
「ふ~ん……」
目が覚めてもフィリップは揉み続けるので、エステルも怒りの表情。さすがにフィリップも死を覚悟した。
「え……」
「い、いまは、ここまでですわよ」
しかし、エステルはフィリップの顔を自身の大きな胸に埋めた。恥ずかしいけど、昨日のフィリップの優しさに応えたのだろう。
「じ、じぬ……」
「殿下? 殿下~~~!!」
でも、その行為は一撃必殺。フィリップは息ができずに落ちたけど、エステルは何が起こっているかわからずに、しばらくフィリップの顔を胸に挟んでいたのであったとさ。
フィリップが再び起きると「2匹のスライムに負ける夢を見た」とか言っていたので、エステルはそのことに触れず。食堂に行こうと提案する。
フィリップもお腹が空いていたので深くは追及せずに、エステルの手を取って食堂に顔を出すと、ホーコンたちに一斉に見られた。フィリップが誰も近付くなと命令していたから朝食に出遅れたみたいだ。
そこでフィリップがエステルを優雅にエスコートして食事を始めるが、ホーコンたちはフィリップたちに視線すら送らずに世間話している。
たぶん、初夜があったと思っているから触れないようにしているのだろう。でも、フィリップの頬には手形が付いているからウズウズしてる。
フィリップもそのことに気付いていたが、エステルとだけ喋って食事をしている。
何か変な雰囲気の朝食を終えると、辺境伯一家は全員仕事。暇なのはフィリップとイーダだけなので、フィリップは自室へ。イーダは自分の従者と共に町の見学に向かった。
その夜は、夕食の席にフィリップは現れず。さすがに呼びに行かないのは悪いと思い、ウッラを走らせてしばらくしたらフィリップと共に戻って来た。
皆は少し遅かったとは思ったが、どうせフィリップがなかなか起きなかったのだろうと割り切っていた。
夕食を終えたフィリップは、部屋に戻ってよからぬことを考えていたら、ノックの音が響いたのでその者を中に招き入れる。
「どうかしたの?」
中に入って来たのは、パジャマ姿のエステル。もう寝る時間なのにやって来たので、フィリップも不思議に思っている。
「一緒に寝ようと思いまして。ダメ……ですの?」
「いいよ~。こっちおいで~」
フィリップが布団をめくり、両手を広げて迎え入れているが、エステルは後ろに回り込んで端からベッドに入った。
その行為にフィリップは特に何も言わずに、モゾモゾとベッドの中を移動してエステルの後ろから抱き締める。
「こっちから行こうと考えていたんだけど、女性のほうから来させて悪かったね」
「い、いえ。こちらのほうが人が寄りつかないですので……」
「これから毎日来てくれるんだ~」
「毎日はちょっと……」
「残念……じゃあ、おやすみのキスしてから寝よっか。顔向けてくれる?」
「はい……」
2人は数度キスを交わすと、手を繋いで天井を見詰める。
「それじゃあ、おやすみ」
「はい。おやすみなさいませ」
それだけ告げると2人は目を閉じて、心地良い眠りに誘われるのであった……
(眠れるか~~~!)
と、寝息を立てているのはエステルだけ。こんな上物の女性が隣で寝ていては、フィリップはエロイ妄想をして眠れるわけがない。早くも揉もうとしてるし……
昨夜も眠れずに、1人でゴソゴソして寝たのは朝方。だから朝はなかなか起きれずに、1日中寝ていたのだ。なんだったら、ウッラが呼びに来た時に土下座したほどだ。何をしたかは知らないが……
今日も今日とて、フィリップは朝方までゴソゴソしてようやく眠りに落ちたのであった。
翌朝は、フィリップが手を繋いだまま寝ていたのでエステルも優しく起こしていたけど、ぜんぜん起きなかったので口と鼻を押さえていた。
それから1日の活動が始まり、イーダは明日には領地に帰ると言うのでエステルが午後にお茶会を開いていたが、フィリップは現れず。また寝ているみたいで、ベッドが膨らんだままだったらしい……
「殿下も最後ぐらい顔を出してもよろしいのに……」
そのことでエステルはちょっと怒っていたけど、イーダはあっけらかんとしている。
「エステル様。もういいんですよ」
「でも、あれほどの未練があったじゃないですか。そんなにすぐ忘れられるものですの?」
「ウフフ。確かに初日は未練がましかったですね。でも、殿下とちゃんと話すことで吹っ切れました」
「イーダがそれでいいのでしたら……」
イーダの顔を見ると晴れ晴れした顔をしているので、浮気の心配も友達の心配も忘れるようにして喋るエステル。
その話は学院時代の話で、ルイーゼがムカつくといった内容や、その当時のフィリップの話、あとエステルののろけ話やイーダの領地の話。
久し振りに会ったのだから、話が尽きない2人であった……
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