【完結】悪役令嬢と手を組みます! by引きこもり皇子

ma-no

文字の大きさ
103 / 142
五章 引きこもり皇子、進軍する

103 再会

しおりを挟む

 ダンマーク辺境伯領の宿場町で一泊して食料を買い足すと、皇帝抗議隊は前進。今日のフィリップは、断固として専用ベッド付き馬車から動かなかったので、エステルたち3人はウッラを加えて他の馬車に乗っていた。
 ウッラがそこに放り込まれた理由は、フィリップの浮気対策。現にフィリップは専用馬車の窓からウッラを呼んでいたし、ウッラはエステルに睨まれて走って逃げていた。

 しかし、お昼の休憩を終えると……

「「うわ~~~。楽チ~ン」」
「なんで全員入って来てるんだよ!?」

 フィリップが寝ているのにも関わらず、エステルを含めた4人がフィリップ専用馬車に乗り込んで来た。
 イーダとマルタは、ベッド付きの馬車の存在を今日知ったらしい。ウッラは、備え付けの椅子に座って疲れた顔で外を見ている。悪役令嬢3人の相手は疲れたっぽい。

「狭いだろ~」
「ちょっとぐらい、いいじゃないですの。2人も欲しがっているから試乗させているのですわ」
「だったら、もう何台かあるからそっち行けよ~」
「そっちもいっぱいだったのですわ」

 ベッド付き馬車は大人気。貴族たちがオッサンどうしでも一緒に寝てるから、においが気になるエステルたちはこっちに来たらしい……

「揉むからね! うるさくて眠れないから揉むからね!!」
「もう……好きにしてくださいませ」

 こうなっては、フィリップも激怒。エステルの大きな物を揉みながら時間を潰す。そのエステルはというと、親友に見られているので顔が真っ赤。イーダとマルタは何を見せられているのかと、コソコソ喋るのであったとさ。


 この日はアルマル男爵が住む町で一泊。その前に、大事なお仕事。

「国民の命を奪ったのは誰だ!」
「「「「「皇帝です!」」」」」
「そんなヤツを許していていいのか!?」
「「「「「皇帝、許すまじ!!」」」」」

 フィリップの演説だ。ここはアルマル男爵から先に話が行っていたので、フィリップもすぐに認められ、500人の若者がついて来ることになった。
 そしてアルマル男爵邸で休もうと馬車で進んでいたら、屋敷の前に数十人の民が土下座して待っていた。

「アレは何かな?」

 その姿に、フィリップはエステルに助言を求めた。

「さあ? 殿下に何か訴えがある者でしょうか……無視してもよろしいかと」
「う~ん……それじゃあ僕のいい人設定が崩れるか。ちょっと顔だけ出して来るよ」
「馬車を止めなさい」

 フィリップの案にエステルがすかさず応えると、馬車は土下座する人々の前にて止まった。そしてエステルから外に出てフィリップを立てようとしたが、フィリップはもしもの危険があるからと自分から先に馬車を降りた。

「僕になんか用? もう立っていいから聞かせてくれる??」

 フィリップが優しく声を掛けたら、女性が勢いよく立ち上がった。

「エリク……いえ、フィリップ殿下! あたしだよ! 覚えてないかい!?」

 その言葉使いにエステルが何か言おうとしたけど、フィリップに止められた。

「ゴメンね~。まったく覚えてない。いや……そっちの男は見たことがあるようなないような……」

 フィリップは一度抱いた女ぐらいに思って本当に忘れているみたいだけど、女性の隣に立つ大きな男には見覚えがあるらしい。

「ここに集まっているのは、殿下が救ってくれた者たちだよ。こいつは、その時に護衛で雇ってくれた……マフィアのボスだよ!」
「護衛……マフィアのボス……あっ! ボス犬!?」
「ワンッ!!」

 フィリップが思い出したと同時にボス犬が吠えたものだから、エステルは引いている。しかし、フィリップはお構いなしに、とある宿場町で救った元奴隷の女性、ラウラと世間話をする。

「無事着いてたんだね。よかったよかった」
「そうだよ。まさか助けてくれた人が第二皇子殿下だったとは驚きだよ。それにこんなに良くしてもらえるなんて……その節は、本当にありがとうございました」
「そんなのいいって。それにしても、ボス犬はあの町に帰らないでここで何してるの?」

 ラウラたちが一斉に頭を下げるので、フィリップはムリヤリ話を変えた。

「こいつは……旅の間に、あたしに惚れたとかなんとかで、足を洗うなら考えてやると言ったら農夫になりやがったんだよ。それで、まぁ、ね?」
「アハハ。お姉さん綺麗だもんね。あの時とまったく別人になってるんだから、僕もわからなくてもおかしくないって」
「それもこれも、殿下のおかげだよ。それで……こないだ貰ったお金分には足りないだろうけど、こいつからは一晩だったらいいってなったんだけど……」

 ラウラが色目を使うので、フィリップはボス犬を見てからエステルを見たら、どちらも噛み付きそうな顔。なので、フィリップは冷や汗を流しながら答える。

「あの時の冗談を真に受けないでよ~……そうだ! あのあと、皇帝に遭わなかった? 大丈夫だった??」
「ああ。言われた通り昼に出たから、擦れ違いもしなかったよ。それに、男たちの墓があったから掘り返して最後の別れもできたよ」
「ふ~ん……兄貴たち、ちゃんと埋葬してくれたんだ……あ、そうだ。お姉さんたちって帝都まで来るの?」
「それが抽選に漏れちまって……それがどうしたんだい?」
「僕が数人捻じ込んでやるよ。兄貴たちに殺された人の声も直接ぶつけに行こう!」
「いいのかい!?」

 ラウラが驚いている間に、フィリップはエステルと相談。その結果4人までの随伴を許可され、殺された人の名簿を作るからとウッラに対応させていた。
 これでフィリップもいい人設定が守られたと、アルマル男爵邸に入って行くのであった。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

処理中です...