106 / 142
五章 引きこもり皇子、進軍する
106 ヘルゲソン伯爵軍1
しおりを挟む皇帝抗議隊が前進していたら、勧誘と休憩予定の宿場町の前には、およそ二千人の武装した兵士が陣を敷いていた。
そこで皇帝抗議隊は停止。抗議隊には夕食の準備をするように言って、上層部は少し前進したところで準備。馬車から台座を下ろし、その台座の上には玉座を設置している。
その準備が終わると、前方の兵士の元へ馬に乗った伝令兵を走らせて、フィリップは玉座に座り、ホーコンを右隣に立たせる。左隣にはエステルを置いていたけど、まだ時間があるからとフィリップはヒザの上に座らせてイチャイチャしてる。
父親の前でけっこうなやりたい放題だけど、ホーコンは微笑ましく見ていた。けど、その目に気付いたエステルは急に飛び下りた。そりゃ、恥ずかしいに決まっている。
そんなことをしていたら兵士がかなり近くまで迫っており、フィリップたちの元へある程度近付くとピタリと止まる。そこから10人の立派な鎧を着込んだ男が前に出て来て、代表の青年が一歩前に出て跪くと、前列から順番に膝を突く。
その兵士が全員跪くのを確認して、ホーコンが声を掛ける。
「その顔は……ヘルゲソン伯爵か?」
「はっ! グレーゲル・ヘルゲソンと申します」
代表の青年は、グレーゲル・ヘルゲソン伯爵。数年前に跡を継ぎ、二度しか会ったこともないのにホーコンが覚えてくれていたと嬉々として顔を上げた。
「して……ヘルゲソン伯爵がこれほどの兵を連れて何用だ?」
「はっ! 我々は第二皇子殿下の発起を知り、兵を集めて馳せ参じた所存です! どうか我々もお供に加えていただきたいのです!!」
この軍は、フィリップのための軍。なのでフィリップは嬉しそうにニコニコして応じる。
「馳せ参じんなボケ。どっか行けバーカ」
しかし、顔とは裏腹に超酷い言葉。
「はっ! 有り難き幸せ!!」
そして、何故かヘルゲソン伯爵は超嬉しそう。
「……はい? いま、なんとおっしゃいました??」
どうやらヘルゲソン伯爵は、フィリップがニコニコしていることと、皇帝と戦う兵士を集めて来たのだから断られるとはこれっぽっち思っていなかったらしい。
「だから、馳せ参じんなボケ。どっか行けバーカって言ってるんだよ」
「も、もう一度……」
「馳せ参じんなボケ。どっか行けバーカ。シッシッ」
二度目も信じられないと聞き返すので、三度目はフィリップもイライラして追い返す仕草をしてる。
「な、何故……我々を加えれば、必ず戦に勝てるのですよ!!」
フィリップのイライラより、ヘルゲソン伯爵の怒りのほうが勝る。大声を出しながらフィリップに数歩近付いた。
「そんなのいらないんだよ」
「どうしてですか!? 必要ないわけないでしょ!?」
「お前はホント、バカだよな。見てわからないの? 僕たちが戦争しに行くように見える? 武装しているのは極一部だよ。先遣隊からも、抗議に行くと聞いてるでしょ??」
フィリップに説明されて周りを見渡しても、ヘルゲソン伯爵は納得しない。
「抗議だけで終わるわけないですよね? 絶対に戦闘になるはずです!」
「だったら殺されるだけだよ。それだけの覚悟を持った者しか僕は仲間にしないの。だからどっか行けって」
「我らが殿下を守ります! だから何卒、何卒……」
「聞き分けが悪いな~……」
ヘルゲソン伯爵が懇願するので、フィリップも少しは優しさを見せる。
「どうしてそこまで僕の配下になりたいの?」
「ここに集う者は、皇帝から酷い仕打ちを受けた者ばかりなのです。無理難題を突き付けられ、それが上手くいかなかったら、爵位を剥奪されたりお取り潰しにされたのですよ!」
「ふ~ん……兄貴への恨みね~……」
「はい! その恨みを力に変えて邁進する所存です!!」
その優しさにヘルゲソン伯爵は付け込もうとしているが、フィリップは興味なさそう。その時、ホーコンが離れて行ったので、フィリップは時間稼ぎにヘルゲソン伯爵は何をしてお取り潰しになったか聞いていた。
そして戻って来たホーコンが耳打ちすると、フィリップはヘルゲソン伯爵の発言を遮った。
「やっぱお前たち、全員この場に残れ」
「はっ! はは~」
ヘルゲソン伯爵はようやく許可が出たと頭を下げるが、フィリップは不機嫌そうだ。
「僕の名前を使って、あの町で好き放題やってくれたらしいね? 無銭飲食、強盗、強姦、殺人だよ。お前たちがやったんだろ?」
「はい??」
「面倒くさいことするなよ~。犯罪者は裁かなくちゃならないんだよ」
「お、お待ちください!」
ヘルゲソン伯爵は、またフィリップに数歩近付いた。
「貴族に食料や女を提供するのは民の務めです! 強盗とおっしゃるそれは、軍資金なのですから出さない者のほうが悪いんです! それに殺した者も奴隷なので、帝国では犯罪にならないはずです!!」
「お前、それ、本気で言ってるの?」
「はい! 私は法を犯していません!! がはっ!?」
フィリップの問いにヘルゲソン伯爵はまた近付いたので、フィリップは素早く動いてヘルゲソン伯爵の頭を掴み、地面に叩き付けた。
「お前さあ~……もう貴族じゃないよね? さらに止めるべき立場の人間が間違いを正当化するってどういうことだよ」
「待って……私は殿下のために……」
「何が僕のためだよ。お前たちが手に掛けた人は、全て僕の民なんだよ。その民を苦しめて、僕が喜ぶと本当に思っているの?」
「そ、それは……」
「お前、死刑決定。残りのヤツらは正当な罰を受けたいヤツは座ってて。逃げるヤツは全員死刑だ。辺境伯。いまの伝えて」
「はっ! 殿下はこうおっしゃっておられる!!」
ホーコンの大声が響き渡るなか、兵士からどよめきが起こる。そこにフィリップが「上層部は全て死刑、殺人した者も死刑」と付け足すと、前列にいた者が立ち上がった。
「パンパンパンっと。逃がさないよ~?」
「「「「「足が~~~!!」」」」」
その者には、フィリップの指鉄砲。全員仲良く足から血が噴き出して倒れる。その謎現象を目撃したヘルゲソン伯爵は、剣に手を掛けた。
「ぎゃっ!?」
しかし、フィリップに蹴飛ばされて骨を数本折られて転がることに。
「元々さあ~。兄貴如きにクビにされた無能なんていらないの。僕が最初に逃がしてあげようとしたのも気付かずに残るなんて、救いようのない馬鹿だね」
「な、なんだと……お前のほうが無能な馬鹿皇子だろう!!」
「は~い。そうで~す。その馬鹿皇子にお前は歯も立たずに殺されました~。パ~ン!」
ヘルゲソン伯爵が怒鳴った瞬間、フィリップが指鉄砲を向けるだけで、ヘルゲソン伯爵は頭から血を噴き出して動かなくなるのであった……
1
あなたにおすすめの小説
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる