【完結】悪役令嬢と手を組みます! by引きこもり皇子

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五章 引きこもり皇子、進軍する

106 ヘルゲソン伯爵軍1

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 皇帝抗議隊が前進していたら、勧誘と休憩予定の宿場町の前には、およそ二千人の武装した兵士が陣を敷いていた。
 そこで皇帝抗議隊は停止。抗議隊には夕食の準備をするように言って、上層部は少し前進したところで準備。馬車から台座を下ろし、その台座の上には玉座を設置している。

 その準備が終わると、前方の兵士の元へ馬に乗った伝令兵を走らせて、フィリップは玉座に座り、ホーコンを右隣に立たせる。左隣にはエステルを置いていたけど、まだ時間があるからとフィリップはヒザの上に座らせてイチャイチャしてる。
 父親の前でけっこうなやりたい放題だけど、ホーコンは微笑ましく見ていた。けど、その目に気付いたエステルは急に飛び下りた。そりゃ、恥ずかしいに決まっている。
 
 そんなことをしていたら兵士がかなり近くまで迫っており、フィリップたちの元へある程度近付くとピタリと止まる。そこから10人の立派な鎧を着込んだ男が前に出て来て、代表の青年が一歩前に出てひざまずくと、前列から順番に膝を突く。

 その兵士が全員跪くのを確認して、ホーコンが声を掛ける。

「その顔は……ヘルゲソン伯爵か?」
「はっ! グレーゲル・ヘルゲソンと申します」

 代表の青年は、グレーゲル・ヘルゲソン伯爵。数年前に跡を継ぎ、二度しか会ったこともないのにホーコンが覚えてくれていたと嬉々として顔を上げた。

「して……ヘルゲソン伯爵がこれほどの兵を連れて何用だ?」
「はっ! 我々は第二皇子殿下の発起を知り、兵を集めて馳せ参じた所存です! どうか我々もお供に加えていただきたいのです!!」

 この軍は、フィリップのための軍。なのでフィリップは嬉しそうにニコニコして応じる。

「馳せ参じんなボケ。どっか行けバーカ」

 しかし、顔とは裏腹に超酷い言葉。

「はっ! 有り難き幸せ!!」

 そして、何故かヘルゲソン伯爵は超嬉しそう。

「……はい? いま、なんとおっしゃいました??」

 どうやらヘルゲソン伯爵は、フィリップがニコニコしていることと、皇帝と戦う兵士を集めて来たのだから断られるとはこれっぽっち思っていなかったらしい。

「だから、馳せ参じんなボケ。どっか行けバーカって言ってるんだよ」
「も、もう一度……」
「馳せ参じんなボケ。どっか行けバーカ。シッシッ」

 二度目も信じられないと聞き返すので、三度目はフィリップもイライラして追い返す仕草をしてる。

「な、何故……我々を加えれば、必ず戦に勝てるのですよ!!」

 フィリップのイライラより、ヘルゲソン伯爵の怒りのほうが勝る。大声を出しながらフィリップに数歩近付いた。

「そんなのいらないんだよ」
「どうしてですか!? 必要ないわけないでしょ!?」
「お前はホント、バカだよな。見てわからないの? 僕たちが戦争しに行くように見える? 武装しているのは極一部だよ。先遣隊からも、抗議に行くと聞いてるでしょ??」

 フィリップに説明されて周りを見渡しても、ヘルゲソン伯爵は納得しない。

「抗議だけで終わるわけないですよね? 絶対に戦闘になるはずです!」
「だったら殺されるだけだよ。それだけの覚悟を持った者しか僕は仲間にしないの。だからどっか行けって」
「我らが殿下を守ります! だから何卒、何卒……」
「聞き分けが悪いな~……」

 ヘルゲソン伯爵が懇願するので、フィリップも少しは優しさを見せる。

「どうしてそこまで僕の配下になりたいの?」
「ここに集う者は、皇帝から酷い仕打ちを受けた者ばかりなのです。無理難題を突き付けられ、それが上手くいかなかったら、爵位を剥奪されたりお取り潰しにされたのですよ!」
「ふ~ん……兄貴への恨みね~……」
「はい! その恨みを力に変えて邁進する所存です!!」

 その優しさにヘルゲソン伯爵は付け込もうとしているが、フィリップは興味なさそう。その時、ホーコンが離れて行ったので、フィリップは時間稼ぎにヘルゲソン伯爵は何をしてお取り潰しになったか聞いていた。
 そして戻って来たホーコンが耳打ちすると、フィリップはヘルゲソン伯爵の発言を遮った。

「やっぱお前たち、全員この場に残れ」
「はっ! はは~」

 ヘルゲソン伯爵はようやく許可が出たと頭を下げるが、フィリップは不機嫌そうだ。

「僕の名前を使って、あの町で好き放題やってくれたらしいね? 無銭飲食、強盗、強姦、殺人だよ。お前たちがやったんだろ?」
「はい??」
「面倒くさいことするなよ~。犯罪者は裁かなくちゃならないんだよ」
「お、お待ちください!」

 ヘルゲソン伯爵は、またフィリップに数歩近付いた。

「貴族に食料や女を提供するのは民の務めです! 強盗とおっしゃるそれは、軍資金なのですから出さない者のほうが悪いんです! それに殺した者も奴隷なので、帝国では犯罪にならないはずです!!」
「お前、それ、本気で言ってるの?」
「はい! 私は法を犯していません!! がはっ!?」

 フィリップの問いにヘルゲソン伯爵はまた近付いたので、フィリップは素早く動いてヘルゲソン伯爵の頭を掴み、地面に叩き付けた。

「お前さあ~……もう貴族じゃないよね? さらに止めるべき立場の人間が間違いを正当化するってどういうことだよ」
「待って……私は殿下のために……」
「何が僕のためだよ。お前たちが手に掛けた人は、全て僕の民なんだよ。その民を苦しめて、僕が喜ぶと本当に思っているの?」
「そ、それは……」
「お前、死刑決定。残りのヤツらは正当な罰を受けたいヤツは座ってて。逃げるヤツは全員死刑だ。辺境伯。いまの伝えて」
「はっ! 殿下はこうおっしゃっておられる!!」

 ホーコンの大声が響き渡るなか、兵士からどよめきが起こる。そこにフィリップが「上層部は全て死刑、殺人した者も死刑」と付け足すと、前列にいた者が立ち上がった。

「パンパンパンっと。逃がさないよ~?」
「「「「「足が~~~!!」」」」」

 その者には、フィリップの指鉄砲。全員仲良く足から血が噴き出して倒れる。その謎現象を目撃したヘルゲソン伯爵は、剣に手を掛けた。

「ぎゃっ!?」

 しかし、フィリップに蹴飛ばされて骨を数本折られて転がることに。

「元々さあ~。兄貴如きにクビにされた無能なんていらないの。僕が最初に逃がしてあげようとしたのも気付かずに残るなんて、救いようのない馬鹿だね」
「な、なんだと……お前のほうが無能な馬鹿皇子だろう!!」
「は~い。そうで~す。その馬鹿皇子にお前は歯も立たずに殺されました~。パ~ン!」

 ヘルゲソン伯爵が怒鳴った瞬間、フィリップが指鉄砲を向けるだけで、ヘルゲソン伯爵は頭から血を噴き出して動かなくなるのであった……
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