【完結】悪役令嬢と手を組みます! by引きこもり皇子

ma-no

文字の大きさ
105 / 142
五章 引きこもり皇子、進軍する

105 謎解き

しおりを挟む

 フィリップたちが皇帝に抗議したい者を集め、領主や代官を説得したり無力化して東に進んでいたら、ダンマーク辺境伯領から帝都までの中間地点に入った。

「国民の命を奪ったのは誰だ!」
「「「「「皇帝です!」」」」」
「そんなヤツを許していていいの!?」
「「「「「皇帝、許すまじ!!」」」」」

 ここでも演説をして勧誘するのだが、いつもと違う。

「食えないヤツは全員ついて来なよ! 腹いっぱい食わしてやるよ!!」
「「「「「わああああ!!」」」」」

 ギリギリの生活をしている元奴隷や困窮者が多いのだから、この大盤振る舞いには民衆の声は弾けた。
 代官も最悪の土地を立て直しさせられていたので、フィリップのことが救世主に見えている。そこに畳み掛けるように、領地用のお金と食料を渡すのだから神にしか見えない。

 こうして誰からも反発はなく、大量の抗議者を集めたフィリップであった……


 町の中で大規模な炊き出しが行われるなか、フィリップたちは領主が使っていた屋敷で夕食。フィリップはエステルと食べようとしていたのに、イーダとマルタが押しかけて来たので同席している。

「おかしいと思っていたら、ここからだったのですね」
「ん?」
「民衆ですよ。一気に増えたじゃないですか」

 イーダとマルタは、フィリップから秘密にされたことの謎解きに来たみたいだ。

「さすがにバレたか」
「でも、これなら辺境伯様の領地から連れて来なくてもよかったのではないですか?」
「あ、全部わかってないんだ~。フフン♪」
「「もったいぶらないでくださいよ~」」

 2人をからかっていたらエステルに諭されたので、フィリップは渋々語る。

「確かに帝国の半分もあれば、人は大量に集まるよ。でも、ここの人、体調はどう見えた?」
「そうですね……みんな細かったです」
「体調悪そうでしたね」
「そんな人に、行軍や炊き出しは厳しくな~い?」
「あっ! 世話係でしたか!!」
「そそ。それと、各地の声を届けないといけないから、ちょっとずつ足してたんだよ」
「「ほへ~」」

 イーダとマルタは作戦には納得したようだけど、納得できないことはあるらしい。

「いまだに殿下が賢いことが信じられません」
「エステル様の入れ知恵じゃないのですか?」
「ひどっ!? 全部、僕が考えてるんだよ! ね? えっちゃん!?」

 フィリップがエステルに泣き付くが、エステルは悪い顔で笑ってる。

「殿下、噓はいけませんことよ。全てわたくしが考えたことですわ」
「「やっぱり~」」
「えっちゃんがそんなこと言ったら、2人が信じちゃうだろ~」
「オホホホホ~」
「笑ってないで訂正してよ~~~」

 エステルが手柄を横取りするので、フィリップも泣き言。しかしこれはエステルの冗談だったらしく、あとから誤解を解こうとしていたけど時すでに遅し。

「殿下を立てようとしているのですね!」
「エステル様、けなげです~」
「本当に違いますのよ~~~」

 イーダとマルタは、エステルがやったことだと信じ切ってしまうのであったとさ。


 エステルが何度も謝罪し、ウッラにも協力してもらってフィリップの機嫌を取り、朝になったら皇帝抗議隊は元気よく前進。いくつもの町で抗議者を大量に増やして進めば、帝都までおよそ3分の1までの距離に到着した。
 ここでも演説をして大量に抗議者を増やしたら、町の外で大規模な炊き出し。ここまで人数が増えると、町の隣にもうひとつ町が生まれたかのように見える。

 フィリップたち高貴な者は、高級宿屋や普通の宿屋に散り散りに入り、そこで夕食にしていたら、連れて来ていた執事がホーコンに耳打ちし、次にホーコンがフィリップに伝言していた。
 けっこうな情報だったけど、対策はディナーのあとで。エステルとフィリップの部屋に、詳しい話を聞いたホーコンが訪ねて来て話をする。

「それで……規模はどれぐらいだって?」
「多くて二千ほどらしいです」
「アハハ。それっぽっちか。それともよく集めたと言うべきかな?」
「どちらにも取れるでしょうな。わははは」

 この話は、先行して進んでいた広報部隊が軍隊を確認したと早馬で知らせたこと。フィリップもホーコンもたいした数ではないので笑っているのだ。

「んじゃ、作戦はね~……」

 一通り笑ったら、作戦会議。全てフィリップが決めて、派閥の者への指示はホーコン任せ。早めに就寝するフィリップであっ……

「しまった!? あの2人の前でやればよかった!?」
「もう遅いですわね。今頃イーダたちの耳に入っていますわよ」
「そんな~~~」

 自分の賢さをイーダとマルタに教えるチャンスを棒に振ったフィリップは、エステルの胸に顔をグリグリ押し付けて眠るのであったとさ。


 翌日、皇帝抗議隊が前進した夕方前、勧誘予定の宿場町の前には、およそ二千人の武装した兵士が陣を敷いていたのであった……
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

処理中です...