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一章 夢の中での出会い
04 堀口純菜1
しおりを挟む「はぁ~……起きなきゃ……」
何度も鳴るスマホのアラームを煩わしそうに止めた純菜は、溜め息を吐きながら体を起こす。そして部屋から出てリビングに向かうと、母親の堀口晴美がいそいそと動いている姿が目に入った。
「おはよう。何か手伝う事ある?」
「あ、おはよう。もう終わるから座ってて」
テーブルには朝食がほとんど揃っていたからには、純菜も手伝うと逆に邪魔になると思って着席して晴美を待つ。そうして二人で「いただきます」と手を合わせて食べ始めると晴美から質問が来る。
「こっちに戻って来て一ヶ月よね。友達出来た?」
「うん……」
「……そう」
純菜は下を向いて答えるから、晴美はそれ以上聞けない。その晴美のなんとも言えない表情を元に戻そうと、純菜の方から話題を変える。
「夜勤の時は無理しなくていいのに」
「こんなの無理じゃないよ。まだ眠く無いもの。どちらかと言うと、早番の時の方がキツイぐらいよ」
「確かに……ママは朝が弱いもんね」
「その節は申し訳ありませんでした」
晴美の仕事は看護師。少し前まではパートタイムの昼だけしか働いていなかったのだが、離婚してからは夜勤があるがその分収入も高くなる看護師に戻った。
ただし、この会話は離婚前の出来事。何度か寝坊して、夫や純菜を遅刻させた前科があるから晴美も恐縮してしまうのだ。
この会話の後、二人は喋り難くなったのか黙々と食事をし、純菜は朝の身支度を整える。
長い前髪で目を隠し、スマホやサイフは勉強机の上に。制服を来て鞄を持つと、キッチンにてお弁当を受け取る。
「ママ、今日も夜勤だから。帰ったら起こしてね」
「うん。おやすみ。行ってきます」
「行ってらっしゃい。おやすみ~」
夜勤の時のいつもの会話。いつものように見送られた純菜は家を出るのであった。
純菜の通学は徒歩。ただ、その足は遅い。これは学校に行きたく無いから足取りが重くなってしまうのだ。
この純菜もイジメられている。それは小学校からが始まり。
当時は守ってくれる男子がいたからすぐにイジメは止まったが、父親の転勤で転校する事に。他県の小中学校に通う事になり、元々の暗い性格が仇となってイジメられ続けた。
時を同じくして両親の仲が険悪になっていたからどちらにも相談できず、孤独に陥る。そんな最中、晴美がイジメに気付き夫に相談を持ち掛けたのだが、夫は世間体を気にして取り合ってくれなかった。
それが引き金となり、晴美は離婚を突き付けた。夫はまた世間体を気にしていたが、今まで喧嘩が絶えなかったのだから渋々離婚届にサインしてくれた。
親権は母親。実家がS市にあり、小学校時代の友達も居るから純菜も安心して通えると晴美が訴えてそういう形となった。
純菜としては、そちらにも友達なんて居ないと言おうとしたが、一人の男子の顔を思い出して母親について行く。初恋だったのだろう……
だがしかし、純菜が通い始めた高校にはその男子は居ない。それどころか、小学校時代にイジメをしていた女子が多く揃っていたのだ。
しかし元同級生は純菜の事を一切覚えておらず。純菜もこれ幸いと初めて感を出していたのだが、クラス最初のイジメ被害者は純菜の事を覚えていたから、イジメを擦り付けて来たのだ。
そこからは「どうして黙っていた」だとか「まだ生きてたんだ」と責められて完全にイジメの標的にされる。
こうなっては誰も助けてくれ無い。教師も純菜の事を居ないモノとして対応しているように見えるから、助けを求められ無い。そもそもそんな教師しか出会った事が無いから純菜の選択肢に無いのだ。
勿論、母親にも助けを求められ無い。結果的にだが、自分がイジメられたせいで離婚を決断させてしまったから言い出し難い。
それに慣れ無い仕事を始めたばかりだから、これ以上の負担を掛けたく無いと純菜は耐える選択をしてしまったのだ。
通学路を歩いていると、一人、また一人と同じ高校の生徒が増えて行く。純菜は出来るだけ気配を消し、俯き加減で歩いていると校門に到着した。
そして歩きながら覚悟を決めて下駄箱に向かい、鞄に入れていた上履きを素早く履いて外履きはビニール袋に入れてそのまま鞄に。廊下の端を歩き、二階にある教室に入ると自分の席や後ろを確認してから座った。
「プッ……まだ来るんだ」
「あぁ~。ねみぃ~」
「なんか臭くない?」
「遠い宇宙から電波が出てるんだって」
「アイツのせいよ。頭洗ってないのよ」
「彼女、紹介しろよ~」
聞き耳を立てると男子のどうでもいい会話。女子は明らかに自分の悪口を聞こえる声で言っているが、直接来無いだけまだマシだと感じる純菜。
担任がホームルームを始めても女子はヒソヒソとしながら純菜を見るが、純菜は俯いてやり過ごす。なんならこれぐらいなら、中学校のイジメと比べればまだ可愛い部類だと考えている。
しかし学校は始まったばかり。純菜は「何もありませんように」と祈りながら、一時間目の教科書を広げるのであった。
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