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第四章 ハンター編其の二 怖い思いをするにゃ~
089 リータ、頑張る
しおりを挟む「猫さ~~~ん~~~!!!」
嘘……嘘でしょ? なんで猫さんが私を空から突き落とすの! 死んじゃう!!
私が死を覚悟した瞬間、下から風が吹いて来た。
これは猫さんの魔法? 落ちるスピードが緩やかになった……猫さんが広場の子供達と遊ぶ時に使っている魔法だ。これをするならするって言ってよね!
私は猫さんの風魔法によって静かに着地した。
うぅ。怖かった……まだ体が震えている。オシッコ漏らすところだったよ……たぶん大丈夫なはず……ちょっとだけ漏れたかも……
「もう! 猫さんのバカーーー!!!」
初めて猫さんをバカって言っちゃった。猫さんは私を助けてくれた恩人なのに……それに私の村のために怒ってくれたり、助けてくれようとしている。
こんなに早く村に着けたのも、猫さんのおかげで怒るのはお門違いだ。だけど、あんなに高い所から落とさなくてもいいと思う!
いまは猫さんを怒っている場合じゃなかった。お父さんやお母さん、兄弟達、家族の命の危機が迫っている。急いで家に向かわなくっちゃ!
私は走る。急いで家に向かって走っていると、ある事に気付く。
私っていつからこんなに速く走れたっけ? いつも躓いてばかりで、走ったら絶対こけていたのに……猫さんと出会ってからだ。猫さんに毎日歩かされたからだ!
最初は変な歩き方だなぁと思っていたけど、猫さんを信じてやってきてよかった。やっぱり猫さんは凄い! ちょっと周りに女の子が多くいるのは気になるけど、凄い事には変わりない。
しばらく走り、私は家に着くと大きな声で叫ぶ。
「お母さ~ん! お父さ~ん!! みんな~!!!」
……返事が無い。猫さんはこっちに人がいるって言ってたけど、私の家族とは限らないのかな? 私の家が近くにあるから早とちりしたかも。
「誰か~! 誰かいませんか~! 助けに来ました!!」
私は再度、大きな声をあげると、ボロボロになった家から人が出て来た。
「リータ……リータか?」
「お父さん?」
「リータなの!?」
「お母さん……」
「なんでお前が?」
「リータ。危ないから、みんなと一緒に隠れましょう」
「みんな無事なの!?」
「大丈夫よ」
「よかった~。それはそうと、お父さん達はなんで避難所に行かないの?」
「突然襲われたから、逃げ遅れたんだ。一日地下倉庫に隠れていたが、ここも危険には変わり無いから様子を見に出たんだけど、この分じゃ……」
「いまは話してる場合じゃないわ。早く隠れましょう!」
「あ、ああ。そうだな。急ごう!」
私達が地下倉庫に移動しようとしたその時、後ろからズシンズシンと音が響いた。後ろを振り向くと、2メートル近くある黒いイナゴが小さいイナゴを連れて、私達に近付いていた。
「二人ともゆっくり隠れるんだ。俺が囮になる」
「あなた!」
「お父さん!」
「なあに。俺一人なら逃げ切れるさ」
そんなわけはない。強がりだ。黒イナゴから逃げ切れるわけがない。怖い。猫さん……助けて……
違う! 私が助けに来たんだ。猫さんに任されたんだ。私が家族を守らなきゃ!
「こっちだ! 来い!!」
お父さんは黒イナゴに石を投げて、注意を引き付けて走り出す。しかし、黒イナゴはお父さんの進行方向に素早く移動して道を塞いだ。
するとお父さんは、恐怖のあまり座り込んでしまった。
危ない!
私は急いでお父さんと黒イナゴの間に入り、猫さんが作ってくれた盾を構える。黒イナゴは私達に突進するが、私は力を込めて耐える。
「お前……」
「リータ……」
「お父さん、お母さん。私、ハンターになったんだよ。強いんだよ。だから二人とも早く逃げて!」
私は二人に笑顔を向ける。
ちゃんと笑えていたかは自信がない。それでも安心させたい。猫さんには魔力を節約しろと言われているけど、少しぐらい、いいよね?
「【土槍】!!」
私は受け止めて動きの止まった黒イナゴに、猫さんに教えてもらった魔法を唱える。だが、黒イナゴはとっさに後ろに跳び、避けられてしまった。
「リータ、お前……魔法を使えたのか?」
「とっても強い猫さんに教えてもらったの。だから安心して逃げて」
「猫さん??」
「私の師匠で大好きな人だよ」
あ……猫さんは人じゃないや。でも、いまはややこしいから人で通した方がいいかな?
「大丈夫だから早く行って!!」
「わ、わかった……でも、無理はするなよ」
お父さんはお母さんの元へ走り、お母さんを連れて家に走る。だが、黒イナゴはそれを許してくれない。黒イナゴは羽を広げ出した。私は危険を感じ、お父さん達の間に入り、盾を構えて後退する。
私が守りの準備に入ったその時、黒イナゴは羽をバタつかせ、多くの【風の刃】を飛ばした。
「キャーーー!」
「お母さん! お父さん!」
「大丈夫だ。家に当たったからビックリしただけだ。すぐに地下倉庫に入る」
「リータも……いえ、なんでもないわ」
お母さんは心配して振り返ったが、言い掛けた言葉を呑み込んで、お父さんと共に家の中に消えて行った。
お父さん達は大丈夫そうだ。でも、家がボロボロ……私の育った家を!
私は怒り、黒イナゴに向けて走り出す。そして猫さんに習ったパンチを打つ。その瞬間、横から衝撃が走った。
私は大振りにパンチを打ったので、その隙を狙われ、小さいイナゴに体当たりをされてしまい、吹っ飛ばされてしまったのだ。
くっ……痛い。猫さんに攻勢に出るなと言われていたのに。猫さんの教え通り戦っていれば、こんな攻撃、盾で防げていたのに。私のバカ! 体は……動く。まだやれる。今度は猫さんの教えを守って戦おう!
私は立ち上がり盾を構える。黒イナゴは私に【風の刃】を飛ばすが、私は盾で耐える。【風の刃】が止むと、また横から小さいイナゴが体当たりをして来る。
私は冷静に小さいイナゴを盾で受け止める。そして……
「動きが止まった! 【土槍】!!」
私は猫さんの教え通りに、動きの止まったイナゴに、下から【土槍】を突き上げる。【土槍】は、イナゴの腹から背中に貫通する。するとイナゴは、バタバタした後、動きを止めた。
猫さん。やりましたよ!
私はイナゴが動きを止めると、小さく拳を握り、次の戦いに気を引き締めるのであった。
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