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第九章 戦争編其の二 帝国と戦うにゃ~

242 猫耳軍の受け入れにゃ~

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 敵地侵入を祝して、遅ればせながらささやかな宴会を開いたわし達であったが、皆、思っていたより疲れていたのか、酒が回ると眠りに落ちた。

 またわしだけ取り残されてしまった……。いいんじゃけど、一人でみんなの介抱をするのは面倒臭い。もう少しペースを考えて飲んで欲しいもんじゃ。はぁ……

 わしはため息を吐きながらも介抱を始める。ノエミとズーウェイは女の子部屋に抱いて運び、リータとメイバイは車のベッド。ケンフは、男をお姫様抱っこしたくないと言う理由から、毛皮を掛けて食堂に残す。
 それが終われば、車のソファで一服。酒を片手に、うつらうつらとしてしまった。


 翌朝、目を覚ますと、リータとメイバイに抱かれていた。

 う~ん。ソファーで飲んでいたところまでは記憶にあったんじゃけど、いつの間にベッドに移動したんじゃろう?
 まぁいいか。二人を起こして、今日の行動を開始するか。

 わしは二人を揺すり、朝の挨拶をする。すると、わしをベッドに連れ込んだ犯人がわかった。リータに、どうしてソファーで寝ていたのかと怒られたからだ。メイバイまで一緒にポコポコしてないで、言い訳ぐらいさせて!
 このままでは車のサスペンションがいかれてしまうので、急いで車から飛び出る。二人の服装は昨日のままだったので、追い掛けられてしまった。
 だが、わしが少し本気を出せば追い付けるわけがない。遠くで怒る声が聞こえたから、今日はどこかのタイミングで埋められるのであろう。

 わしが逃げていたら、昨日作ったジャガイモ畑に、ヨキとシンが居たので声を掛ける。

「にゃにしてるにゃ? こんにゃところに居たら危ないにゃ~」
「おはようございます。昨日植えたジャガイモが、心配で見に来たんです」
「それはわかるけど、せめて屋上に見張りを置いてから外に出るにゃ」
「は、はい。……それにしても、これは本当にジャガイモなんですか?」
「にゃんで?」
「成長速度が全然違います! もう芽どころか、立派な茎が出来てます!」
「ああ。栄養材が効いているにゃ。ジャガイモだと、だいたい十日ぐらいで収穫出来るにゃ」

 わしの使った栄養材の正体は、ただの血。白い巨象の血だ。幾度かの失敗の後、血と水の割合を導き出し、リータの村で臨床実験。大量のジャガイモを実らせることに成功させた。
 ただし、どうしても水が多く必要になるので、水不足の今は、宝の持ち腐れとなってしまっている。

「ほへ~。これならすぐに食べられるのですね」
「まぁにゃ。でも、収穫時期が遅れると、一気に枯れて食べれなくなるから気を付けるにゃ」
「はい! うちでも作っていたから、見たらわかります」
「それは心強いにゃ。さあ、朝ごはんにするにゃ~」

 その後、ヨキと話をしていたせいで、魔の手が迫っていた事に気付かず、ジャガイモの一員にされた。埋められるとは思っていたが、思ったより早かった……


 朝食と朝風呂を済ませると、今日の予定を消化する。畑の世話と見張りはヨキ達に任せ、服もズーウェイとシン達に任せると、残りの大人組を連れて街の壁に、二号車で移動する。
 西側の壁に着くと、切り株を、リータとノエミに土魔法で掘り起こしてもらい、メイバイとケンフは護衛に回ってもらう。ノエミがこんな事に魔法を使うなんてとブーブー言っていたが、酒で釣れた。
 ここは四人に任せて、わしは反対から攻める事にする。

 反対側の南の壁に移動すると、切り株を土魔法でサクサク掘り起こし、次元倉庫に入れて道の整地。
 中間地点のシェルターに到着すたら、リータ達はまだまだ掛かりそうだったのできびすを返し、道沿いにある損傷の少ない家の補修に取り掛かる。
 そうこうしていると太陽が真上に来たので、リータ達を迎えに行く。まだ半分程しか進んでなかったので、二号車でシェルターに帰宅。

 食事休憩を挟み、リータの魔力の限界が来ていたので、ノエミだけ連れて作業の再開。切り株はノエミに任せて、道の整地をしながら掘り起こした切り株を次元倉庫に入れていたら、ノエミがおかしな事を言い出した。

「切り株は掘り起こさなくても、シラタマ君の収納魔法なら、そのまま入るんじゃない?」

 と……。そこからはさらにスピードアップ。ノエミには家の補修に回ってもらう。

 ポコポコしても痛くありませ~ん。リータにチクる? それだけは勘弁してくださ~い。

 二人で作業を続け、夕暮れ時になると帰宅。リータとメイバイに出迎えられた。

 さっそくチクらないでくださ~い。


 本日二度目のジャガイモの一員になってから、今日もわいわいと夜が更け、眠りに落ちて、朝を迎えた。


 今日は朝から、猫耳族が来るのを待つ。いつ頃来るかわからないので、昨日と同じく、家の補修をしながら待っている。
 ケンフとノエミには、屋上に作ったやぐらから見張っているように頼んだから、いつでも通信魔道具に連絡が来るので、室内に居ても安心だ。ケンフが櫓に登りたくなさそうだったが、気にしない。

 リータとメイバイも、わしについて来ているので、連絡係に任命。リータには猫耳セットを付けさせているので、見張りを掻い潜って猫耳族が来ても大丈夫だろう。
 わきあいあいとランチを終わらせ、休憩でゴロゴロ言わされ、作業を続行。そうしているとノエミから連絡が入り、南の壁に急行。

 壁を土魔法で大きく開けて、ゴロゴロ言いながら猫耳軍の到着を待つ。


「王よ。猫耳軍二千。無事、到着しました」

 到着した猫耳族の最高指揮官ウンチョウが、代表してわしに挨拶をする

「う、うんにゃ。とりあえず、みんにゃを街に入れてくれにゃ」
「コウウン。あとは頼む」
「はっ!」

 猫耳軍は人だけでなく、馬車や装備も多い為、全員街に入るには少し時間が掛かる。その間に、ウンチョウを門の横にある部屋に案内し、滞在時の注意点、道沿いの家なら使える事を伝え、皆が入り終わると土魔法で壁を閉じる。
 そしてシェルターまで全員を進ませ、整備した道の両端に座らせる。酒は人数分用意できないが、ジャガイモと肉なら腐るほどある。塩と共に大量に渡し、調理出来る者にあとは任せ、大宴会を始める。


「かんぱいにゃ~~~!」
「「「「「かんぱ~~~い」」」」」

 水の入ったコップで乾杯。せめて雰囲気だけでも出す為だ。猫耳族は、わいわいと食事に手を伸ばし、満足しているように見える。
 感謝の気持ちを伝えたいのか、わしのそばに来ようとするが、ウンチョウ、コウウン、シェンメイの、鉄壁の守りにあって突破できないみたいだ。

 猫耳軍中枢に同席するわしは、のんびりと食事をとりながらお喋りをする。

「ウンチョウ。酒を用意できにゃくてすまないにゃ」
「いえ。これほどの量の食事だけでも、普段よりも多く食べられて、兵は満足していますよ」
「それはよかったにゃ。しかし、ワンヂェンまで戦争に参加するにゃ?」
「しないにゃ~。うちは支援部隊の指揮をとるにゃ。街に入ってからが、うちの仕事にゃ」
「そうにゃんだ。でも、それにゃらモンファでよかったんじゃないかにゃ?」
「そ、それは……もう歳だし……ゴニョゴニョ」
「にゃ~?」

 ワンヂェンがゴニョゴニョ言うからわしは疑問に思ったが、すぐにここに居る理由が思い付いた。

「にゃ! 人族の街が見たかったにゃ?」
「そんにゃわけないにゃ!」
「別に否定する事じゃないにゃ。わしだって、森の中で生活していたから、街に入った時は嬉しかったにゃ~」
「そうにゃの?」
「目に見える物、全てが新鮮だったにゃ~」
「そうにゃんだ……」
「でも、それ以上に、街の者が新鮮に感じたものがあったにゃ」
「にゃに!?」

 わしの意味深な言い方が気になるワンヂェンは、興味津々で質問するので、自分を指差して答える。

「わしにゃ」
「シラタマにゃ?」
「猫だからにゃ~」
「にゃ……うちも、にゃにか言われるかにゃ?」
「言われるにゃ。まぁワンヂェンの場合は猫耳族がいるから、まだマシだと思うにゃ」
「街に行くの、怖くなって来たにゃ~!」

 わしの場合も凄い騒ぎじゃったからな。アレを前もって知っていたら、わしも怖かったじゃろう。無知とは時に強いのう。いや、さっちゃんと女王のおかげか。
 わしを受け入れてくれたさっちゃん達と、お城でのお披露目があったから、一歩踏み出せたのかもしれん。

「じゃあ、少し体験してみるかにゃ?」
「どうするにゃ?」
「シェルターに入るにゃ。シェンメイも子供達が会いたがっていたから、一緒に行こうにゃ~」
「あ、はい」

 わし達は宴の席を離れ、シェルターに移動する。ウンチョウとコウウンには、シェルターには絶対に入るなと念を押しておいた。


 中に入ると、いい匂いがしたので、皆、食事をしているのかと当たりを付けて、ワンヂェン達を食堂に案内する。その時、シェンメイがリータに猫耳と尻尾が無い事に驚いていたが、気にしない。

 そうして子供達の前に立ったわしは、黒猫巫女ワンヂェンを紹介する。

「こっちはワンヂェンにゃ。見た目はわしと似ているけど、仲良くしてくれにゃ」
「「「「「ねこが増えた~!」」」」」
「にゃ!? 抱きつくにゃ~」
「にゃ!? わしまでにゃ~」
「「ゴロゴロ~」」

 自己紹介はそこそこに、わしとワンヂェンは子供達に揉みくちゃにされる。どうやらワンヂェンも、撫でられるとゴロゴロ言うみたいだ。
 しばらく撫でられていたわし達だったが、食事が出来ると、子供達はきちんと席に着く。わし達は食事に負けて、お互いを慰め合った。
 だが、また撫で回されても困るので、忍び足で屋上に退避。下で行われている宴会を見ながら、酒を酌み交わす。

「どうだったにゃ?」
「おもちゃにされただけにゃ~」
「にゃはは。子供達は仕方ないにゃ~」
「大人だと、どうなるにゃ?」
「だいたい驚いて、モンスター扱いされるかにゃ?」
「それでよく、街中を歩けたにゃ~」
「いろんにゃ人の協力があったからにゃ。わしの場合、王族と仲が良かったからかもしれないにゃ」
「ふ~ん……」
「シラタマさ~ん」

 わしとワンヂェンが話をしていると、リータ、メイバイ、ノエミが屋上にやって来て声を掛ける。

「やっと見つけたニャー」
「どうしたにゃ?」
「私達が一緒だと迷惑なんですか?」
「まさかその黒猫とニャ!?」
「迷惑じゃないにゃ~! そんにゃ関係でもにゃいから、もう埋めにゃいで~」
「フフフ。冗談ですよ」
「でも、そんな事があったらわかっているニャ?」
「全然、冗談じゃないにゃ~!」
「「アハハハハ」」

 その渇いた笑いが怖い……何か言い訳をしておかねば!

「こんにゃ黒猫、わしのタイプじゃないにゃ~」
「はあ!? うちだって、あんたみたいにゃ丸い奴、全然タイプじゃないにゃ~!」
「にゃ!? わしのどこが丸いにゃ!」
「全部にゃ。うちのスタイルを見てみるにゃ。このスレンダーにゃ体と大違いにゃ~」

 うっ……ワンヂェンの奴、わしの気にしている事をズケズケと言いやがる。反論したいが自分でも丸いと思っているから、いい反論が思いつかん。じゃが、悔しい……

「リータ~! ワンヂェンがイジメるにゃ~」
「はいはい。よしよし~」
「ゴロゴロ~」

 わしがリータに泣き付いて抱きつくと、リータは慰めるついでに撫でる。それを見ていたメイバイは、羨ましいのか文句を言う。

「ニャ! リータだけズルイニャー!」
「あそこに、もう一体ありますよ?」
「あ、たしかにニャ。よしよし~」
「ゴロゴロ~」

 メイバイが文句を言うと、リータはワンヂェンを指差す。そのせいでワンヂェンはとばっちりを受けて、メイバイに抱かれて撫でられている。

 う~ん。泣き付いたのはわしじゃけど、子供扱い? いや、ぬいぐるみ扱いされてる?

「「ぬいぐるみじゃないにゃ~!」」
「「にゃ?」」
「「よしよし」」
「「ゴロゴロ~」」

 わしがリータに意義を申し立てると、ワンヂェンもメイバイに意義を申し立て、ハモる。疑問の声もゴロゴロまでハモる事となった。
 またハモるのを嫌って、わしとワンヂェンは、ゴロゴロとお互いを牽制する。

「「ゴロゴロ~」」
「なにをしてるんだか……」

 ノエミの冷ややかな目が突き刺さる、日暮れ前であった。
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