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第十二章 王様編其の三 猫の国の発展にゃ~
番外編2 王妃の仕事
双子王女が猫の街の代表となって数日が過ぎた頃、二人の働く執務室にノックの音が響く。
双子王女は書類仕事をしながら侍女に中に通すようにと指示が出し、しばらくすると、ドアからはリータとメイバイが入って来た。
「どうかなさいまして?」
「少し聞きたい事がありまして……」
ジョジアーヌが質問すると、リータは暗い顔で答える。
「聞きたい事ですか……。いましている仕事がすぐに終わりますので、少々お待ちください」
ジョスリーヌはリータ達との話は長くなると感じ、区切りのいいところまで仕事を終わらせるようだ。
リータ達は、空気を読んだ侍女に、ソファー席に座るように促され、お茶をいただきながら双子王女を待つ。
そうして仕事を終えた双子王女は、リータ達の対面に座った。
「お話とはなんでしょうか?」
双子王女にも紅茶が注がれる中、ジョスリーヌがリータに問う。
「あの……その……王妃の仕事を教えてください!」
モジモジとしながら話し出したリータは、メイバイと共に頭を下げた。
突然、そんなふわっとした質問が来たので、双子王女は目を合わせる事となる。
「王妃の仕事ですか……」
「シラタマ殿も王様初体験だから、わからないと言ってましたニャー」
なかなかいい返事がもらえないので、メイバイも理由をつけて納得してもらおうとする。
「シラタマちゃんは、どんな仕事をしろと言ってまして?」
「基本はハンターでいいんじゃないかと……」
「あと、多くの人員を使う時には、指揮系統に入ってと言われていますニャー」
それから今までの仕事ぶりを質問した双子王女は、とても王妃の仕事じゃないと、ため息を吐いていた。
「「わかりました。わたくし達に任せてくださいまし!!」」
王妃には相応しくない仕事ばかりしていたリータとメイバイを不憫に思い、双子王女はやる気に満ち溢れて指導にあたるのであった。
「まずは他国の話になりますが、王妃は貴族の晩餐会やお茶会に出席し、親睦を深めて、貴族の橋渡しになる仕事をしていますわね」
ジョスリーヌからの説明をメモに取っていたリータは、手を上げて質問する。
「あの……この国に、貴族は居ないのですけど……」
「「はい??」」
「全て解体しました」
「で、では、豪商……力のある商人等のパーティーに出席し、顔を繋いでおくといいですわ。いざと言う時、お金が決め手になりますからね」
貴族が居ないと聞いたジョジアーヌは代案を出すが、メイバイが手を上げる。
「力のあった商人も、みんな解体されましたニャー」
「え……どうしてですの?」
「猫耳族に酷い事をしていたから、シラタマ殿が裁いて、ほとんど捕まったですニャー」
「では、お金持ちなんかは……」
「みんな捕まって、お金も没収しましたニャー」
双子王女の案は即却下。権力者が居なくては、パーティーを主催しても、人もお金も集まらない。
他国の貴族のパーティーに出席する手はあるが、まだ猫の国の仕事が解決していないので保留にして、次の案を提出する。
「では、東の国での、父の仕事を説明しますわね」
「王様の事ですか?」
「そうですわね。そこから説明しないといけないですわ」
「東の国では女王制をとっていますので、正確に言うと王ではありません」
「女王の配偶者。王配と言う称号で、平民には難しいからか、王と呼ばれているようですわ」
「えっと……つまり、どう言う事ですニャ?」
「西や南の王と比べて、権力や権限がまったく違うって事ですわ」
「要するに、東の国での王配とは、他国での王妃と言う事ですわ」
「「なるほど……」」
交互に説明する双子王女の言葉を、リータとメイバイは声を揃えてメモにとる。
「では、父の仕事をお話しますわね。父の場合は、王妃の仕事をすると言うより、お母様の仕事を代役する事が多いですわね」
「女王様の代役と言う事は、シラタマさんの仕事の代役……」
「その通りですわ。多くは外交で国の外に出て話し合いをしたり、お母様が外に出た場合は、国内に残って、代わりに仕事をしてますわ」
「国の外にですニャ……と言う事は、シラタマ殿が外に出た場合は、私達は残ったほうがいいんですニャ?」
「そうですわね。王様が長期間、国から居なくなるのですから、国を守る為に残ったほうが懸命ですわね」
双子王女の説明に、メモを取っていたリータとメイバイの手が止まる。
「長期間とは、どれぐらいの日数でしょうか?」
「去年は長い旅がありましたわね」
「帝国との戦争が起こりそうでしたから、他国が攻め込まないように話し合いを設けていましたわね」
「あの時は……四ヶ月以上出ていましたかしら?」
「四ヶ月ニャ……」
「どうしても、移動に時間が掛かりますからね」
移動の話が出ると、リータとメイバイはそろりと手を上げる。
「シラタマさんなら、数日で戻って来そうですけど……」
「飛行機でビーダールに行っても、四日も掛からずに帰って来れますニャ……」
「「あ……」」
双子王女は、シラタマの異常な移動速度を忘れていたようだ。
「それにシラタマさんは、猫の国で仕事が全然無いんですけど……」
「だいたい何か作っているか、土をイジッているかしかしてないから、私達が手伝う必要はないですニャ……」
「「あ!!」」
そう。シラタマは、仕事をほとんど代表に割り振ったので、自身の仕事が無い。せいぜい、会議や式典に出席する程度だ。
「これで、王様の代役が出来るのでしょうか?」
リータの問いに、双子王女は考えるが、なかなかいい答えが出ない。
そんな中、執務室にノックの音が響き、シラタマが許可なく部屋に入って来た。
「にゃ? にゃんかみんにゃで話し合っていたにゃ?」
頭を抱える双子王女を見たシラタマが尋ねると、双子王女は睨む。
「「シラタマちゃんの事ですわ!」」
「にゃんか知らにゃいけど、ごめんにゃさい!!」
反射的に謝るシラタマに、事の経緯を怒りながら説明する双子王女。シラタマは、平謝りで切り抜けようとするのであった。
ようやく双子王女の怒りが収まったと感じたシラタマは、口を開く。
「まぁわし達は猫の国から給金も受け取ってにゃいんだし、ハンターの仕事が本業でもいいんじゃないかにゃ~?」
「たしか、最初の説明でそんな事を言ってましたわね」
「街の代表は高収入にしたんにゃから、仕事が大変なのは当然にゃ~」
「まさか、その言い訳の為に、給金ゼロにしたわけじゃなくて?」
「まっさか~。猫の国は貧乏にゃから、わしの給金は削っただけにゃ~」
事実は、双子王女の考え通り。しかし、シラタマは心を無にして、尻尾の文字を出さずに乗り切った。皆は信じていないけど……
「そうにゃ! コリスと一緒に農作業を見てたんにゃけど、みんにゃ飲み水に困っているんにゃ」
そして強引に話を変えようとする。双子王女は街の事なので、渋々その話に乗るようだ。
「飲み水ですか?」
「かなり暑くなって来たにゃろ? 街の井戸まで遠いから、持たせた水筒だけでは足りないみたいにゃ」
「なるほど……それだと体調を崩しますわね」
「汲みに行くにも効率が悪くなりますわね」
双子王女はデメリットを述べるが、解決策は思い付かないようなので、シラタマが案を出す。
「農園の要所要所に井戸を掘るか、馬車を出して往復させるか、魔法使いを多く派遣するか……思い付くのは、こんにゃところかにゃ?」
「井戸を掘るには、人員が必要……」
「魔法使いは数が限られる……馬車が現実的ですわね」
「その人員も、考えなければ……」
双子王女が考え出したので、シラタマはリータとメイバイの間に座ってお茶をすする。
そうしていると、リータとメイバイがシラタマを撫でながら、解決案を提出する。
「シラタマさんが、井戸を掘ったらいいのではないですか?」
「そうニャー。どうせ暇なんだから、シラタマ殿がやったら解決ニャー」
「ちょ、双子王女の仕事を取っちゃダメにゃ~」
「働きたくないからですか?」
「違うにゃ~」
「猫の街は人が少ないんだから、シラタマ殿がやるニャー!」
「そうです! 働いて来なさい!」
「にゃんで~~~」
こうしてシラタマは、リータに首根っこを掴まれ、執務室からボイッと投げ捨てられて、仕事に向かうのであった。
「とりあえず、井戸の件は解決しました」
リータは考え込んでいた双子王女に声を掛けると、微妙な顔をされてしまった。
「えっと……ダメでしたか?」
「いえ。そんな解決方法があったのかと、思いもよらなくて……」
「シラタマちゃんを頼ると早いのですわね」
「でも、王の仕事としてどうなのかしら?」
井戸を作らされる王様に、双子王女は首を傾げてしまうので、メイバイが補足する。
「あまり住人の仕事を取ってしまうといけないけど、緊急な案件はいいですニャー」
「「はあ……」」
あまり納得のいかない双子王女だが、先ほどのやり取りを見て、王妃の仕事が決まったようだ。
「普段は、ハンター業をしたらよろしくなくて?」
「え……それじゃあ、王妃の仕事じゃありません」
「あとは、シラタマちゃんを見張ってくれていればいいですわ。それでこの国は回ると思いますわ」
「それじゃあ、今までと変わらないですニャー」
双子王女の案に、リータとメイバイは納得いかないと意見するが、双子王女は声を揃えて叫ぶ。
「「あんな変な王様、わたくし達の手に余りますわ!」」
どうやら双子王女は、シラタマの仕事内容や行動に、匙を投げたようだ。そりゃ、王族の仕事から遠く離れているから、リータ達へのアドバイスが思い付かないのであろう。
それでもリータ達は、猫の国の為に働きたいと泣き付くので、時間がある時は役場の雑用をする事が、王妃の仕事と決まるのであった。
その数日後……
「にゃあにゃあ? 最近リータとメイバイって、双子王女に扱き使われてるにゃ? ……すみにゃせん!!」
リータ達の仕事に茶々を入れるシラタマは、双子王女と王妃二人にひと睨みされ、役場の窓からポイッと投げ捨てられるのであった。
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