アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

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第十三章 新婚旅行編其の一 東に向かうにゃ~

357 確信にゃ~

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 わしの出したドロっとした液体を、管でチューチューと吸う白カブトムシは、凄い勢いで吸ったものだからあっと言う間に吸いきり、催促して来たので、もう一度同じ量を献上する。

 やはり好物じゃったか。ハチミツは……。今度はもったいぶって、少しずつ吸っておるな。木の樹液より格段にうまいはずしゃから、貢物として持って来いだったみたいじゃな。
 しかし、あの巨体で樹液なんて吸えるんじゃろうか? もしかしたら、数百年ぐらい樹液断ちをしておったのかもな。

 わしが美味しそうにハチミツを吸う白カブトムシを見ていたら吸いきり、物欲しそうな顔で見て来たので、頃合いと見て交渉に乗り出す。

「それでどうじゃ? 夜の間だけ、仲間と共に泊めてくれんか? もちろんお前の縄張りを汚す事はしない」
「むう……もっとくれたら許可しよう」
「もっとと言われても、手持ちは少ないんじゃ。全部やるから、それで勘弁してくれんか?」
「う~ん……わかった」
「交渉成立じゃな!」

 立場が変わり、わしが強気に出ても白カブトムシは容易に許可してくれた。なので、ハチミツの入った壺を差し出し、チビチビ吸っている間に、わしはリータ達を呼びに行く。
 人型に戻ったわしは、皆と共に白カブトムシの前に顔を出し、晩ごはんを食べながらペチャクチャと話をする。

「おっきいですね~」
「白い巨象みたいニャー」
「これぞ、山だにゃ~」

 リータとメイバイは、白カブトムシの大きさに感嘆の声をあげている。

「おかわりは~?」
「その頬袋の物を食べたらあげるにゃ」

 コリスはお弁当が足りなかったのか、催促して来る。

「凄く強い……どうやって従わせたの?」
「食べ物で釣ったにゃ」

 イサベレは緊張しているのか、白カブトムシの安全性を問いただす。

 皆は別々にわしに話し掛けるので大変だ。それでもなんとか応え、食事が終わるとお風呂にする。
 今日は危険な生き物は目の前にいる白カブトムシだけなので、皆で入る事にした。て言うか、イサベレの目が怖かったので、リータ達に守ってもらう作戦に出た。

「シラタマさ~ん?」
「手をどけるニャー」
「ここも気持ちいいと聞く」
「いにゃ~ん! 触らにゃいで~!!」

 結局、あらぶる乙女達にわしはおもちゃにされ、あんなところやそんなところを撫でられてしまう。
 コリスに助けを求めたものの、小首を傾げるだけ。なので、卑猥な所を触ろうとする魔の手は、尻尾でペチペチ叩いて回避するのであった。

 お風呂から上がって綺麗さっぱりになるとバスを取り出し、わしはもう一度白カブトムシと話をして来ると言って、怪しく目を光らせて布団に入るように促すリータ達から逃げ出した。

 うぅ……イサベレにわしの黄門様をイジられた。危険察知は助かったが、夜の危険が高まってしまった。どうしたものか……


 わしは気持ちを落ち着かせながら歩き、白カブトムシの目の前まで行くと、ドサッと座ってあぐらを組む。

「お前も一杯どうじゃ?」

 そして清酒をコップに注いで白カブトムシの前に置く。

「変な匂いだな」
「まぁさっきの物とは違うからな」
「試してみよう」

 白カブトムシは酒を少し吸うと、渋い顔をしたかどうか読み取れないが、それでもチビチビと吸っているので、悪くはないようだ。

「それでなんじゃけど、昔に、この辺でわしに似たような生き物を見なかったか?」
「昔か……」

 白カブトムシは思い出そうとしているようなので、ヒントになるかもしれないから、わしは猫又の姿に戻る。

「う~む……見た事があるような……」
「地が割れ、木が燃えた事があったはずなんじゃが……」
「むっ……あった!!」
「それじゃ!」
「たしかに、お前に似た奴が騒いでいたな」

 白カブトムシは記憶を手繰り寄せて話を聞かせてくれた。

 それは遠い昔、白カブトムシが良い住み処を探していた頃の話。転々と森を移動していたら、大きな音が聞こえて来たそうだ。
 気になった白カブトムシは空から偵察を行い、現場に到着すると、生き物の戦いはちょうど終わったところだった。
 そこには、二匹の白い生き物が横たわっており、一匹はクワガタに似た形をしていて、もう一匹はわしによく似ていたとのこと。
 白カブトムシは森が無くなっていたので、酷い事をする奴がいたもんだと嘆いたそうだ。
 ここには住めないと、白カブトムシは目星を付けていた場所に戻ろうとしたその時、二本足で歩く生き物が、わしに似た生き物を抱えて走り去ったらしい。


 おお! 繋がった!! 人間がどこに向かったかはわからんみたいじゃが、おそらく西じゃろう。予想じゃと、森に押されてジリジリと西に移住し、現在の猫の国にまで流されて来たんじゃな。
 白クワガタを殺してしまって失敗したが、これだけ情報を仕入れられたんじゃ。白カブトムシとは戦闘にならなくてラッキーじゃったわい。

 わしは酒を飲み干すと礼を言って、白カブトムシの元を離れる。
 猫又のまま寝たほうが安全かもと考えながらバスに戻ると、その前にはイサベレが座って待っていた。

「どうした? 眠れないのか?」
「ん。こんなに強い敵が近くにいると、胸がざわざわする」
「そうか。二人はどうした?」
「疲れて寝てる」

 お! これなら犯される心配が減るな。あとはイサベレをなんとかするだけじゃ。

 わしはまた酒を取り出し、コップに注いで飲むように促す。

「私を酔わせて何するつもり~?」

 うん。進歩が無いな。棒読みのままじゃ。

「別に何もせんわい」
「ガーン」

 落ち込んでる事を表現しているようじゃが、無表情のままじゃから伝わらんのう。

「それでどうじゃ? 自分より強い者と助け合う旅は」
「まだ一日。でも、悪くはない」
「そうじゃったな。これからさらに敵は強くなるから、夜はしっかり休んで欲しいんじゃ。わしも疲れたままで、強敵とあいたくない。皆を守れなくなるからのう」

 やんわりと夜の営みを拒否してみたが、どうじゃ?

「……たしかに毎日ヤリまくったら疲れる」

 通じたようじゃが、もうちょっとオブラートに包んで欲しいのう。

「ダーリンとの旅が嬉しくてはしゃいでいた。自重する」

 やった! これで犯される心配が減ったぞ! あ、そうじゃ。忘れない内に、あの件も片付けておこう。

 わしは白魔鉱を少量取り出すと指輪の形に変え、イサベレに渡したネックレスに付いている二個の宝石のうち、肉体強化魔法の入った宝石を取り外して台座に乗せる。そして、猫又のままイサベレの右手の薬指に、頑張って通してあげた。

「指輪……」
「欲しがっておったじゃろ?」
「ん。綺麗」
「さてと~。そろそろ寝るか」
「……ありがとう」

 イサベレの感謝の言葉を笑って答えたら、わしの念話での口調がおかしいと言われ、本来の喋り方だと説明してからバスに入る。
 念の為、猫又のまま寝ているリータとメイバイの間に入ろうとしたら、イサベレにむんずと抱き締められて眠りに就くのであった。

 だから息子を触るなと言っておろう!

 イサベレの布団の中で、長い戦いが繰り広げられたのは言うまでもない……




 翌朝は、寝るのが遅かったわしとイサベレは寝坊。リータとメイバイの殺気で目を覚ました。イサベレ先生の手前、とくには怒られなかったのだが、夜の寝る順番を話し合いながら朝食をとる事となった。
 その席で、昨日、白カブトムシから得た情報を聞かせて、メイバイと共に過去の繁栄に思いを馳せる。
 先祖の暮らしや猫の国に辿り着いた事を話し合っていると時間が過ぎるのは早く、出発が遅くなりそうだったので、話を一度切る事にする。

 出発の準備が整うと、わしだけ白カブトムシに、別れの挨拶で顔を出す。

「ほい。これは餞別せんべつじゃ」
「甘い匂いがするな」
「ハチミツはもう無いからな。シロップでも甘いから、代用になるじゃろう。いい話を聞かせてくれたお礼じゃ」
「そうか。ゆっくり味わわせてもらうとしよう」
「そんじゃ、ありがとさ~ん」

 わしはシロップの入った壺を残して別れを告げ、手を振りながらリータ達の元へと戻る。
 そこから戦闘機を飛び立たせ、東へと空を行くのであった。


 本日も晴天なのだが、鳥の多い区域だったらしく、あっと言う間に囲まれそうになったので地上に変更。
 地上に降りると、わし達は戦いを避けるべく静かに移動する。黒くて巨大なダンゴムシは、多数決の結果、戦いたくないとなったからだ。
 ダンゴムシは好戦的な生き物じゃなかったので、こちらから手を出さなければ、無事に逃げ切る事が出来た。
 だが、その先でムカデの群れに追われたので、皆で悲鳴をあげながら空に逃げて置き去りにした。
 幸い、鳥ゾーンを抜けていたようなので、しばらくは戦闘機でペチャチクャ喋りながら空を行く。

「怖かったにゃ~」
「すごい数の脚でしたね……」
「うっ……思い出させないでニャー」
「もう見たくないよ~」

 先ほどのムカデの感想を皆で述べていると、イサベレだけは涼しい顔をして質問して来る。

「強そうに見えなかったけど、どうして逃げていたの?」
「だって~。気持ち悪いにゃ~。てか、イサベレは、虫は大丈夫にゃの?」
「ん。特には……」
「にゃ! 今度から、虫はイサベレに頼もうかにゃ? お願いにゃ~」
「ダーリンを助けるのは愛人の務め。任せて」

 はて? それは妻の務めじゃなかろうか? いや、妻も普通は戦わん。リータとメイバイも頼りにしてるから、ほっぺをぷにぷにしないでください。


 お喋りをしていても戦闘機は空を進み、皆は渡していた望遠鏡を覗いて面白い物が無いかと探している。そんな中、メイバイの声がしなくなったので振り返ると、首を捻っていた。

「う~ん……」
「どうしたにゃ?」
「気のせいかニャー?」
「気になる事があるにゃら言ってくれにゃ。それを調べるのも、この旅の目的だしにゃ」
「あ、そうだったニャー。あの辺の黒い木、妙に揃い過ぎてないかニャー?」

 わし達は、メイバイの指差す場所を注視する。すると、リータもメイバイと同じような反応をする。

「たしかに……木の間隔が一定に見えますね」
「ニャー? 道みたいになってるニャー」
「本当にゃ。じゃあ、あそこでお昼にしようかにゃ~?」

 コリス時計がわしの尻尾をモグモグしているので意見を聞いたら、全員一致したので、戦闘機を気になるポイントに向ける。
 しばらく進み、着陸態勢に入って高度を下げていると、驚くべき物が見付かった。

「建物にゃ……」

 戦闘機が、道のように幅が揃った黒い木の上空を飛ぶと、建物のような物と、それが崩れた瓦礫が目に入る。

「なんだか長く続いて見えますね」
「やったニャ! 大発見ニャー!」
「そ、そうだにゃ。ひとまず降りるにゃ~」

 わしはその光景に見惚れながら、戦闘機の高度を下げて行くのであった。
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