アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

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第十五章 日ノ本編其の一 異文化交流にゃ~

405 ハンターギルドの見学にゃ~

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 つゆが泣きやむと、ようやくリータとメイバイの説教からわしは解放される。そうして二人は、つゆを撫で撫でしながら慰めていたが、撫でたいたけじゃろ? つゆが涙目でわしを見ているし……
 ひとまず説教から解放されたわしはその場を逃げ出し、エンマと雑談。日ノ本の商品を流してくれと言われたが、まだ何も決まっていないので、わしが撮って来た写真だけ見せてあげた。

 だが、写真に写る商品よりも、写真自体に興味を持ち、エンマはカメラをご所望。かと言って、カメラはレンタルしているだけなので、譲る事も売る事も出来ない。
 そこも平賀家との交渉があるから後日としておいて、わしが個展を開くのはどうかと話を持ち掛けると、入場料が取れると話に乗って来た。
 しかし、焼き増ししてもらっていた写真は女王達にあげたので、わしが使う物しかなかったから、これも話はまた後日となった。

 そうしていると、遊び疲れた皆が戻って来たのでキャットランドをあとにする。
 もう無駄な出費をしたくないわしは、王都の我が家に戻ろうとしたのだが、まだ明るいので玉藻にどこか案内しろと言われ、渋々ハンターギルドに連れて行った。ここでなら、お金を使う心配がないからな。

「おお~。武器を持つ者が多いな。こやつらは侍か?」

 玉藻は少なからず居るハンターに興味津々だが、ハンターギルドに居る全ての者は、白猫でも黒猫でも巨大リスでもなく、玉藻、キツネ店主、タヌキ少女に釘付けだ。ちなみにオニヒメは、帽子を被っているから鬼だと気付かれていないようだ。

「侍じゃなく、ハンター……狩人にゃ」
「狩人……狩りをするだけで、こんな施設が必要なのか?」
「日ノ本と比べて獲物が多いからにゃ。まぁ農耕民族と、狩猟民族との違いがあるのかもしれないにゃ」
「なるほどのう。たしかに日ノ本は農耕民族と言って過言ではないな。本当にシラタマの話は勉強になるのう」

 わしと玉藻が話し込んでいると、女性が近付いて来る。

「猫ちゃん……久し振りでなんだけど、そのキツネやタヌキはなんなの??」

 ティーサだ。何やら、わしと初めて会った時のような顔で、キツネ店主やつゆを見ている。

「遠い遠い東の地からやって来た、日ノ本の国の者達にゃ。こっちが玉藻……」

 とりあえず皆の紹介をしてみるが、ティーサはブツブツ言っている。「キツネ、タヌキ、尻尾、猫」とか言ってるけど、最後の猫はワンヂェンを指していると思われる。絶対わしは驚きの対象ではないはずだ。
 そうして自己紹介を済ませると、ティーサに頼んで、ギルドの案内をしてもらう事となった。

 しかし、階段をドタドタ下りる人物に邪魔される。

「シラタマちゃん! 待ってたわよ~」

 スティナだ。鼻息荒く、わしの元に走って来たが、急ブレーキ。

「キツネ! タヌキ! 尻尾! 猫!?」

 玉藻達を見て混乱したからだ。最後に何故かわしを見ているので、そっとワンヂェンと入れ替わった。

「まぁ驚いているところにゃんだけど、話はわしとだけしたらいいにゃろ? ティーサ、連れて行ってくれにゃ~」
「あ、はい」

 玉藻達はティーサに連れられ、地下冷蔵庫に歩いて行った。興味のないさっちゃんは、テーブル席でコリスと兄弟達とお喋りするようだ。
 王女様が獣に囲まれているけど、周りから微笑ましく見られているところを見ると、皆は王女様がペットに話し掛けていると思っているみたいだ。
 オニヒメはリータとメイバイとワンヂェンに預け、わしはスティナを引っ張ってギルマスの部屋にお邪魔する。一般的なハンターは入らず仕舞いで終わるらしいが、わしは何度も呼び出しを受けているから慣れたものだ。


 そうしてスティナにコーヒーを出して落ち着いてもらうと、話に戻る。

「てか、スティナはギルマスにゃんだから、女王から話は行ってなかったにゃ?」
「陛下から手紙で知らされていたけどね~。実物見ちゃうと、やっぱり驚くわね。シラタマちゃんのとき以来の衝撃よ」

 まぁわしも初めて見た時は開いた口が塞がらなかったから、気持ちはわからんでもない。わしを例に出す理由はわからんがな!

「それで、にゃんか慌ててたけど、わしに用かにゃ?」
「ええ。獣よ、獣。またいっぱい持ち帰って来たんでしょ? 確認と購入をしたいのよ」
「そんにゃことか~。でも、わしも置いておきたい物もあるから、売るのは応相談にゃ」
「う~ん……ま、それでいいわ。あまり流通させても、他のハンターがかわいそうだからね」

 スティナとの交渉の為に部屋を出て訓練場に向かうが、人だかりが出来ているので、わしとスティナは何事かと思いながら人を掻き分けて中に入った。
 するとそこには、いつの間にか公家装束に戻っていた玉藻が扇子で顔をあおぎながら、地面に転がるハンター達を見下していた。

「にゃにしてるにゃ~」

 わしは喧嘩でもしたかと思い、玉藻に駆け寄る。

「ちょっと遊んでもらっただけじゃ」
「遊んでって……みんにゃボロボロにゃ~」
「猫ちゃん、本当に大丈夫よ。みんな同意の上だから」

 ティーサが言うには、地下冷蔵庫で獣を見せたあと訓練場に向かったら、ハンター達がぞろぞろとついて来たそうだ。そこで一通りの説明を聞き終えた玉藻が「暇なら遊ばんか?」と提案したらしい。
 ハンター達は、幼女にそんな事を言われて笑っていたのだが、一人目が簡単に倒されると、「俺も俺も」と手を上げる者が続出。どうやら、幼女の尻尾で殴られたい変態さんが多数いたようだ。

 玉藻はハンター達の攻撃を尻尾で軽くいなし、往復尻尾ビンタで倒していたらしい。だが、ハンター達はそれを気に入り、何度も向かって行って、この始末となったようだ。

「ふ~ん……にゃにが目的でこんにゃ事をしでかしたにゃ?」
「そりゃ、これほどの舞台なら、血湧き肉躍るじゃろう。観客が居ないのは、少し残念じゃがな」

 ……胡散臭い。絶対、ハンターの実力を調べていたはずじゃ。まさか、東の国を奪おうと考えておらんじゃろうな?

 わしがジト目で見ていると、玉藻は安心させようとする。

「案ずるでない。天皇陛下に危害が及ばない限り、わらわは表立って動かんからな」

 先に釘を刺されてしもうたな。じゃが、ちびっこに何かしたら、玉藻が出て来るのはわかった。他国の王にも、注意喚起しておいたほうがよさそうじゃ。

「それで、戦ってみてどうだったにゃ?」
「そうじゃのう……ここでは人が多いし、場所を変えようか。それに小腹が減って来たしのう」
「まだ食べるにゃ!?」

 わしのツッコミは聞く耳持たず。コリスを味方に付けた玉藻の案で、王都の台所に向かう事となった。しかし、まだ獣の確認が終わっていなかったので、スティナの胸に挟まれて止められてしまった。
 なので、皆に肉の串焼き支給してから獣の確認。前回同様、白と黒の獣を出してギルド職員に数えてもらう。前回と違う点は、量が三倍近く多かった事と、上から五番手までの大物は見せていない。
 いちおうスティナには、種類と大きさ、使い道を説明したら納得してくれた。女王誕生際に出す獲物を、いまから確保できるのだから当たり前だ。

 玉藻は巨大な獣の数々を見て「フゴフゴ」うるさい。欲しいとは言い出さなかったが、どうやら戦ってみたいようだ。日ノ本ではこれほどの獣と出会わないからわからんでもないが、玉藻もけっこうな脳筋みたいだ。

 獣の確認と売却が終わると日が暮れ始めたので、急いで広場に向かう。ちなみにさっちゃんは、ギルドの空いてる部屋を借りて綺麗な服に着替え、コリスに乗ってモフモフ言っていたから移動も問題ない。
 ここで食べ歩きと、キツネ店主の品物物色。キツネ店主はエンマに説明は任せ、わしはお財布となる。まぁここは安い商品が多いので、財布に優しい。串焼きも先に食べさせていたからなおのことだ。

 皆の腹が満足したところで、東の国観光は終了。皆には王都の我が家に先に戻ってもらい、わしはさっちゃんと兄弟を城に送り届ける。時間も時間なので、ショートカット。屋根をぴょんぴょんと飛び交い、城に入る。
 そこで女王にモフられ、今後の予定を少し話し合ってから帰路に就く。


 ぴょんぴょんと急いで戻ったのだが、アダルトフォーを加え、皆は完全にできあがっていた。日ノ本の歓迎会とか言っていたけど、飲みたいだけじゃろ?
 せめて家主を待ってくれてもいいのにとブーブー……「にゃ~にゃ~」文句を言っていたら、ツマミが足りないと逆に文句を言われる始末。なので、庭でバーベキュー。勝手に焼いて食ってくれ。

 そうして一段落つくと、縁側で飲んでるわしの隣に玉藻が腰掛けた。

「ふぅ~。騒がしいが、こんな夜もよいのう」
「たまにだったらにゃ。毎日じゃ、休まらないにゃ~」
「コンコンコン。たしかにのう」

 わしの嫌そうな顔に、玉藻は笑って応える。

「あ、そうにゃ。ギルドでの話を忘れていたにゃ。ハンターの実力は、玉藻にはどう見えたにゃ?」
「率直に言うと、日ノ本の者よりやや強いじゃろうな。体も大きいし、あのような者がわらわら居るとは信じられん」
「ちゃんと見てないけど、たぶんあいつらは、中堅かそれ以下ってところにゃ」
「そうか……これは友好的に接しないと、日ノ本は痛い目にあいそうじゃ」

 やはり、力を測っておったんじゃな。抜け目ないのう。

「まぁわしも東の国も、日ノ本をどうこうしようと考えていないにゃ。帰る前には友好条約を結んでしまおうにゃ」
「友好条約……国どうしで約束を取り交わすってことか?」
「ああ。玉藻も経験が無いからわからにゃいか。これ、うちと東の国で結んだ条約の写しにゃ。暇にゃ時間に読んでおいてにゃ」

 わしは次元倉庫から書類を渡したが、玉藻はペラペラとめくってからわしを見る。

「読めぬ……」
「にゃ! そうだったにゃ。英語の勉強もしなくちゃだにゃ~」
「この歳で文字を覚えるのか……」
「にゃはは。ご愁傷様にゃ。でも、異国と関わるって事は、そういう事にゃ。言葉の受け取り方の違いで戦争になるかもしれないからにゃ」
「しかし妾ひとりでは……」
「う~ん……時期を見て、お互いの国の者を集めて勉強会にゃんかもしようにゃ。まぁそれもこれも、三ツ鳥居が繋がってからだけどにゃ」

 わしが三ツ鳥居の話を出すと、玉藻の興味が移る。

「そうじゃ。まだ白い木を見てないんじゃが、どこにあるのじゃ?」
「森の深くだから見当たらないだけにゃ」
「ほう……早く見たいのじゃが……」
「もうちょっと観光を楽しんでくれにゃい? こっちにも都合があるからにゃ」
「そりゃそうか。そちは王なのじゃから、忙しい……」
「にゃ~?」

 玉藻が言葉を詰まらせるので、わしは疑問の声を出す。

「シラタマが王らしい仕事をしているところをまだ見ておらんのじゃが、そちは本当に王なのか?」

 そう。玉藻がこちらの土地に来てから、わしはガイドしかしていない。小難しい書類も読まず、指示も極僅ごくわずかしか出していないから、玉藻は疑っているようだ。

「えっと……他国の者を接待する事が、王様の仕事なんにゃ」
「そんなわけがないじゃろう!!」

 わしの苦し紛れの言い訳に、玉藻はツッコンでくれるのであったとさ。
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