アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

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第十七章 日ノ本編其の三 関ケ原その後にゃ~

463 緊急事態にゃ~

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 我輩は猫又である。名前はシラタマだ。地震は怖い……

 関ヶ原は大盛り上がりのなか閉幕し、控え室でちびっこ天皇達と語り合っていると、強烈な横揺れを感じ、地面が激しく揺れる。
 その揺れに、猫の国組とさっちゃんは悲鳴をあげ、座り込んで頭を抱えている。

 地震……久し振りじゃな。わしも一度震災を経験しているが、そのせいもあって恐怖心はある。さっちゃん達の反応を見る限り、地震を知らないのか?
 ならば、いきなり地面が揺れたんじゃから、怖いじゃろうな。じゃが、そこまでは大きくないかも? わしの予想では、震度6ってところか……この時代背景じゃと、ちょっとヤバイかも……

 わしが皆を抱いて考え込んでいるとようやく揺れが収まり、玉藻が声を発する。

「お~。揺れたな~」

 その声はどこか暢気のんきに聞こえたので、わしは玉藻に問いただす。

「こんにゃ大きにゃ地震、いつもあるのかにゃ?」
「いや、久方振りじゃ。ただ、わらわは何度か経験しているからのう」
「玉藻はそうでも、民は違うにゃろ? 被害が出てるかも知れないにゃ。まずは、ここの被害状況、震源地、各地の被害状況を確認しろにゃ」
「お、おお……そうじゃったな。では、妾はその辺を見てこよう」
「待てにゃ。誰がどこで指揮を取るか、先に決めろにゃ。宿場町はわしが見て来てやるにゃ」
「そうか……頼む」

 玉藻がちびっこ天皇達と話し合いを始めると、わしは震えているリータ達の元へ近付く。

「怖い思いをしているところ悪いんにゃけど、仕事を頼みたいにゃ。いけるかにゃ?」
「はい……なんとか……」

 リータはよろよろと立ち上がる。

「とりあえず、さっきの揺れの正体は、アースクエイク。地面が揺れる現象にゃ。これから余震ってのが何度か起こると思うけど、オクタゴンは頑丈だから、その中に居る限り安全だと言って、王族達を安心させてくれにゃ」
「……はい」
「それと、怪我人が居るにゃら、ワンヂェンとオニヒメに見せたらいいからにゃ」
「わかりました」

 リータへの指示が終わると、わしはコリスの頭を撫でる。

「コリスも怖かったかにゃ?」
「う~ん……ちょっと~」
「にゃはは。コリスも強くなったにゃ~。それじゃあ、コリスはわしを助けてくれにゃ」
「うん! モフモフたすける~」
「よし! 行動開始にゃ~!!」
「「「「「にゃ~~~!」」」」」

 猫の国組は元気に声を出すと、各々の持ち場に走る。ちなみにさっちゃんは、リータにおぶさってオクタゴンに向かって行った。


 わしとコリスはダッシュで宿場町に走り、ローラー作戦で町を駆ける。南から攻め、建物が崩れているならば、強引に中に入る。頑丈なわし達ならではの救出方法だ。
 そこで声を掛け、返事や音が聞こえたら瓦礫をひょいっと持ち上げて要救助者を助け、聞こえなければ次に向かう。
 人だかりが出来ていればその建物にも入り、要救助者を抱えると脱出。複数居るならばコリスに応急手当をさせ、わしは何度も建物に入って連れ出す。
 宿場町は広く、建物が多くあるのだが、崩壊している建物は思ったより少ない。ほとんどの人は閉会式に出ていたので、要救助者はそこまで多くないかもしれない。

 そうして救助していると中間地点に入り、神職の集団が居たので、見た事のあるかもしれないキツネ巫女に声を掛けてみる。

「どんにゃ状況にゃ?」
「猫の王さん!?」

 猫の王? やっぱり美人局つつもたせのキツネ巫女っぽいな。

「見た感じ、軽症者が多そうだにゃ」
「あ、はい。でも、重傷者が少なからず居ますので、時間が掛かっています」
「じゃあ、コリスを貸してあげるにゃ。それと、重傷者と軽症者を的確に分けて、重傷者から治療するにゃ。コリスには、重傷者を回してにゃ」

 わしの言い分に、キツネ巫女は首を傾げる。

「え……来た人から順番にやっちゃダメなんですか?」
「そんにゃ事をしたら、助けられる人が助けられなくなるにゃ。……いいにゃ? 人員には限りがあるにゃ。そして、命に上下は無いにゃ。金持ちがどんだけ騒ごうとも、軽傷にゃら無視にゃ。わかったにゃ?」
「は……はい」
「じゃあ、わしは救助活動に向かうにゃ。コリス。ここは頼んだにゃ~」
「まかせて!!」

 コリスと分かれたわしは、救助活動に戻り、次々と要救助者を救出する。たまに余震が起こるが気にせず建物の中に入り、怪我が酷い人には応急手当程度で回復魔法を使い、また次の建物に入っては救出する。
 しかし、コリスが居なくなった分、救助活動に時間が取られてしまい、なかなか進まない。

 そんな折り、わしを呼ぶ声が聞こえて来た。

「シラタマ殿~!」

 メイバイだ。オニヒメを背負って、わしを助けに来てくれたみたいだ。

「にゃ? 王族達は大丈夫だったにゃ?」
「うんニャ。驚いて転んだ人が数人いたけど、みんなたいした事がなかったにゃ。それで、リータが私とオニヒメちゃんをこっちに寄越したニャー」
「それは助かるにゃ~。じゃあ、メイバイは家の中に入って……」

 メイバイも普通の人より頑丈なので、無茶な救助活動をさせても問題ない。おそらく木造家屋なら、埋まっても痛い程度でケロッと出て来るだろう。リータなら高層ビルでも……ちょっと怖いから考えるのはやめた。
 オニヒメには、応急手当を任せる。これでも猫の街で治療院を手伝っていたのだから、わしの指示を聞いて皆を簡単に治してくれている。

 二人の参加で救助するスピードが上がり、宿場町を一通り救助して回ると、わし達はキツネ巫女が居た中央広場に戻る。

「あ! シラタマさん!!」

 そこにはリータの姿があり、駆け寄って来た。

「リータも出てたんにゃ」
「はい。女王様方は大丈夫と言ってましたので、ワンヂェンさんも連れて来ました」
「それは助かるにゃ。で、いまはどんにゃ感じにゃ?」
「重傷者は、いまのところ持ち直しました。残りは軽傷者の手当ですね」
「じゃあ、しばらくここを任せるにゃ。もしも救助が必要にゃ場合は、リータとメイバイで対応してくれにゃ。それと炊き出しだにゃ~」

 コリスが悲しそうな目でわしを見ていたので、お腹がへっているのだろう。とりあえず、猫の国組には高級串焼きを大量に支給する。
 日ノ本の者には、わしが持っている安い肉と塩をプレゼント。料理や治療に必要な水は、巨大なタンクを作って水魔法で満たす。開口部はしきりで塞ぐ作りなので、大きく開けると吹き出すかもしれないと、キツネ神職に忠告しておく。
 あとは飲食店をやっていた者に頼んで、焼肉や手持ちの米を集めて雑炊でも作ってもらえるように指示を出しておいた。

 これで当面の指示は出来たので、わしは通信魔道具で女王に一報を入れてから、玉藻が居るであろう控え室に向かった。そこには、一人のキツネ女しか居なかったので話を聞くと、玉藻とちびっこ天皇は、宿場町の滞在場所に戻ったらしい。
 キツネ女は、わしが来たらそこに案内するように言付かっているとのこと。なので、背負って滞在場所に走る。

 少し飛ばし過ぎて、キツネ女は「キャーキャー」騒いでいたが気にせず走り、立派な建物に到着する。すると、門に立つキツネ侍に話は通っていたらしく、すぐに玉藻とちびっこ天皇の元へ案内された。

「宿場町はどうなった?」

 開口一番、玉藻が尋ねるのでわしは簡潔に説明する。

「建物は、およそ七割は無事ってところで、軽傷者は多数、死者はいまのところ無しにゃ」
「そうか……シラタマに頼りっきりで悪かったな」
「気にするにゃ。それより、他の地域はどうだったにゃ?」
「どうやらここより東の海が震源地らしい。その近辺を重点的に電報で聞いていたんじゃが、ほとんど大丈夫そうじゃ。ただ、海に近い浜松と連絡が取れないんじゃ」

 電報? 日ノ本では、遠くの人と電報で連絡を取り合っているのか。

「それと、秀忠が変な事を呟いていた……」
「にゃ?」
「ヤマタノオロチ……聞き間違いでなければ、そう言っておった」
「前に陸前(福島)を襲ったとか言ってた奴にゃ?」
「まさかとは思うが、聞いて来てくれないか? そちになら、徳川も話がしやすいかもしれん」
「わかったにゃ。その前に、ちょっとオクタゴンを見て来るにゃ。たぶん、これで王族を帰す事になると思うけど、挨拶はいいにゃ?」
「妾はちと忙しいから、陛下を連れて行ってくれ。護衛に娘をつける」

 玉藻が目配せすると、部屋の中に居た四尾のキツネ耳女性が立ち上がった。いまは忙しいので、軽く挨拶だけしてちびっこ天皇を背負って建物を出る。ちびっこ天皇は玉藻の娘に背負って欲しそうだったが、無視してやった。

 走りながら玉藻の娘の事を聞いてみると、名前はお玉。モデル体型の美人さんだ。ちょっと貧乳なのがもったいないので、巨乳に変化へんげしないのかと聞いてみたら、ちびっこ天皇の顔を、嫌そうな顔で見た。
 たぶん、玉藻が旅している間、ちびっこ天皇に揉まれまくった事がトラウマになっているんだろう。だから、皆まで聞くのはやめてあげた。


 わし達の走りは速かったので、お玉の自己紹介だけでオクタゴンに到着。あらかじめ女王に連絡を入れて、王族を大食堂に集めてもらっていたので、そこでわしはちびっこ天皇と共に壇上に立つ。

「え~。本来にゃらば、あと数日は日ノ本に残って、宿場町を観光したりする予定だったんですが、大変にゃ事態になってしまったので取りやめとしますにゃ。では、現状を説明しますにゃ~」

 急遽プログラムの変更を行うので、文句が来ないように宿場町の被害状況を説明すると、それならば仕方がないとの声が聞こえて来た。

「まぁそんにゃわけなんにゃけど、全員を一度に帰す事は出来ないかもしれないにゃ。だから、残る人は護衛だけにしてもらって、少しだけ力を貸してもらえないかにゃ? 瓦礫を運ぶ手助けをして欲しいにゃ」

 この発言に、素直に「はい」とは言えない王族はコソコソと相談しているので、わしは皆に聞こえるように双子王女と相談する。

「特例で、緊急救助活動を発令するにゃ。猫の国に帰ったらウンチョウに、兵士を二十人ほど、すぐに動かせるように言っておいてくれにゃ。それと、食糧の備蓄もにゃ」
「いいのですけど、日ノ本とはまだ条約を結んでいないのでは?」
「だから特例にゃ。これから結ぶ国にゃんだから、出来るだけ手助けしたいにゃ~」
「まったく。お人好し……お猫好しにもほどがありますわね」
「まったくですわ。ですが、王の命令では仕方がないですわね」

 双子王女は嫌みを言っているが微笑んでいたので、日ノ本の惨状を聞いてわしと同じ気持ちだったようだ。

 わし達の話を難しい顔で聞いていた女王は、話がまとまったと感じたのか、質問して来る。

「シラタマ……その緊急救助活動って、なに?」

 その質問はわしの待ってましたの質問なので、すぐさま大声で答える。

「我が国独自の制度にゃ。発動条件は、友好国に災害が起きた場合で、兵士、救援物資を送り届けるにゃ。もちろん、断られたら引き上げるけどにゃ」
「なんでそんな慈善活動を国がするの??」
「双子王女が言った通り、お猫好しだからにゃ」
「ふざけないで答えてちょうだい」

 女王がムッとした顔をするので、わしは笑いながら答える。

「にゃはは。ごめんにゃ。でも、しいて順番をあげるにゃら、それが一番にゃ。二番に人命。三番に貸しを作るってところだにゃ。わしの国は新参者だし、軍事力が有りすぎるから、これぐらいしたほうが怖がられる事はなくなるにゃろ?」
「たしかにそうだけど……わかったわ。私も協力するわ」
「さすが女王にゃ~!」

 力強い味方を付けたわしはこの場を女王に任せ、ちびっこ天皇にはコソコソと「挨拶するついでに救援物資を貰え」と耳打ちする。

 それからわしは、オクタゴンから徳川の滞在する寺院に走るのであった。
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