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第十七章 日ノ本編其の三 関ケ原その後にゃ~
466 続、救助活動にゃ~
しおりを挟む被災者の重傷者を治したわしは、一目散に瓦礫の町を駆ける。目指すは浜松城。
家族や知り合いを探す被災者の姿を横目に見ながら走り続け、城の形すら留めていない浜松城に着いたら、大きな瓦礫を持ち上げている巨大タヌキ家康の姿と、倒れて呻き声を出している人間の姿があった。
「ご老公~! わしはここの人を治したらいいにゃ~?」
「そうじゃ! 虫の息じゃから、急いでくれ!!」
現場の判断を仰ぐと、わしはさっそく治療にあたる。この侍達は使える人材なので、重傷者は完全に治し、軽症者はその者達によって運ばれて行く。さらに、丁重に死者も……
まるで戦地のような現場はわしの心を削るが、助けられる命がそこにある。へこたれている場合ではない。わしは必死に治し、辺りに倒れていた者達が残りわずかになった頃、玉藻達がやって来た。
「シラタマ。そちらはどういった状況じゃ?」
玉藻の質問に、わしは何百人も治療し、炊き出しの手配も終わった事を説明する。
「ほう……そちも大変だったんじゃな」
「やっぱりそっちもにゃ……」
「ああ。かなり酷い状況じゃった」
「とりあえず、この残っている人を治してから、腹に何か入れようにゃ」
「そうじゃな。皆も疲れておる」
それからわし達は手分けして治療にあたり、怪我人を全員治す。それから土魔法で皆の埃を落とし、水魔法で手を洗い、白い獣肉の豪華な食事を食べる。
被災者には悪いが、リータ達もこの惨状にかなり参っていたようなので、せめてもの配慮。せめて、飛びきり美味しい物を食べて元気を出して欲しい。
リータとメイバイはあまり食が進んでいないので、ガンガン食って腹を満たしたわしと玉藻と家康は、席を外して話し合う。
「南側は、おおかた救助したって事でいいのかにゃ?」
「ああ。約四分の一は帰らずじまいじゃが、かなりの人数を救えたはずじゃ」
玉藻達は、崩れた家を手当たり次第ひっくり返し、多くの要救助者を助けたようだ。基本的に、玉藻、リータ、メイバイで、一軒一軒人を運び出し、コリスとオニヒメで治療。治療が間に合わなくなると、玉藻がコリス達に加わったらしい。
「まぁこっちも似たようなもんにゃ。にゃ?」
「そうじゃ。出遅れたのが悔やまれる。もう少し、人を集めるのが早ければ……」
「ご老公……それはいいっこなしにゃ。まだ浜松の半分しか救助してないんにゃから、悔やむ前に、手を動かそうにゃ」
「そうじゃな……」
家康が項垂れるので、玉藻も暗い顔になる。しかし、わし達には止まっている時間はない。
「もう日が暮れそうじゃが、これからどうする?」
「そうだにゃ~……」
たしか、こういう場合の生存率って、72時間じゃったはず。現在、6時間経過ってところか。それを考えたら、わし達の救助活動はかなり迅速じゃ。重機もいらないし、危険も無視しているからな。
しかし、人手不足は否めない。刻一刻と消えて行く命もあるじゃろう。
「速度は落ちるけど、今日中に埋まっている人は救助してしまおうにゃ。それとご老公……一度、避難所を見て来てくれにゃ。ご老公が行けば、みんにゃ素直に従うにゃろ」
「そうじゃな。すぐに合流する」
家康が走り出すと、わしはリータ達の前に立ち、休憩の終わりを宣言する。
今回の班分けは、わしと玉藻ペア。リータ達とは別行動。最強ペアで、最速の救助に挑む。
思った通り、玉藻は救助活動に慣れて来ており、要救助者の救助が素早い。わしも素早く治療し、完全に治した者には軽傷者の移動をお願いする。
そうしていると、家康が大勢の男と共にやって来た。どうやら軽傷者と死者の移動をしてくれるようだ。わしと玉藻の指示にも、素直に聞くように命令もしてくれていた。
なので、ここでチームシャッフル。家康には玉藻とペアを組んでもらう。家康は回復魔法が得意ではないようなので、要救助者の救助担当。玉藻は温存していた呪力で治療に努めてもらう。
わしはリータ達と合流したら、救助に治療にと、マルチに動く。わしと玉藻ペアからかなり遅れていたが、猫ファミリーの息の合った救助活動で、遅れを取り戻した。
これで、救助活動はさらにスピードアップしたのだが、完全に太陽が落ちてしまった。なので、【大光玉】をふたつ浮かべ、わし側と玉藻側を照らす。
救助場所は照らされているので、玉藻達のスピードは落ちていないようだ。だが、そんな巨大な光を操作し続ける事は、わしの集中力が乱れる。治療に少し支障が出たが、なんとか踏ん張って救助を続ける。
それから三時間……
わし達は浜松をローラー作戦で回り切り、何千人もの人を救助したのであった。
「さて……初動はここまで順調だと思うにゃ」
避難所に急遽建てた会議室で、わしは主要メンバーを前にして語る。
「明日は、行方不明者の捜索にゃ。今日の探し方にゃと、漏れがあるかもしれないからにゃ。ここは、やはりご老公が適任だろうにゃ」
「うむ。任せておけ」
徳川の息の掛かった者は、動ける者が三分の一ほどしか居ないらしいが、貴重な戦力。浜松の危機に、身を粉にして働いてくれるようだ。
「これで浜松はなんとかなるとして、わしと玉藻達は、海の捜索に取り掛かるにゃ」
「かなり流されておるじゃろうな。それに……」
「ヤマタノオロチがにゃ~……とりあえず、明日は無視する予定にゃから、手を出すにゃよ?」
「わかっておる。民の捜索が先じゃ」
会議のほとんどは、家康に丸投げ。元将軍の意向を使ったほうが、スムーズに事が運ぶと思っての判断だ。それに、浜松を一番熟知している人物だ。これ以上に適任者はいない。
そうして会議が終われば、会議室横の飛行機やバス、簡易お風呂場を置いた場所で休む事となる。
飛行機には神職の者が分かれて休み、猫の国組はバス。すでにお風呂に入ったリータ達は休んでいる。玉藻には二号車を、家康には一号車を割り当ててタヌキ耳太っちょおっさんバージョンで寝てもらう。
わしも遅ればせながらお風呂に入っていたら、玉藻が勝手に入って来やがった。なので「にゃ~にゃ~」口喧嘩していたら、家康まで入って来て、本気の喧嘩が勃発し掛けて必死に止めた。
だって、せっかく助けた命が消えそうだったんじゃもん。てか、玉藻もわしに裸を見られるのはよくて、家康はダメって、どゆこと?
家康は太ったおっさんに変化していたからですか。わしはぬいぐるみにしか見えないからですか。タヌキに見えなくてよかったです。
お風呂から上がると軽く晩酌して、各々の寝床に向かう。ちなみに家康はお風呂にあとから入ったので、車に置いてある酒を勝手に飲めと言っておいた。
バスに入ると、今日はリータ達の胸の中で寝るのをやめ、エミリに抱かれる。知らない土地で、一人、懸命に炊き出しをしてくれたのだ。わしは感謝のスリスリをしながら眠りに就くのであった。
翌朝……
リータには叩き起こすように言っておいたので、本当に叩き起こされた。優しく起こしてくれても……それは何度もやったのですか。そうですか。
と、いうわけで、目覚めたわし達は会議室に向かい、ここで朝食と会議。出席者には漏れなく高級肉が振る舞われるので、初めて食べる者はうるさい。だが、家康にひと睨みされて静かになった。
これで会議も無事進むので、わしもモゴモゴと口を出す。今度は礼儀がなっていないと、浜松の者が睨んで来たけど……
そんな折り、わしの首輪型通信魔道具が「にゃ~んにゃ~ん♪」と鳴り出して、一斉に睨まれた。呼び出し音がエリザベスの声なので、わしが鼻歌でも歌っていると思われたようだ。
ひとまず「そんな事してないッス!」と言って、通信に出る。
「誰かにゃ?」
「ウンチョウです」
「お~。大将みずからの出陣なんにゃ~」
「初の緊急救助活動ですからね。どのように動くかの勉強に来ました」
「それで、わしに連絡を入れたって事は……」
「はい。こちらは落ち着いているので、ハママツに移動しようかと案が出てまして……」
「あ、ちょっと待ってにゃ。外に出るにゃ~」
会議中だった事を思い出したわしは、英語で喋っていては邪魔になりそうだったので、一度席を外す。そこでウンチョウとの話し合い。
浜松への応援は、猫の国の者が二十六人と、各国の護衛プラス日ノ本の者が百人以上集まったらしい。
そんな大人数では歩いて向かうにも時間が掛かるので、オクタゴンに止まっているキャットトレインに、乗せられるだけ乗せていいかと聞かれ、救援物資の件も教えてもらった。
その時、ウンチョウ達は暗い時間に出発したにも関わらず、日ノ本は太陽がとっくに昇っていた事を不思議に思って質問して来たので、今度詳しく説明すると言っておいた。だって、時差とか言っても伝わらないんじゃもん。
「にゃるほど……一度そっちに顔を出すから、ちょっと待っててくれにゃ」
「そんな事をすると、時間が掛かるのでは?」
「三ツ鳥居があるから大丈夫にゃ~」
わしの嘘に、ウンチョウは納得したようなので、急いで会議室に戻る。そこで、玉藻とリータ達には一時間以内に戻るから、しばらく家康の指示で動いてもらうようにお願いする。
会議室を出ると、西にダッシュ。人に見えない位置まで離れたら、猫の街役場の屋根に転移。
屋根から飛び降りたら双子王女の職場に顔を出し、日ノ本の被害状況を簡単に説明する。ちょうど女王も居たから、まだ残っている各国の王族にも説明してくれるようだ。
それから他国の救援物資はまた聞きに来るから、早くに届いたならば保管しておくように頼んで、ダッシュで魔道具研究所に走る。
魔道具研究所に着いたらノエミを探すのが面倒だったので、音声拡張魔道具を使って呼び出し、三ツ鳥居の前に移動する。
ふむ。猫の街にある備蓄だけじゃけど、けっこうあるな。浜松だけでも一週間は持ちそうじゃ。そりゃ、三ツ鳥居で運べんわな。人が通るだけで精一杯じゃ。
ウンチョウから救援物資は三ツ鳥居の前に置いて来たと聞いていたので、わし直々に取りに来たというわけだ。
とりあえず全て次元倉庫に入れていたら、ノエミが走って来た。
「あんまり大声で呼ばないでくれる? 恥ずかしいじゃない」
「にゃはは。緊急事態だから仕方なかったにゃ。わしはすぐに立たないといけにゃいから、三ツ鳥居の進捗状況を教えてくれにゃ」
「何か大変らしいわね。わかったわ。いまは……」
どうやら関ヶ原開催中で、六割方三ツ鳥居の補充は終わっていたのだが、王族とウンチョウ達の移動で全て使い切ったとのこと。
なので、いまは一番から補充をし直している最中。全ての補充が終われば、ノエミも日ノ本へ応援に来てくれる手筈になっているようだ。
「女王が手を回してくれてるんにゃ~。有り難いけど、もう必要ないかにゃ? 欲しいのは大工ぐらいにゃし、ここは日ノ本の大工に頑張ってもらうにゃ」
「そう……まぁ私は魔道具研究で忙しいから助かるわ。大変だろうけど、頑張ってね」
「はいにゃ~。あ、そうそう……」
女王への言伝と日ノ本側の補充が済んでいる三ツ鳥居の番号を伝えると、わしは転移……
「……にゃんで見てるにゃ?」
「三ツ鳥居を使うんでしょ? 補充し直さないといけないじゃない? それとも、シラタマ君は、一瞬で遠くに行ける魔法を持ってるのかしら~??」
ノエミがわしをガン見していたから転移魔法をやめて正解のように思えたが、わしがどうやって猫の街に帰って来たか怪しんでいるようだ。それも、確実に、わしが三ツ鳥居と同じ効果のある魔法を持っていると……
「わしは急いでるから行くからにゃ!」
「わ! 消えた……やっぱり転移魔法を持ってたのね! 私にも教えてよ~!!」
わしの姿が見えなくなると、ノエミの遠吠えが響くのであった……
「嫌にゃ」
「まだ居たの!?」
ちょっと素早く動いて隠れただけだったので、ノエミの遠吠えが聞こえていたわしは、耳元で断ってから、もう一度消えるのであったとさ。
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