アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

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第二十ニ章 アメリカ大陸編其の一 アメリカ横断ウルトラ旅行にゃ~

620 ハリケーンにゃ~

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 アメリカ大陸横断三日目……

 戦闘機で東に飛んでいたら、ミズーリ州東部で大きな竜巻と遭遇した。幸い南から北に向かっていたので、着陸してやり過ごす。

「まだ遠いのに、凄い風ですね」
「アレはハリケーンだにゃ」
「シラタマ殿の風魔法と、どっちが大きいニャー?」

 リータと喋っていたらメイバイがトンでもない事を言うので、わしは笑ってしまう。

「プッ……自然現象に勝てるわけないにゃ~。にゃははは。ちにゃみに日ノ本には台風と言って、日本列島を覆うぐらい大きにゃ竜巻があるんにゃ」
「あれより大きいのですか!?」
「そんな所で暮らせないニャー!」
「にゃはは。ちゃんと先人の知恵で乗り越えられるにゃ。家に入って待っていれば、次の日は雲ひとつない晴天にゃ~」

 ハリケーンを見ながら台風講座をしていたら、ハリケーンはゆっくりと北に抜け、風も治まって来たので戦闘機に乗り込む。
 しかし少し進んだ所で、イサベレからハリケーンの通り道に何かいっぱい居ると報告が入り、気になったので南に機首を向けた。

「人間みたいにゃ……」

 戦闘機から飛ばした探知魔法の反応でいち早く気付いたわしがボソッと呟くと、リータは双眼鏡で前方を見てくれた。

「見えました! いっぱい居ますよ!!」
「う、うんにゃ。家にゃんかは……ないにゃ。驚かせないように着陸できる所を探してにゃ~」

 わしの目にも原住民の被害状況が映ったので、皆には着陸ポイントを探させ、少し離れた場所にあった雑木林の裏に降りる。
 そこから走って原住民の元へ向かい、途中でコリスはさっちゃん2に変身。見た目に難のあるメンバーはマントを羽織り、わしはメイバイに抱かれてから進む。

 原住民との接触は、今回もリータとイサベレ担当。違う点は、わしはぬいぐるみになりきってだんまり。マントを羽織った者もそのまま。
 その甲斐あって、誰も驚かせずに念話で情報を聞き出してくれた。

 この原住民は、キカプー族。どうやら昨年からここに越して来たようだが、不幸にもハリケーンが直撃してしまったようだ。
 キカプー族は家畜と一緒に一番頑丈なテントに固まってハリケーンをやり過ごそうとしたらしいが耐え切れず、最後の最後にテントは吹き飛ばされた。
 全員で手を繋いで必死に耐え、ハリケーンが去ってから人数確認したら家畜が少し居なくなっただけで、住人はなんとか全員助かったらしい。しかし、寝泊りするテントが全て無くなり、食糧も吹き飛ばされていたので途方に暮れていたようだ。

「少し待っていてください」

 わしは現状を理解するとリータには離れる旨を伝えてもらい、キカプー族から距離を取って円陣を組むと、コソコソと作戦会議だ。

「わしとしては手助けしてやりたいんにゃけど、みんにゃはどうかにゃ?」
「「「「「賛成にゃ~」」」」」
「じゃ、緊急支援活動を発動するにゃ~」
「「「「「にゃ~~~」」」」」

 満場一致で決まったので、あとはどうやってわしを受け入れさせるかの話し合い。ぶっちゃけこれが一番長かったが、メイバイ案といつもの手のハイブリットで決定。

 キカプー族の元へ戻ると、出来るだけ多くの人に念話を繋いで実行する。

「やあやあ、ここにおわす方を誰と心得る」
「天下の猫王様、シラタマ王ニャー」

 リータとメイバイの口上のあと、わしは二人に高々と持ち上げられた。

「シラタマ王は、被害者のあなた達を助けると仰ってくれました」
「シラタマ王の奇跡、とくとごらんあれニャー」

 二人のセリフが終わったら、わしのセリフ。

「えっと……とりあえず、ごはんでも食べようにゃ。ほいっとにゃ」

 顔の真っ赤なわしは、キカプー族の前にバッファローを二頭。すぐに食べられるパンと干し肉。最後に、空いてるスペースにプールを作って【大水玉】を落とす。
 当然キカプー族は、猫が何か「にゃ~にゃ~」喋っている事に驚いたが、次々と現れる食べ物を見て、驚きが津波となって押し寄せ、フリーズしてしまった。

 ちなみにわしの顔が赤い理由は……

 恥ずかしい! たしかに日ノ本ではノリでやったけど、日ノ本のノリがわからんもんにやっても伝わらんじゃろう。それもわしを印籠みたいに使いやがって……
 これでは猫将軍じゃなくて、猫神様じゃ……ほら! 神様とか言って土下座しとるじゃろ!!

「いいからメシの準備しろにゃ~」
「「「「「はは~」」」」」

 キカプー族は猫神様と拝み倒すので、わしはますます恥ずかしくなるのであったとさ。


 キカプー族が動き出すと、わし達は小会議。議題は、どうやってわしを神の座から引きずり下ろすかだ。

「もういいんじゃないですか?」
「神様効果でコリスちゃんも元の姿になれるニャー」

 リータとメイバイは、諦めが早い。それでもわしは、白猫教の信者を増やしたくないのだ!

「だってにゃ~。わしって怠惰たいだな王じゃにゃい? それにゃのに信仰されると申し訳ないにゃ~」
「だったら普通に働いたらいいじゃない?」
「王様としてちゃんと振る舞えばいいだけニャー」
「猫だから出来ないにゃ~~~」

 どうせ各国の王にはナメられているのだ。いまさら王らしい振る舞いをしても遅い。ていうか、見た目がこれでは、どう振る舞っても王様には見られないんじゃもん!

 わしが涙目でそれらの事を言ってみたら、哀れむような目を向けられて撫でるだけ。どうも、猫耳族のメイバイ以外は、わしの事が王様には見えていなかったようだ。

 ゴメンよ、メイバイ。擁護してもらっても、猫耳族以外からは王様に見えないんじゃ。ゴメンよ……


 わし達がガヤガヤ騒いでいると、キカプー族が料理が出来たと呼びに来たので、酋長しゅうちょうと紹介された半裸の中年男性の席にわしだけ座り、食事会は始まった。
 たいした料理は出していないのだが、パンを食べた者は「こんなにうまい物がこの世にあるのか」と騒いでいる。
 もちろんわしの席でも酋長達が騒いでいたけど、わしは落ち着くまでコーヒーをズズズーとすすっていただけだ。

「もういいかにゃ? もう一度言うけど、わしは猫の国の酋長、シラタマにゃ。神様じゃないからにゃ??」
「はっ! 私はキカプー族で酋長をやっているケネソーと申します!!」
かしこまる必要もないにゃ~」

 酋長と紹介しても、この危機にエサをくれた者を神のように崇めるケネソー。もう仕方がないので、そのまま話を聞く。

「さっき、ここに移り住んだのは一年前とか言ってたにゃろ? 元の地には戻れないのかにゃ?」
「それがですね……」

 ケネソーが言うには、東から驚異が迫っているとシャーマンが預言をしたから移住したとのこと。
 そもそもキカプー族は、シャーマンの言葉は絶対。これほどの被害が出ても、預言の被害よりも小さいと思っているから、戻るという選択肢はないようだ。

「でもにゃ~。そこに家が残っているにゃら、戻ったほうが復興は早いにゃろ?」
「家はありません。たまに移住するので、ティピーテントで生活しているもんで……」
「てことは、全財産飛ばされたんにゃ……」
「はい……ですが、狩りの獣と、残った家畜を食べれば、なんとか冬を越せるでしょう」

 むむむむ……まぁここはそこまで危険な獣は居なそうじゃし、この人達は、そうやって生きて来たのじゃろう。しかし全ての人数は、来年には残らんじゃろうな。よくて半分……

 わしは長考すると、質問を投げ掛ける。

「まだこの地で暮らすにゃ?」
「はあ……竜巻が無ければいい土地ですので……」
「わかったにゃ。わしが家を建ててやるにゃ」
「はい??」
「みんにゃ~。集合にゃ~」

 わしは隣のテーブルに移り、ランチを食べながらモグモグ話し合う。

「みんにゃで北に走って、飛ばされた物を掻き集めてくれにゃ。んで、日がある内に戻ってくれにゃ」
「わかりました。でも、何日も掛かるかもしれませんよ?」
「今日だけでいいにゃ。それでなんとか一年は持つようにするにゃ」

 リータは頷いてくれたが、メイバイは違う意見があるようだ。

「猫の国に移住させてあげたほうがよくないかニャー?」
「家と食糧さえあれば、ウサギ族ほど切羽詰まってないにゃろ。移住させるって事は、この人達の文化を奪うって事にゃ。メイバイはそれでいいと思ってるにゃ?」
「うっ……そう言われたらわからないニャー!」
「ま、たまに様子を見に来て、にっちもさっちもいかなそうにゃら移住を勧めてみようにゃ。それじゃあ、ごはんを食べたら行動開始にゃ~! モグモグ」

 皆もモグモグし終わったら、各々の持ち場へ。リータ達が北に向かって駆けて行くと、わしはケネソーに話を聞きながら土魔法を使って建物を建てる。
 まずは、猫の街に初めて作った大きくて四角いシェルター。もちろんハリケーン対策の地下室も付けた。だが、わしの作った建物が、ハリケーン如きで吹き飛ぶはずがない。なので地下室は、貯蔵庫にするように言っておいた。

 ケネソーは口をパクパクしているが、気にせずもう一棟。こちらは家畜用なので長方形の平屋。
 わしが部屋割りをしてしまうと使い勝手が悪くなりそうなので、改造しやすいようにポールを何個も作って、ロープで木を固定できるようにしておく。
 どちらも窓は大きな引戸にしたから、開けたら十分光は取り込めるだろう。外側にも木の板を嵌めれるようにしたけど、わしの作った引き戸だけでもハリケーンに耐えられるから念の為だ。

 あとは食料。麦やトウモロコシの粉はあまり無いが、使えるかを聞いたら、麦ならば食べていたとのこと。それならば、麦はあるだけ進呈。
 しかし少ないので、獣もプレゼント。小さい獣を一匹ずつ解体するのは面倒なので、10メートルの黒い獣を出して解体。驚いているキカプー族にシェルターの地下に運んでもらい、出来るだけ早く干し肉にするようにと指示を出す。
 地下には【氷玉】を入れておいたから、一年ぐらいは冷蔵庫として使えるはずだから、狩りをして溜めていけば、余裕で冬は越せるだろう。

「こんにゃもんかにゃ?」
「「「「「はは~」」」」」
「あ、井戸ってあるのかにゃ?」
「「「「「はは~」」」」」
「拝んでないで質問に答えてくれにゃ~」

 キカプー族は猫神様と拝み続けるので、作業が遅れるわしであったとさ。
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