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猫歴15年
平行世界2日目その2にゃ~
しおりを挟む大型家電ショップの店長は、わしの注文に驚いて戻って来たが、マジで店内の全商品を2個ずつ買うと言ったらスキップでどっか行った。
「えっと……誰か接客してくんにゃい??」
「「「「「喜んで! ……ああん!?」」」」」
「ケンカしにゃい!!」
店員が信じられないぐらい大量に釣れてしまったので、ジャンケン大会。コリスに乗せてもらっているわしに負けた人が涙ながらに業務に戻るなか、5人残ったからこんなもんでいいや。
ひとまず順路通り歩こうと思ったが、子供たちがウルウルわしを見ていたので、まずはオモチャ売り場に案内してもらった。
「子供が遊べるスペースってあるのかにゃ?」
「こちらでどうぞ~」
店員はマットの敷かれた場所へ連れて行ってくれたので見てみたら、平日の朝だというのにチラホラとお母さんと子供の姿があった。
「う~ん……まぁいいにゃ。みんにゃ~。おいでにゃ~」
子供たちにはオモチャをなんでも5個まで買っていいことを伝えたら、わしへの恨みはどこへその。ゲームは禁止したけど、ゲームのゲの字も知らないのでは必要なかったかもしれない。
子供たちが選び始めたら、大人組から見張りを決める。リータとメイバイ、コリスとオニヒメ、猫兄弟に頼んで、あとは店員に領収書にツケておいてくれとお願い。大量発注してるんだからオモチャぐらい誤差だろう。
それと、リータたちも買ってしまうと思うので、5個までを約束させてわしたちは離れるので……
「残りはついて来てくれにゃ~」
玉藻たちまでオモチャ売り場で遊ぼうとするので、引っ張って買い物に戻るのであったとさ。
とりあえず1階に戻ったら、スマホコーナーを練り歩く。てか、タブレットがいっぱいあるとコソっと言ったら玉藻たちはついて来てくれたのだ。
そこで携帯電話が買えないかと店員に相談してみたら、本体だけなら売れるけど、例えプリペイド式であっても電話番号付きは身分証明書が必要とのこと。
なので外務省の七三メガネに「にゃ~にゃ~」お願いしまくって、世界中で使えるプリペイドシムを買ってもらった。
だって何を言っても規則規則うるさいんじゃもん。論破は無理でも耳に蛸にしてやった。「にゃ~にゃ~」うるさかったんだって。
ただし、携帯電話はこのシムでは使えなかったので、スマホを買うしかない。機種の良し悪しはわしもイマイチわからないので、とりあえず「いっちゃんいいヤツをくれ」と言って用意させる。
台数は5台。これもツケ払いだ。さらに、いま売り場にある全ての機種とタブレットも10台追加しておいたので、猫の国に帰ってから分解しまくってやる。
スマホの準備が終わるまで各階の商品を見て回るのだが、あまりにも商品が多いのでさっちゃんから質問が来た。
「すっごい量ね。日本の人は、みんなここに買いに来るの?」
「にゃはは。そんにゃわけないにゃろ。どの地域でもこれに近い数の商品が揃っているから、どこでも買えるにゃ~」
「うっそ……この建物だけでも誕生祭ぐらいの商品がありそうなのに……」
「こんにゃの序の口にゃ。その気ににゃったら家から一歩も出なくても、どんな商品でも届けてくれるにゃ~」
「ありえない……」
「ネットショッピングと言ってにゃ……」
さっちゃんにイロイロ説明してみたけど、脳の容量不足でついていけない模様。テレビを見付けたら走って行った。
「うわ~。色鮮やかなお花……これ! これを買ってちょうだい!!」
さっちゃんが御所望なのは、100インチの8Kテレビ。さっちゃんだけでなく、全員デモ画面に釘付けになっている。わしもビックリの映像だけど、わしまで驚いてしまうと話にならないので表情はとぼけたままだ。
「いちおう聞くけど、用途はわかっているにゃ??」
「それぐらいわかっているわよ。観賞用でしょ?」
「違うにゃ~。隣の映像が本当の用途にゃ~」
「「「「「うわ~~~」」」」」
隣のテレビには、SF映画の大迫力の戦闘シーンが映し出されていたので、皆は一気に引き込まれた。
「これは演劇の進化版にゃ。映画と言って、庶民の娯楽のひとつにゃ~」
わしが説明してやっているのに、皆は映画に夢中で聞いているかわからない。日本生まれのベティまで、大迫力のCGに見入っている。
なのでわしは、店員を連れてお買い物。いっちゃんいいテレビと中間辺りのテレビ、あと手頃なサイズのテレビを10台追加注文。
ついでに、レコーダーも必要なので似たような感じで各10台の追加。さらに、ポータブルDVDプレイヤーも各10台追加しておいた。このうち何台かはお持ち帰り用だ。
「そろそろ次に行くにゃよ~?」
「「「「「いまいいところなの~」」」」」
「そんにゃもん、帰ってから見たらいいにゃ~」
映画に夢中な皆はまったく動こうとしないので、店員にいま流している映画のブルーレイディスクを探しに走らせて、皆を引き離すわしであった。
それからは適当に進み、気になる家電は10台ずつ追加して歩いていたら、調理コーナーに入った。
「うわっ! このフードプロセッサーいいわね。あのミキサーも高性能!?」
「猫さん! これとこれも買ってください!!」
すると、我が猫ファミリーお抱え料理人のベティとエミリがうるさくなってしまった。
「別にいいんにゃけど、ほとんど魔法で解決できると思うんにゃけど……」
「「ホンマや!?」」
勢い余って微妙な物を買おうとしていた2人には、わしからプレゼン。
「さあ奥さん。この電子レンジにゃんていかがかにゃ~? オニギリにゃんて、物の1分であっつあつにゃ。さらにオーブン機能までついていますにゃ~」
「「買った!!」」
「続きましては、この電気圧力鍋にゃんかどうかにゃ~? 今まで時間の掛かっていた煮込み料理が、物の30分で完成しますにゃ~」
「「買った!!」」
「そちたちは何をやっておるんじゃ……」
ベティとエミリのノリがよすぎるからちょっとセールスが楽しくなったわしであったが、玉藻が冷めた目で見ていたので、2人の相手は店員に丸投げ。わしは玉藻とさっちゃんを落としに掛かる。
「この電気釜があれば、ごはんがふっくらモチモチ美味しく食べれるんにゃよ~? こっちのトースターにゃんか、冷めたパンがサックサクのモッチモチになるんにゃよ~??」
「「買った!!」」
玉藻とさっちゃんも陥落。わしのセールストークに感動した店員は、わしのスカウト。うちの世界の者だったら、なんでも買うに決まっておろうが……
店員のスカウトを押し返していたら店長が走って来たので、とりあえずの概算を聞いてみたら鬼高い。
ここにわしが買い足した物が加わってさらにお高くなるが、猫の国の発展に役立つ物だ。金塊の換金が終わったら、ドーーーンッ!と払ってやる。
「あ、ポイントカードって作れないかにゃ?」
「住所は……了解! お作りしましょう!!」
いや、ちょっとケチ臭いことを言って、店長とカウンターに向かうのであったとさ。
ポイントカード発行は住所も電話番号もなくても作れたので何故かと聞くと、わしのサインが欲しかったとのこと。これをお店の目立つ所に張って、猫御用達とか宣伝に使うらしい……ちゃっかりしてやがる。
ポイントの使い方は、商品を適当に区切って支払いに使ってくれるという話なので、その差額が支払いになるから至れり尽くせり。ただし、商品の受け取りは時間が掛かるので、また来店しないといけない。
まぁ最初からそうなると思っていたので、快く了承して買い物に戻るわしであった。
欲しい物を買い漁り、ベティたちもいらない物を売り付けられ、消耗品も大量発注してオモチャ売り場に戻ったら、コリスにかじられた。いちおうリータたちにお弁当を預けていたけど足りなかったみたいだ。
わしたちは技術の宝庫を見てお腹いっぱい。お昼を大きく回っていても、まったく空腹感はない。でも、コリスに追加の串焼きを出したら全員に取られた。
それ、わしの分なんじゃけど……
テレビクルーも店員もお腹ペコペコらしいので、高級串焼きの支給。しかしこれは繋ぎなので、上の階にある食堂街に移動した。
「みんにゃ~。にゃに食べたいにゃ~??」
「「「「「なにこれ~~~!!」」」」」
ごはんを食べに来たのに、皆は展示品の食品サンプルに興味津々。ガラスに張り付いて美味しそうとか言っている。
「それは食べられないからにゃ~?」
「「「「「ええぇぇ!?」」」」」
「えっと……店員さん。ここに決めるから、食品サンプルをちょっと貸してくれにゃ~」
「やった~~~!!」
このままでは嘘つき扱いされそうなので、もうこのファミレスみたいなお店に決定。めっちゃ喜んでいる女性店員に案内してもらい、全員席に着いたらメニューを見せてみたけど、なかなか決まらない。写真だけでも美味しいんだって。
なので、全品一品ずつ頼み、子供用のお子様ランチも追加。こんなに食べれるのかと驚かれたが、人数がいるから大丈夫と言っておいた。
「あ、スタッフのみにゃさんの分はないからにゃ? 自分たちで注文して支払いも別だからにゃ??」
「「「「「マジで??」」」」」
テレビクルーは奢ってもらおうとしてやがった。
「「「「「料理が消えて行く……」」」」」
いや。絶対に余ると思っていたらしく、残り物を平らげてくれようとしていたみたいだ。でも、コリスの頬袋に吸い込まれて行くので、急いで注文していた。
基本的にわしたちは、目の前に来た料理を一口食べて気に入らなかったらコリスに回していたら、お子様ランチが届いたのでこれだけは確保。わしは子供たちのテーブルで見張る。
そうして美味しく食べる子供たちの感想を聞いたり写真を撮ったりわし用に確保していたセットをモグモグしていたら、ベティがわしの隣にやって来た。
「なんでファミレスなのよ。もっと美味しい店に連れて行ってよ~」
「いや、けっこう美味しくにゃい?」
「これならあたしの料理のほうが美味しいに決まってるでしょ!」
「そうにゃけど、値段を見てみろにゃ~」
「値段?? ……え? やっす。この値段でこのクオリティは凄いわね……」
ベティの苦情にメニューを再び見せたら、材料費がどうのこうの言ってる。ベティが前世で死んだ時はバブル期だったのだから、この値段設定は信じられないのだろう。
そんなベティと話をしながら食事をしていたら、頼んだメニューはデザートに突入。それと同時に食品サンプルが運ばれて来たので、わしは焦る。
「コリス! それは食べ物じゃないにゃ!!」
「え~? おいしかったよ~??」
「そんにゃわけにゃいから! ペッ!しにゃさい!!」
残念ながら時すでに遅し。コリスは食品サンプルを食べてしまったのであっ……
「あ、ホントだ。かたいや」
いや、頬袋に入れてあとから食べようとしていたので、わりと余裕でセーフ。コリスは口に手を突っ込んで食品サンプルをテーブルに並べるのであったとさ。
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