35 / 43
猫歴15年
平行世界26と27日目にゃ~
しおりを挟むフードコートで大量の食事をしていたら、ベティたちの顔を見てリータたちも化粧をしたいと言い出したので、ララのメイク講座が始まった。
ちなみにミニ玉藻は分身から戻ったら化粧が落ちるらしく、ノルンとなんか喋ってる。おそらくテレビクルーがそのツーショットをめっちゃ撮ってくれるし、アダルトバージョンも化粧ができるから二度美味しいので、やめられないのだろう。
「どうですか!」
「美人になったニャー?」
「シラタマちゃん。凄くない??」
「綺麗にゃ。綺麗にゃけど、もうちょっとナチュラルにできないかにゃ?」
「「「ララちゃ~ん!」」」
「まったくあなたは、いつになったら化粧のよさがわかるのよ。あの時も……」
バッチリメイクのリータ、メイバイ、さっちゃんが詰め寄って来たから好みを言ったのに、ララはグチグチ。確かに昔、ララのバッチリメイクをスルーしたことがあるけど、まだ根に持っていたのか……
皆は化粧に夢中になっているので、わしは子供のお世話。今日買ってもらったオモチャの話を聞いてあげて、ナチュラルメイクになったリータたちも褒めてから、商業施設をあとにするので……
「魔法……」
「あ、覚えてにゃす。覚えてにゃす。駐車場で見せるにゃ~」
フードコートでこき使ったテレビクルーに、適当な魔法を見せてからバスに乗り込むのでった。
本日の宿、お高いホテルに着いたけど、ララは今日も帰る素振りを見せない。最上階のスウィートルームは映えるらしい……
「明日、東京に戻るんにゃけど……」
「もちろんついて行くわよ?」
「ジュマル君の勉強を見てやれにゃ~」
ララのストーキングは継続。今日もララはわしたちの団欒を邪魔して、動画撮影に励むのであったとさ。
平行世界26日目は……
「「「「「うわ~。おっきいにゃ~」」」」」
東京に戻るべく、飛行場にやって来た。皆は大きな窓に張り付いて、飛び立つ飛行機を夢中で見ている。
ちなみに、搭乗口ではわしたちが手ぶらだったので、何度も金属探知機を潜らされた。皆は何をされていたか気付いていないから、指輪やネックレスの金属が反応する度にピンポンと鳴るから楽しそうにしていたが、わしは文句を言いまくった。
「だから~。わしがみんにゃの荷物持ってるんにゃ~。刀も鉄砲も持ってるけど、機内で出さないから通してにゃ~」
「通せるわけないでしょ!」
揉めたのは完全にわしのせいだが、外務省の七三メガネがゴニョゴニョ言ってくれたから、なんとか搭乗口はクリアしたのだ。
「それにしても、シラタマちゃんの飛行機よりずいぶん大きいのね。あんなの、どうやって飛ばしているの?」
わしが先程のやり取りをイライラしていたら、さっちゃんの質問が来たので相手してあげる。
「ジェットエンジンって言ってにゃ。めちゃくちゃ火力のある機械を積んでるから、空を飛ぶことができるんにゃ」
「言ってる意味はわからないけど……これは買ってくれるのよね?」
「無理に決まってるにゃろ~」
「これも高いの?」
「高い云々の前に、うちの世界では危険すぎるんにゃ~」
さっちゃんはやっぱり飛行機を御所望なので、危険性の説明。
わしが飛行機を飛ばせられるのは、強いから。もしも一般人が操縦していたら魔法が使える鳥、たった一羽に墜落させられて搭乗員が全員死んでしまうから、あの強欲な女王でも諦めるしかなかったのだ。
「玉藻も撃ち落されたって言ってたよにゃ?」
「うむ。妾1人だったからよかったが、10人も乗っていたら何人かは救えなかったじゃろうな」
「にゃ~? わしたちしか乗れないんにゃ~」
「むう……」
女王や玉藻を使っても、さっちゃんは飛行機を諦め切れない模様。その話を聞いていたテレビクルーが質問して来たので、そっちにも怖い逸話。
わしなんて、10回以上も鳥に飛行機を落とされているし、その場合の搭乗員は体が頑丈な猫パーティだから生き残れたと聞かせてあげた。テレビクルーは回数の時点でわしを化け物みたいに見て来たけど、化け物で合ってるよ?
わしがテレビクルーのインタビューを受けていたら、やっとこさ飛行機の搭乗。皆はさほど気になっていなかったが、この待ち時間が嫌いなのでわしは新幹線派だ。
そうして乗り込んだ飛行機の座席はファーストクラス。皆は席に座ったら、イスに付いたボタンを押しまくっている。
「なにコレ? ベッドになったよ!?」
当然さっちゃんも興味津々なので、セレブなのに大声を出しているから注意しに行く。
「これはお金持ち用の席にゃ。静かにしないとマナーがなってないと思われるにゃよ?」
「貸し切りなんだらいいじゃない。それよりこの飛行機も買ってよ~」
「だから手持ちがないんにゃ~」
さっちゃんはまだ諦めていなかったので、値段を調べて見せてあげたら、また目眩。それから備え付けのテレビをつけてイヤホンを耳に入れてポチポチしたら、さっちゃんの目をそっと瞑らせて席を離れるわしであった。
飛行機の移動は、わしたちの世界でもやったことがあるので、皆は外も見ずにセレブなイスで遊び、飽きたら映画鑑賞。ジュマルはイスに座った瞬間に寝てた。長距離移動する時は、いつもこうらしい。
わしはファーストクラスなんて初めて乗ったので、キャビンアテンダントを何度も呼んでシャンパンやキャビアなんかも頼んでいたから、ララに貧乏性とか言われてしまった。
ベティもわしの派閥。わしなんかよりもっと色々頼んでるんだから、ララはあっち行ってくれ。「イエーイ!」って動画も撮るな。
ファーストクラスでテレビクルーかってくらい写真や動画を撮りまくるララを無視して寝ていたら、東京の空港に到着。
この世界の滞在期間は残り少ないが、今日は早くにホテルに入って、わしはノルンにも手伝ってもらいながら外務省に集めさせていた資料に目を通す。皆はゲームやアニメだ。
「なになに~?」
「読めるけど、なにする物かサッパリわからんな」
「あ、このメーカーは、あたしは押さえて欲しいわね」
さっちゃんと玉藻とベティは興味があるので、わしが読んでいる資料を覗き込んで邪魔だ。
「みんにゃ見てわからないにゃら、邪魔するにゃ~」
この資料は、各企業が平行世界の物と交換にくれる技術のリスト。企業名と技術の数と品名、あと欲しい物しか載っていないのではノルン以外役に立ちそうにない。
「あたしは力になれるわよ?」
「調理器具ばっかり選ぶつもりにゃろ?」
「そりゃそうよ。コンピューターとか言われてもわからないもん」
「もういいにゃ。欲しい物にマーカー引いてくれにゃ」
「やったにゃ~!」
ベティはこっちの世界出身だから役に立つと言い張るので、いちおう仕事を与える。だからって、ベティが欲しい物を全て買うつもりはない。
「私は新幹線と車と飛行機の設計図が欲しいな~?」
「妾は電気に関わる物は全て欲しいぞ」
「いま見てるんにゃから黙ってろにゃ~。あと、さっちゃんのは難しいって言ってるにゃろ~」
「にゃんでにゃ~!」
「玉藻、さっちゃんを黙らせてくれにゃ」
うるさいさっちゃんは、玉藻の九尾の尻尾ロック。でも、さっちゃんはモフモフ言って嬉しそうだな。
静かになったら、わしはノルンの意見を聞きながら真剣に選び、さっちゃんも落ち着いたら玉藻と一緒に、わしが丸を付けた資料を読んで丸を付け足す。
「マジで邪魔だからやめてくんにゃい?」
「「ごめんにゃさい……」」
わしだって、怒る時は怒る。とぼけた顔をしていてわかりづらいだろうが、声質で気付いた2人は謝るのであった。
ひとまず2人がいらんことしなくなったので仕事は捗るが、お腹がすいたらみんなとモグモグ。たまにララが茶々を入れに来たが、わしが真面目なことをしているので、お茶の差し入れだけで去って行った。
さすがは元女房。わしはとぼけた顔をしているのに、纏っている空気から察してくれた。リータとメイバイは、しばらく撫でてからどっか行った。まだララの域には達していないようだ。
この日は、深夜までわしとノルンは資料に目を通し、疲れて眠るのであった。ベティは……途中で飽きてどっか行っていたけど……
平行世界27日目は、わしとノルンだけ別行動。リータたちは、ララに東京観光に連れ出してもらった。
わしとノルンがリムジンに揺られてやって来た場所は、とある大学の講堂。そこには千人を超える企業人や大学関係者が集まっていた。
「え~。まずは、わしたちの世界のために、これほどの技術を提供してくれることを感謝するにゃ。ありがとにゃ~」
壇上に登ったわしとノルンは、開始の前にペコリとお辞儀。企業人も大学関係者も拍手で迎え入れてくれた。
「それじゃあ、さっそく発表しにゃす。名前を呼ばれた会社から、壇上に来てくれにゃ」
まずは、多くの技術をくれた企業から。ハードディスクやUSBメモリを受け取りながら、欲しい平行世界の物を渡せる物は渡して行く。大きすぎる生き物なんかは、あとからわし直々に届ける予定だ。
わしから物を直接受け取った人は、ガッツポーズ。使えるかどうかわからない物を受け取ってよくそんなに喜べるなとわしは思っていたが、絶対に口には出さない。
使えるとしたら、大学関係者に渡したマチュピチュやイースター島、ナスカの地上絵、各地の先住民や絶滅した生き物等の、第三世界で不確かな遺跡の資料や生き物のDNAぐらいだろう。
そもそも渡した物と貰った技術との釣り合いが取れていないから、わしは笑いを堪えるのに必死だ。
いちおう貰った技術は、全てノートパソコンに繋いでチェック。ノルンでは難しいと思っていたが、素早く飛んで複数のパソコンを使いこなしている。
でも、エネルギーの消費が激しいのか、度々わしの魔力を奪いに来て、食事のシーンをスマホで撮られていた。わしの人差し指をベロンベロン舐めるんだもの。
技術の受け取りを続けていたら、もうお昼。今日のランチメニューは、全てわしのおごりだ。
出席者には、高級肉をふんだんに使ったお弁当と、白メガロドンの串焼きを振る舞ったので、阿鼻叫喚が凄い。「これだけでも来たかいがあった」とか泣いてる人もいる。
そうこうしていたら技術の数量の多かった会社との交換は終わったが、これだけではわしは終われない。
「みんにゃ。こんなにありがとにゃ。続きましては、ちょっと欲しい技術の会社と交渉したいにゃ。渡せる物のランクは下がるけど、よかったら交換したいにゃ~」
せっかくこれだけ集まっているのだ。提出された技術を根刮ぎ奪いたい。かといって、わしから渡せる物がたいした物はないのであまり欲しいアピールはせずにお願いしてみたら、残りの全員オッケー。
先に配ったエサが効いたのだろう。串焼きを欲する人が多いもん。先に技術を交換した人も、「どうして食べ物にしなかったんだ」とか後悔してるし……
「じゃあ、調理済みの物は残り少ないから、白メガロドンの肉を1キロ進呈するにゃ~」
「「「「「うおおぉぉ~!!」」」」」
というわけで、王族だけで食べていたので余りに余っている全長500メートルもあった白いサメを切り分け、氷魔法と土魔法で包んだ物を渡して、技術を全て奪い取ったわしであったとさ。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。
もる
ファンタジー
剣を扱う職に就こうと田舎から出て来た14歳の少年ユカタは兵役に志願するも断られ、冒険者になろうとするも、15歳の成人になるまでとお預けを食らってしまう。路頭に迷うユカタは生きる為に知恵を絞る。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜
仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。
森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。
その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。
これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語
今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ!
競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。
まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる