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01 勇者召喚

001

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 魔王城の一室……

 そこに魔王直属配下、四天王とリビングアーマーが集められた。皆が円卓に着くと、会議が執り行われる。


「魔王様。魔王様が勇者を召喚するなんて馬鹿げているだ。どうか考え直してくれだ~!」

 四天王の一人、牛のような立派な角を持つ巨大な男、ミヒェルが反対の声をあげる。

「そうだ! 勇者など召喚して、魔王様が危険な目に会う可能性だってあるんだぞ」

 四天王の一人、ライオンのように立派なたてがみを持つ大きな男、レオンも反対する。

「そうは言っても、このままでは魔界が侵略されてしまう。魔王様だって、危険は承知で召喚しようとしているのだ」

 四天王の一人、蛇のような目を持つ細身の男、スベンが二人に言い聞かす。

 レオンは事態が緊急を要する事はわかっているが、それでも魔王の安全を考え、隣に座る少女に問い掛ける。

「魔王様の護衛をしているフリーデも、危険だと思うだろ?」
「………」

 四天王の一人、卵の殻を被ったフリーデと呼ばれた少女は、腕を組んで考えている。

「これ、絶対寝てますね」
「んだ。お昼寝の時間には早いけど、座ってしまったのが悪かっただ」

 あ、どうやら考えているのではなく、寝ているだけだったみたいだ。四天王の三人のおっさんは大きなため息を吐き、フリーデを見つめる。

 そんな中、リビングアーマーが口を開く。

「ちょっと~。もう決まった事なんだし、ウダウダ言ってんじゃないわよ」
「その声、なんとかならんか? 見た目とギャップが激し過ぎる」
「あたしの声は関係ないでしょ!」

 禍々しい鎧の騎士テレージアは、お転婆少女が如く声が高い。口調もそれに見合って軽いので、四天王の三人は困惑する事態となっている。

 リビングアーマーがぷりぷりしだしたので、黙って聞いていた魔王は助け船を出す。

「テレージアさんの言う通り、多数決で決まった事です」

 魔王……魔王とは名ばかりの、羊の角が頭にある、美しくて華奢な女性が、決定を告げる。

「「しかし……」」
「そんなに心配しなくとも大丈夫ですよ。確かに千年以上昔は、勇者と魔王は何度も矛を交えましたが、千年前に現れた勇者様は、当代の魔王様を倒した後、和解し、娘と結婚して魔王を継いだのですからね」
「だども、勇者だ~。魔王と聞いたら、攻撃して来るかもしれないだ~」
「私には少なからず勇者様の血が流れているのですから、大丈夫ですよ!」
「それでも……」
「もう! 決定したんだし、魔王もやる気なんだから、ちゃっちゃとやるわよ!!」
「そうですね。皆さん。準備しましょう!」


 魔王の号令で四天王の三人は渋々動き、円卓と椅子、フリーデを部屋の端に移動する。邪魔な物が無くなると、テレージアがガチャガチャと鎧を鳴らし、魔法陣の書かれた大きな絨毯を広げる。
 準備が整うと皆は魔法陣を中心に、囲むように立つ。ちなみにフリーデは起きなかったので、椅子に座ったままだ。



「それでは……始めます」

 魔王は開始の言葉を告げると、皆の目を見てから呪文を唱える。魔王城の一室には、歌のような呪文が響き、皆、うっとりと魔王を見つめる。
 十分ほど魔王の歌声が響くと詠唱が終わりに近付いたのか、魔法陣の幾何学模様が青い輝きを放つ。その光が大きくなり、詠唱が終わりを迎えると、魔王は叫ぶ。

でよ勇者。そして我が魔族を救いたまえ~~~!」

 魔王の叫びに応え、光は更に大きくなり、部屋からあふれる。その瞬間……

「キャーーー!」

 魔王の悲鳴があがる。

「「「魔王様!!」」」
「魔王!」
「ん、んん~……うるさい~……」

 皆、魔王を心配する声をあげるが、約一名、おかしな声を出して目をこすっている。
 青い光が収まると、ようやく現状が確認できるが、その現状を見た皆は固まる事となった。

「い、いや……やめてくださ…い……」
「ちゅ~~~」

 何故、皆が固まったのかと言うと、倒れた魔王の上に全裸の男が覆い被さり、尖らした唇を魔王に近付けていたからだ。


 こうして魔王は男を召喚したものの、唇を奪われるかどうかの最大のピンチを迎えるのであった。


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本日四話、明日は五話、更新します。
「アイムキャット」の連載もありますが、出来るだけ毎日更新がんばります!
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