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01 勇者召喚
011
しおりを挟む魔都の観光を終わらせた勇者と魔王は、魔王城と呼ばれるログハウスに戻る。そこで魔王は料理をすると言うので、勇者はわくわくして待つ。
最愛の妹ではないが、最愛の妹と同じ顔を持つ魔王の料理は、初めての妹の料理と言っても過言ではない。……と、勇者は思っているみたいだ。喜んでいるのだから、放っておいてあげよう。
小一時間ほど待つと魔王からもうすぐできる旨が伝えられ、テレージアとフリーデを呼んで来て欲しいと頼まれる。
勇者はお兄ちゃんと呼ばれると、ふたつ返事で了承し、二人の部屋に向かう。
「確か、サシャの部屋の隣がフリーデだったよな」
勇者はコンコンとノックをするが、フリーデの反応が無いので、何度もノックをする。それでも返事が無いので、ドアを開けて中に入る。
「フリーデ、フリーデ~。ごはんだぞ~」
「う~ん……もう三杯おかわり~」
「いまのは返事か? ……揺すっても起きないし、仕方ない」
勇者はまったく起きる気配のないフリーデに業を煮やし、抱き抱えてリビングに連れて行く。そして、フリーデを椅子に座らせると、次はテレージアを呼びに行く。
「フリーデの隣がテレージアだったよな。お~い」
勇者はノックを繰り返すが、こちらも返事が無い。なので、寝ているのかと思い、ドアを開ける。すると、脱ぎ捨てられた鎧が目に入る。
「うわ! テレージアがバラバラ死体になってる!!」
リビングアーマー殺害現場を目撃した勇者は驚きの声を出し、慌てて鎧を掻き集める。
「お、おい! 生きてるのか!?」
勇者は焦りながら生死を確認するが、テレージアは動く気配がない。そうして何度も声を掛けていると、テレージアの声が聞こえる。
「ん、んん~……うるさ~い! 誰が騒いでいるのよ~」
「テレージア!?」
勇者は声がする方向に目を移す。そこにはベッドがあり、布団が不自然に盛り上がっていた。
「生きているのか?」
「はあ? いったい何を言っているのよ。ふぁ~」
勇者の質問に答えたテレージアは、布団から這い出し、ふわふわと浮き上がる。それに釣られて、ふわふわと浮き上がるモノが布団の中から、次々に現れる。
「よ、妖精??」
「「「「「ふぁ~」」」」」
ふわふわと浮き上がるモノの正体は、二十人の妖精であった。皆、パジャマを着て、眠そうに目をこすっている。
「……え?」
「「「「「きゃ~~~! エッチ~~~!!」」」」」
「あ、いや、すま~~~ん!」
勇者、パニックだ。妖精は全員パジャマを着ていたのにも関わらず、変態扱いされて逃げ出すように部屋を出る。
すると、声を聞きつけた魔王が慌てて現れた。
「お兄ちゃん! テレージアさんに、何をしたのですか!!」
「いや、俺も何がなんだか……。リビングアーマーがバラバラ死体になっていたと思ったら、ベッドから妖精がウヨウヨ出て来て……」
「あ……見たのですか?」
「どれをだ? バラバラ死体か? 妖精か??」
「見たのですね……」
「そんなに悪い事をしたのか!?」
勇者は魔王にジト目で見られ、さらに混乱する事となった。そんな中、テレージアの部屋のドアが開いた。
「もういいわよ」
テレージアが諦めたような口調で、蝶のような羽を、パタパタと羽ばたかせて現れた。
「お前がリビングアーマーの正体だったのか?」
「ええ。妖精のみんなで入って、鎧を動かしていたのよ」
「なんでそんな事を……」
「そりゃ、妖精が魔王と仲良くしていたら変でしょ? あんたが敵対するかも知れないから、念の為、隠れていたのよ。あたし達は……」
どうやらテレージア妖精達は、森の住人であったが人族に追い出され、魔王の庇護化に入ったようだ。
勇者召喚の際に隠れていたのは、もしも勇者が魔王に敵対した場合、逃げ出して、終わった後に勇者と合流し、守ってもらう算段だったとのこと。妖精なのに、見事なコウモリっぷりだ。
「えっと……サシャは、それでよかったのか?」
「私は恥ずかしいと聞いていただけだったのですが……」
テレージアのぶっちゃけ話は、魔王も初耳だったらしい……
「あ! 結局、魔族の側に居るんだから、終わった話よ」
「サシャ達が負けたら、こいつ、人族の側に付くんじゃないか?」
「有り得ますね」
「それは絶対ないわ! 良い人が居るのは知ってるけど、いまはそんな気分じゃないもん!!」
「人族に何かされたのか?」
「……言いたく無いわ」
テレージアはさっきまでと打って変わって、テンションが下がる。だが、すぐに復活して明るく話す。
「自己紹介がまだだったわね。あたしは妖精女王のテレージアよ。これからは、重い鎧は脱ぎ捨てるから、よろしくね!」
「あ、ああ」
「それじゃあ、ごはん食べよ!」
テレージアは妖精を引き連れてリビングに移動する。勇者と魔王もその後を追うが、リビングに到着する前に、バタバタと慌てて飛ぶ妖精の群れに遭遇する。
「なんか凄い顔で逃げて行ったぞ?」
「どうしたのでしょう?」
二人は不思議に思いながらもリビングに足を踏み入れ、勇者だけは、妖精達が逃げ出した理由を知る事となった。
「ぐほっ……な、なんだこのにおいは!!」
勇者は鼻に飛び込んで来た悪臭に、フラフラと膝を突く。するとそこには、床に倒れているテレージアの姿があった。
「テ、テレージア! 何があったんだ!?」
「ま、魔王に……ガク……」
「テレージア~~~!」
勇者は苦しむテレージアを手に乗せ、看病しようとしたが、テレージアはダイイングメッセージを口にして昏倒するのであった。
犯人扱いされた当の魔王はと言うと……
「テレージアさん! しっかりしてください!!」
心配する声をあげる。その姿を見た勇者は、テレージア殺妖精事件の謎に頭を悩ませるのであった。
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