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03 潜入
026
しおりを挟む勇者は暴れる次兄を肩に担ぐと、門に向かって走り出す。すると、勇者を取り囲んでいた兵士や騎士は救出の為に追い掛ける事となった。
勇者が走るとすぐに、姫騎士を門から追うように命令されていた兵士を視界に入れ、並んで走る。そして、追い抜き様に声を掛ける。
「よう! 姫騎士を追っていていいのか?」
「「「「「殿下!?」」」」」
「お前達! 俺様を助けろ~~~!」
「「「「「は、はい!」」」」」
勇者に担がれた次兄が叫んで助けを求めると、兵士は返事をして勇者を追い掛ける。こうして全ての兵士に追われる事となった勇者は門を出て、魔王達が逃げた方向とは逆に走り続けるのであった。
一方その頃魔王は……
「はぁはぁ」
町中を息を切らして走っていた。それを心配した姫騎士が声を掛ける。
「大丈夫か?」
「なんとか……」
「疲れたなら言ってくれ」
「ありがとうございます」
遅れて走る二人を見た少女達のリーダーは、怒った声を出す。
「もっと速く走りなさい! 追い付かれるわよ!!」
「……すみません」
「助けてもらった者に、そんな事を言ってやるな」
「オレ達ならあれぐらいのピンチ、乗り越えられたわよ。それより、追っ手が迫っているんだから急ぎなさい!」
「はぁはぁ……ちょっと休憩をくれませんか?」
「急げって行ってるでしょ! もう、置いて行く!!」
「待て! 私が担ぐ。それでいいだろ?」
「ダメよ! この先何があるかわからないんだからね」
「でしたら……テレージアさん。追っ手がいるか見てくれませんか?」
魔王はショルダーバッグを開けて、テレージアに問い掛ける。するとテレージアは、待ってましたと、シュパパーと空を飛ぶ。
「妖精女王、参上! あんたの願い、あたしがズバッと叶えてあげるわよ!!」
「「妖精女王!?」」
場の空気を読まずに現れたテレージアは、変な口上を述べて決めポーズ。驚いた皆は、足を止めざるを得なかった。
魔王は休めるからいいかとテレージアにツッコまず、追っている者が居ないか、空から確認してもらって報告を受ける。
「一通り見たけど、追って来る人は居ないわね。なんか逆に走って行く人が多かったし、勇者が何かしたんじゃない?」
「「勇者!?」」
「そうですか。これなら歩いても大丈夫じゃないですか?」
魔王はどうしても歩きたいようなので、説得をするが、皆はそんな事よりもツッコまなくてはいけない事があるようだ。
「「まず、説明しろ!!」」
姫騎士とリーダーの少女が息ピッタリに声を出すものだから、魔王は休憩がてらに説明をする。そうして簡単な説明を聞いた姫騎士は口を開く。
「妖精女王かどうかはわからないが、勇者は我が国で召喚したなんて聞いていない。あの男が嘘を言っているのではないのか?」
「あ~……お兄ちゃんは強いから、テレージアさんが勘違いしているのかも知れません」
「なに言ってるのよ! 魔王のあんたが召喚した……ムグッ」
魔王は信じてもらえなさそうだから、ひとまず話を惚けようとしたが、テレージアがぶっちゃけるので口を塞ぎ、胸に押し込む。
「お前が魔王?」
「魔王が勇者を召喚した?」
「「「「「あははははは」」」」」
皆、大爆笑。魔王は言いたい事がわかったのか、苦笑いで応える。しかし、笑いが長過ぎたので、話を変える為に自己紹介を始める。どうやら、名前も偽名で通すみたいだ。
「えっと……私はサシャと申します。この子は妖精女王のテレージアさん。残った男の人は、お兄ちゃんです」
「お兄ちゃん? 兄を死地に残して来たのか……」
「あ、お気になさらず。死ぬ事はないので大丈夫です」
「そうなのか? 逃げ切ると信じているのだな」
「はい!」
魔王は勇者が頑丈だからと言う意味で言ったのだか、姫騎士には伝わっていないので、いい返事で誤魔化したみたいだ。
「私は姫騎士こと、帝国皇女、クリスティアーネだ」
「ちょ、悠長に自己紹介なんてしてるんじゃないわよ!」
魔王の自己紹介を聞いて姫騎士が返すと、少女達のリーダーが止めに入る。すると、姫騎士はリーダーの顔をまじまじと見て、何かに気付いたようだ。
「そういえば、盗賊少女の名を聞いていなかったな」
「だから……もう! オレはコリンナ。自己紹介したんだから、これでいいでしょ。さっさと行くわよ!」
コリンナは捲し立てて喋り終わると歩き出す。それに続いて三人の少女も歩き出したので、姫騎士、テレージアを肩に乗せた魔王と続くのであった。
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