43 / 187
05 戦準備
042
しおりを挟むドアーフに対して武器の交渉をしていた魔王だったが、馬車の発注をして帰って来たので担当を外される。なので、姫騎士が交渉に向かった。
「どうだ? 作れないか?」
「そうは言っても、この二百年、武器なんて作って来なかったからな~。作り方を知っている奴がいないんだ」
「そんな事を言っている場合しゃないぞ。それがないと戦えないんだ!」
「しかしな~……」
ドアーフは何か気付いたのか、姫騎士をマジマジと見る。
「あんた人族か!?」
「ああ。そうだ」
「なるほどな。魔王様が剣なんて作れと、なんで言うのかがわかった。野蛮な人族に唆されたわけか」
「野蛮? どう言う事だ!」
「俺らの先祖は、人族に作れと言われて武器を納品したのに、その武器を向けられて、金すら払ってもらえなかったんだぞ。その上、同族で戦争ばかりして血を流していたんだから、そりゃ、野蛮だと思うってもんだろ?」
「確かに我が国の歴史は、戦争の歴史で出来ているが……」
人族を野蛮と言われて声が大きくなった姫騎士であったが、ドアーフに論破され、声が小さくなっていく。その二人のやり取りを聞いていた魔王は、姫騎士を助ける為に間に入る。
「ドアーフさん。いまはそんな事を言っている場合ではないんです。武器を取らないと、我々魔族が滅びてしまう瀬戸際です。どうにかなりませんか?」
「魔王様……。確かに協力しないといけませんか。そうだな……せめて見本があれば打てると思います」
「本当ですか!? お兄ちゃん!」
魔王は勇者と話し合うとドアーフ達にも先に出ているように言って、会計に走る。外に出た勇者は魔王に頼まれた通り、馬車と剣を数十本取り出して待機すると、ドアーフに取り囲まれる。
「ふ~ん。変わった馬車だな。ここは……」
どうやらドアーフ達は、剣より馬車に興味津々のようだ。そんな中、一人剣を手に取る姫騎士の姿がある。熱心に剣を見る姿を気になった勇者は、姫騎士に近付く。
「ドアーフより、剣に興味を持っているな」
「その言い方はやめてくれないか?」
「騎士なら当然だろ?」
「まぁそうなんだが、ドアーフと言えば剣だと思うのだが、私がおかしいのか?」
「いや。俺の世界のドアーフは、剣と酒にしか興味が無かったから、俺も変だと思うぞ」
馬車にしか興味を持たないドアーフを見た二人は共感する。勇者と話し合っていた姫騎士だが、ひと振りの剣が気になったのか、鞘から抜く。
「変わった形の剣だな。片刃か」
「それは刀と言うらしい。妹のお気に入りだ」
「妹さんの物なのか?」
「ああ。妹の収納魔法に収まらなかった物を預かっているんだ」
「そうか。なら、私が借りる事は出来ないか」
「刀が気に入ったのか?」
「この刀身は素晴らしいからな」
「刀は扱いが難しいらしいぞ。剣とは違う切り方をするらしい」
「なるほど……」
姫騎士は軽く振って、刀の性能を確認する。それだけではわからないようなので、何か切ってもいい物を出してくれるように勇者に頼む。
勇者は少し考えると、アイテムボックスから木の棒を取り出し、片手に持って構える。
準備が整ったと見た姫騎士は一言掛けると、横一閃に刀を振るう。しかし、姫騎士の思い浮かべる結果にはならなかったようだ。
「確かに剣とは違うのだな。それぐらいの棒なら、剣で軽々と両断できるのだが、止まってしまった」
「だろ? でも、妹はこの刀でワイバーンの首を刎ね落としていたな」
「私には扱えないと言う事か……」
勇者と姫騎士が刀について話していると、ドアーフの一人が近付いて声を掛ける。
「引くんじゃないのか?」
「引く? どう言う事だ?」
「包丁だって、当てただけでは切れないだろ? まぁ重さで叩き切る方法はあるけどな。普通の包丁は引くか押すかして野菜を切るんだから、それと一緒じゃないか?」
「角度を付けて、引けばいいのか」
「たぶんな」
「ちょっとやってみる」
ドアーフのアドバイスを聞いた姫騎士は、何度か素振りをするとコツを掴んだのか、勇者に棒を構えるように頼む。
そして刀を斜めに振り下ろす。
「「……? お、おお!!」」
姫騎士の刀は、ひと振りで棒を通り過ぎた。斬れていない事に、勇者達が不思議に思った瞬間、棒の上部はゆっくりと斜めに滑り落ちた。
「凄い切れ味だな。斬った感触すらなかった」
「ちょっと貸してくれ!!」
姫騎士が刀身をジックリと見つめていると、ドアーフが大きな声を出す。姫騎士は不思議に思いながらも、刀を手渡す。
腐ってもドアーフ。刀の切れ味を見て、興味を持ったのであろう。ドアーフは刀をいろいろな角度から見て興奮した声を出す。
「この技法を使えば、包丁がさらに切れ味を増すぞ!!」
うん。腐っていたドアーフ。勇者と姫騎士も、最強の剣を作りたくなったと思っていたのか、目を見合わせて苦笑いをしているぞ。
1
あなたにおすすめの小説
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる