47 / 187
05 戦準備
046
しおりを挟む作戦会議の翌日、勇者が牛舎からログハウスに顔を出すと、皆、疲れ切った顔で動き回っていた。
「あ、お兄ちゃん! いいところに来ました」
勇者の姿を見た魔王は小走りに寄って来る。
「どうした?」
「お兄ちゃんに持ってもらいたい物があります。こっちに来てください」
勇者は魔王に手を引かれ、気持ち悪い笑顔で表に出ると魔王の指差す物を見る。そこには、ログハウスに入る時に見た農具の山があった。
「これ、お兄ちゃんの収納魔法に全部入りますか?」
「ああ。入ると思う。でも、鍬や鎌なんて、農業でもするのか?」
「違います! 武器が足りないから、これを使うしかないんです」
「そっか。ドアーフに頼んだのは昨日だもんな」
「お願いしますね!」
魔王はそれだけ言うと、ログハウスに走って行った。勇者が魔王を見送って、大量の農具をアイテムボックスに入れていると、姫騎士が外に出て来た。
「おはよう」
「おはよう。姫騎士も徹夜したのか?」
「ああ。雑用をしていたよ」
「姫様が雑用とは変わっているな」
「まぁな。それにしても、武器なんて持っていないと言っていたが、槍はあったんだな」
「これはピッチフォークと言って、刈り取った牧草なんかを持ち上げたりする農具だ」
「農具なのか……三又の槍だと思ったよ。それに頑丈そうだ」
「そうだな。あのドアーフが作ったんだから、伝説級の農具かもな」
「確かに強そうだ」
二人で軽口を叩きながら農具を入れ終わった頃、魔王が四天王とコリンナ達を引き連れて外に出て来た。
「お待たせしました! では、最前線の町、パンパリーまで行きましょう!!」
魔王の元気な言葉を受けて、一行は歩き出す。すると、ログハウスの窓から蝶の群れのようなモノがずらっと出て来た。
「ちょっと~! 置いて行かないでよ~~~!!」
妖精女王のテレージアだ。仲間を引き連れて追い掛けて来たようだ。
「あ……すみません。起こすのを忘れていました~」
「魔王! あんたがついて来いって言ったんでしょ~。もう治してあげないわよ!」
どうやら魔王は、薬箱を忘れたようだ。そのせいで、テレージア激オコである。
「ごめんなさい。テレージアさんを忘れるなんて、どうかしてました」
「フンッ。つぎ、置いて行ったら言うこと聞かないからね!」
なんとか落ち着いたテレージアや妖精達を一行に加え、今日も巨大ホルスタインアルマが引く馬車に揺られてひた走る。初めて乗る四天王も最初は騒いでいたが、徹夜の影響で、すぐに眠りに落ちたようだ。
元より移動時間を使って寝ようと考えていたらしい。勇者の許可は取らずに……
馬車の中は静かなもので、妖精達は暇なのか、キッチンを漁ってお菓子を貪り食っていた。もちろん勇者の許可なんて取らずに……
馬車の移動は順調で、途中、指示のあった町に寄り、魔王は農具やスライムを受け取る。それらを乗せた二台の馬車を繋いで出発すると、時々同じ方面に向かう馬車を追い抜き、昼過ぎに、パンパリーの町が見えて来る。
アルマを牛舎に預けると勇者は馬車を引き、町の門まで軽く駆ける。急ごしらえの壁に取り付けられた門に着くと、驚く門兵のブタ鼻の男に止められた。
なので勇者は、門兵に事情を説明すると馬車に入り、魔王一行を降ろしてアイテムボックスに仕舞い込む。
魔王の姿を見た門兵は丁寧に挨拶をし、町長のオークロードの屋敷まで案内してくれた。
「これはこれは魔王様。お待ちしておりました」
「町長さん。お疲れ様です。さっそくですが、進捗状況を聞かせてください」
「はい。指示通り、取り掛かっております。ですが、なにぶん人手が足りておりませんので、まだまだと言ったところです」
「わかりました。それではこれより、私が指揮を取ります。その参謀にコリンナさんを置きますので、コリンナさんの指示に従ってください」
「はい……え?」
町長はコリンナを見て、姫騎士や勇者に目を移し、観察するように見る。
「その者たちは、人族ではないのですか?」
「人族ですが、快く我々の味方になってくれた人族です。もしも、コリンナさん……姫騎士さんや勇者様を害する様な事が起きれば、魔王の私が許しません。わかりましたね?」
「は、はい!」
町長は疑問を口にしたが、穏和な魔王が珍しく語気を強めた事で、あっさりと引き下がる。その後、軽く昼食をとった魔王一行は、さっそく壁の建設作業現場に向かうのであった。
2
あなたにおすすめの小説
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる