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08 魔族と人族
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しおりを挟む終戦の言葉に、ざわめく人族を宥め、姫騎士は演説を続ける。
『こちらにおわす御方は、魔族の王、魔王殿だ。諸君らも、もっとおどろおどろしい化け物を想像していたと思うが事実だ。見た目通り、とても優しい御方なので信用して欲しい』
姫騎士の褒めているのか貶しているかわからない演説に、魔王はひとまずニコニコしている。
『魔王殿は、行くあての無い者は魔界で暮らす事を許してくれた。住居に関しては、これからの話し合いになるが、けっして悪いようにしないはずだ。そうであろう?』
姫騎士は魔王に質問をし、マイクを譲る。
『先ほど紹介にありました、第三十三代魔王シュテファニエです。魔界に移住希望者は、審査の上、住居も新たに建設する予定です。しばらくは窮屈な思いをするかも知れませんが、食べ物だけは困らせないので安心してください』
魔王の言葉を聞いた人族は、疑いの目で見るので、もう一度姫騎士がマイクを握る。
『人界では不作で、魔族の呪いと聞いた者も居ると思うが、それは王族が流したデマだ。私もそのデマに踊らされた一人だった……。事実は、魔族達は農業に力を入れ、この難局すら跳ね返していたのだ』
姫騎士は深く息を吸うと、言葉を続ける。
『魔族の侵攻すら嘘だったのだ……。私達帝国は、心優しい魔族から全てを奪い取ろうとしていたのだ。私はこれを許せない……』
姫騎士の決意に、住民は息を呑む。
『だから私は父上を倒し、帝国の女王になる事を決めた! 皆もついて来てくれ!!』
しばしの静寂が訪れ、突如、割れんばかりの歓声があがる。どうやら姫騎士の決意の決起は、住民にも受け入れられたようだ。
長く続く歓声が落ち着くのを待って、姫騎士は炊き出しの準備を行う旨を伝え、魔族主動で調理を開始する。
姫騎士も料理を手伝おうとすると、人族からも人が集まり、仕事を奪われた姫騎士は下がって行く。
もちろん魔王も手伝おうとしたが、テレージアと四天王に止められ、惨事は免れた。こんな大人数に一服盛ったのならば、信用が無くなるので当然だ。
結局二人は器に炊き出しを器に注ぐ係りをして、振る舞われた住人は、顔を赤くして受け取っていく。
炊き出しを食べた人族は、野菜の美味しさに驚き、何杯もおかわりをしていた。
勇者も何度も魔王の配膳する列に並んでいたが、魔王の手作りじゃないんだから、いい加減並ぶのをやめて欲しい。
そんな中、勇者がテーブルで食べていると、見慣れた顔が正面に座る。
「まさかお前の連れが、魔王だったとは驚かされたよ」
「ん? ……オヤジ?」
酒場のオヤジだ。勇者の顔を見て、声を掛けたようだ。
「本当に食べ物をくれるんだな」
「言っただろ。サシャ……魔王は優しいって」
「自分で噂を広げたけど、半信半疑だったんだよ。それにあんたが勇者ってのもな」
「俺の事は信じなくていいよ。魔王が優しくて、美人ってだけは事実だからな」
「あはは。ちげぇね~」
勇者とオヤジがにこやかに話をしていると、姫騎士と魔王が器を持ってテーブルに相席する。
「お兄ちゃん。そちらの人は見覚えがあるのですが、どちら様ですか?」
「前にこの町で、一緒に酒場に入っただろ? その酒場のオヤジだ」
「あ! その節はお世話になりました。それに、魔族の良い噂を流す事に協力してくれたとお兄ちゃんから聞きました。ありがとうございます!!」
「お、おう……」
美人の魔王に詰め寄られたオヤジは、顔を赤くして返事をする。次に攻撃するのは姫騎士。
「そう言えば、私の事も心配してくれていたようだな。おかげで、無事、この地に戻って来れた。感謝する」
「そ、そんな……滅相もありません……うわ~~~!!」
美人二人に攻撃されたオヤジは、頭まで真っ赤にして走り去って行った。
「オヤジさん。どうしたのでしょう?」
「きっと、体調でも悪かったのだろう」
原因の二人は気付いていないようだが、オヤジも……
「またヘタレが一人……」
どこから現れたのか、テレージアが言った通りの人物なのだろう。
こうして、久し振りに腹いっぱい食べる事の出来た人族は笑顔となり、魔王も満足そうにそれを眺めながら、一日が終わるのであった。
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