攻撃の出来ない勇者は誰が為に拳を振るう・・・

ma-no

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10 勇者VS魔王

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 勇者と魔王、テレージアは、まったく戦争とは関係無いスイーツの話で盛り上がり、穏やかな一日を満喫していると、突如キャサリの町に、けたたましく鐘の音が響き渡る。

「これは……警鐘けいしょうの鐘の音?」

 鐘の音の正体は、見張り台から、人族が作った森の道を見張らせていた魔族が鳴らした鐘の音。その音に、三人に緊張が走る。

「サシャ。来たぞ!」
「は、はい! えっと、こう言う場合は……東門に集合です! すぐに向かいましょう!!」
「おう!」

 と言うやり取りをして、魔王は背負子しょいこに乗って移動する。背負子をセットするのに少し時間が掛かったが、そこは走る勇者。あっと言う間に東門に到着した。
 すると、外壁の上からコリンナが上がって来いと手を振るので、勇者はひとっ飛びで外壁に登る。

 そこには、四天王と姫騎士と部下数名、コリンナと三少女が揃っていた。東門周辺は、現在、兵士の訓練場所となっているので、訓練に参加していた者は先に到着していたようだ。


「あの……人族軍は何処にいるのですか?」

 勇者から降りた魔王は、森の道に人影が無い事に不思議に思い、コリンナに説明を求める。

「それが……誤報かも?」
「誤報なのですか? よかった~」

 誤報に喜ぶのではなく、注意したほうがいいのでは? 魔族は喜んでいるけど、姫騎士達は苦笑いしているぞ。
 そんな中、フリーデが「ピヨピヨ」と文句を言う。

「誤報じゃないも~ん! 何か飛んで来たんだも~ん!!」

 珍しくフリーデが見張りをしていたようだが、普段から寝てばかりなので、皆、「夢でも見ていたのでは?」といった顔をする。
 皆の表情を見て、フリーデはさらに「ピヨピヨ」と怒るので、魔王が宥める。

「フリーデちゃん。本当に見たの?」
「本当だもん!」
「ワイバーンじゃないのか?」

 魔王が質問しても、フリーデは意見を変えないので、勇者が別の可能性を示唆しさする。

「魔界に隣接する森には、魔除けの木があるので、においを嫌って森から出て来ないのですけど……」
「空からもか?」
「はい」
「でも、何か気配がある気がするんだよな~」

 勇者の感……勇者は、何かしらの違和感を感じているようだ。

「気のせいじゃないんですか?」

 魔王にもまったく信じられていないみたいで、勇者はしゅんとする。しかし、フリーデが「ピヨピヨ」と騒ぎ出す。

「いた! あそこあそこ!!」
「え?」

 フリーデは空を指差すが、皆は見えていない。目のいいフリーデしが確認できない距離ならば仕方がない。

「あ! 本当だ!!」

 どうやら勇者も見えているみたいだ。

「あのシルエットは……」
「ほらね~?」
「フリーデちゃん。何が飛んでるか、わかる?」
「う~ん……人っぽい?」

 勇者は飛んでる人間を凝視し、魔王の質問にフリーデが答える。すると、姫騎士が魔王に声を掛ける。

「人間が空を飛ぶわけはないだろう。魔族にそんな種族がいるのではないか?」
「フリーデちゃんの先祖がハーピーって種族で飛べましたけど、いまはごらんの通りです」
「……そうか」

 羽が無い、卵の殻を被った少女を残念そうに見る姫騎士。すると、テレージアがある事を思い出す。

「勇者の妹は、魔法で空を飛んでたって言ってたわよ。人族にも使える人がいるんじゃないの?」
「いや。人族の中に、そのような魔法が使える者は聞いた事がない」
「あ……東を見て!」

 皆が空を眺める中、コリンナは首が疲れて視線を下げると、砂ぼこりを見付けて口に出す。

「アレは……人族軍……。数千じゃきかないぞ。万単位だ!」
「誤報ではなかったのですね……四天王の皆さん。姫騎士さん。直ちに防衛の準備に取り掛かってください!」
「「「「おお!!」」」」

 魔王は人族軍を視界に入れると、先ほどまでとは打って変わり、厳しい表情で指示を出す。

「お兄ちゃん。お兄ちゃんは前回と同じく、司令官を連れて来てくださ……え? お兄ちゃん! お兄ちゃ~~~ん!!」

 勇者は魔王の言葉を最後まで聞かず、外壁を飛び降りてしまった。すると、残っていたフリーデが魔王に話し掛ける。

「空の人も降りて来たみたい」
「あれは……女の人? え……お兄ちゃん??」


 魔族が戦いの準備をする中、魔王は空から降りる女性を見つめ、勇者は叫びながら女性に向かって行くのであった。
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