攻撃の出来ない勇者は誰が為に拳を振るう・・・

ma-no

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20 帝都攻め 1

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 帝国全町、全小国を傘下に置いた姫騎士軍は、ついに進軍する。
 総数八万人……なのだが、帝都を守る軍は二万しかいないので、召集した人数は五万だけ。三倍には届いていないが、姫騎士軍には勇者が二人もいるので、オーバーキルだ。
 本当は勇者にだけ作戦に参加して欲しかった姫騎士だったが、サシャにゴネられて、参加を許可せざるを得なかった。
 なんでもサシャは、「外壁ぐらいぶっ飛ばしたいしぃ!」とのこと。暇すぎてストレスが溜まっているので、勇者と同じく外壁に穴を開ける仕事をしたいんだとか。
 そのせいで姫騎士は、サシャが無茶をしないかひやひやしている。


 ゆっくりと進む姫騎士軍は六日進軍し、帝都西門近くにて五万の兵を一ヶ所に集め、帝国軍に見せ付けるように兵を並べた。

『時は来た……』

 五万の兵の前で、姫騎士は音声拡張マジックアイテムを使って語り掛ける。

『これより、皇帝の圧政から民を解放し、新しい幕開けとしようぞ!!』
「「「「「おおおお!!」」」」」

 姫騎士の叫びと兵士の雄叫びは帝都内にまで響き渡る事になった。

 それから姫騎士の短い演説が終わると、各隊長が兵を引き連れ、帝都を囲むような配置に就く。
 全て配置に就いたと聞いた姫騎士は、勇者を伴って外壁西門にて音声拡張マジックアイテムを使う。

『私は帝国皇女クリスティアーネだ! 皇帝に無条件降伏を求む! 返答は如何いかに!!』

 姫騎士の問いに、西門に立つ騎士は、皇帝から何を言われても降伏するなと言われていたので即答。姫騎士をヴァンパイアと言いながら矢を放つ事で、返答とした。

 その矢は勇者に簡単にキャッチされる。

「だってさ?」
「当然の反応だな」
「じゃあ、戻ろっか」
「まだやる事があるから少し待て」

 勇者と軽口を叩いた姫騎士は、再び音声拡張マジックアイテムを使って語り掛ける。

『騎士や兵士諸君! 皇帝への忠義、まことに天晴れ! そんなお前達を我が軍は欲しい! 裏切り者と罵られても我が軍に来るならば、殺しはしまい。待遇や処遇は相談してくれたら聞いてやる!!』

 まずは騎士や兵士の勧誘。多少は心が揺らいだようだが、上官から矢を放てと命令を受けて、姫騎士に弓矢の雨を浴びせ掛ける。
 しかし、その矢は勇者の体に弾かれて、姫騎士には一切届かない。

『民達よ! 今までひもじい思いをさせてすまなかった。助けられなかった私にも非があると自覚している。だが、強力な後ろ楯を得た今なら助ける事が出来る! 我が民になってくれたならば、必ず餓死者を無くす事を約束しよう!!』

 何故か民まで勧誘する姫騎士。下級街では姫騎士人気もあり、今まで生気のなかった民の目に光が灯る事となる。
 そうして一仕事を終えた姫騎士は、よりいっそう激しくなる弓矢の雨の中を、勇者にお姫様抱っこをしてもらい、猛スピードで自陣に戻るのであった。


 ジーーー×3

 勇者のお姫様抱っこで帰った姫騎士は、まったく降りる気配がなかったので、魔王、コリンナ、サシャに睨まれて、慌てて飛び降りた。いや、サシャからただならぬ気配を感じて飛び降りたのだ。

「ゴホン! 作戦の第一段階は終了した。では、勇者殿、最長老殿、頼んだぞ!!」
「おう!」

 気持ちを落ち着かせた姫騎士は、二人に指示を出し、フードを深く被ったサシャは声を出せないのでコクリと頷く。
 第二段階は、双子勇者の反則攻撃。と言っても、外壁に穴を開ける簡単なお仕事。広い帝都に多数の穴を開ければ、籠城している意味が無くなるのだ。

 勇者はいい返事をした直後に走り出し、コクリと頷いたサシャは……

「ウチの前でイチャイチャするなんて、いい度胸だしぃ……」

 残って姫騎士に説教していた。

「そうですよ! 姫騎士さんばっかりズルいです!!」
「ホントよ! 次はオレだからな!」

 さらには魔王とコリンナにも責められていたが、サシャがぬるりと振り返る。

「あんた達にも言ってるんだしぃ! ウチの目の前でやんなしぃ!!」
「「「はい……」」」

 サシャに怒鳴られた三人は、しおらしく返事をするのだが、姫騎士はサシャが出遅れている事に言及する。

「ファーストアタックがどうとか言っていたが、行かなくていいのか?」
「あ! 忘れてたしぃ! ま、ここからならまだ間に合うか……兄貴もろともぶっ飛ばしてやるしぃ!!」

 サシャが両手を上げて呪文の詠唱を開始すると、姫騎士と魔王は腕に絡み付き、コリンナは腰に絡み付き、焦って叫ぶ。

「「「待て~~~!!」」」
「なっ……危ないしぃ!」

 危うくサシャの魔法が暴発しそうになったが、なんとか止まったようだ。

「なんだしぃ?」

 いきなり止められたサシャは不思議そうに聞くので、姫騎士、魔王、コリンナは焦りながら喋る。

「勇者殿を巻き込むのはかまわないのだが、あまり無茶をしないでくれ」
「そうです。勇者様は巻き込まれても大丈夫ですけど、普通の人に当たったら死んでしまいます」
「あと、アニキは壊れないからいいけど、外壁を全部壊すのは、まだ先だから作戦を守ってよね」

 勇者は心配されていなが、サシャのやりすぎを心配する三人。

「あんたら兄貴が好きだったんじゃねぇの? ちっとは心配してやれしぃ!」

 あまりにも勇者を邪険にするものだから、嫌いなのに擁護してしまうサシャであったとさ。


 それから何度も無茶をするなと言われたサシャは、いちおう頷いて空を舞い、勇者の後ろに着地する。

「まだ間に合うしぃ! 【爆裂】!!」

 そして爆発魔法。振りかぶったサシャの手から離れた球体は、西門に触れた瞬間、爆発を引き起こした。
 その衝撃で西門にあった扉は吹き飛び、延長線上にあったバリケードは瓦解した。

「う~ん……初級魔法なのに、やり過ぎた? ま、人は巻き込んでないから問題ないっしょ~!」

 やや反省したサシャであったが、すぐに取り消してブイサイン。姫騎士達に合図を送る。

「アレで手加減しているのか?」
「まぁ……お兄ちゃんに使った魔法じゃなかったみたいですし、手加減してるんでしょう……」
「てっきり、アニキにぶつけると思ってた……」

 サシャの手加減した魔法を見ても、まだ信じられない、姫騎士、魔王、コリンナであったとさ。
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