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20 帝都攻め 1
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しおりを挟む「どうして私はナデナデできないんですか~」
一向に頭をナデナデしてくれない勇者に泣き付く魔王。勇者も触れようと頑張っていたのだが、最愛の妹だけにヘタレな勇者では致し方ない。
「す、すまない……もう少し時間をくれ」
「もういいです!」
「プシューーー」
謝る勇者を暗殺。抱きついて意識を奪い、手を持ってセルフナデナデ。しかし、魔王は満足していないようだ。
「うぅぅ。なんか違います~」
そりゃそうだろう。自分で撫でさせているのだから、人形とたいして変わらないのだからな。
「もうアニキの事は諦めたら? オレが貰ってやるよ」
策略のコリンナのクリティカルヒット。相思相愛なのだが、勇者から触れられないのだから、チャンスはあると考えて略奪しようとしている。
この辛辣なセリフに魔王は涙目になるが、反論が思い付かない。
そんな中、フリーデとテレージアがテーブルに同席した。
「またヤったの? いつになったら勇者は魔王に慣れるのよね~」
幸せそうに眠る勇者を横目に見ながら食事を始めるテレージア。見慣れた光景では、おっさん妖精女王には物足りないようだ。
「どうしたらお兄ちゃんは、私を抱いてくれるんでしょう……」
かなり際どい事を呟く魔王の言葉に、テレージアの耳がピクピクする。最近、三人の進展がないので、新しい刺激が欲しかったようだ。
「イメチェンしてみたらどう? サシャと見た目が変われば、緊張しなくなるかもよ」
「そ……それです! さすがテレージアさんです!!」
魔王に褒められたテレージアは鼻高々。しかしコリンナは敵に塩を送られて、テレージアを睨んでいる。
「コリンナもイメチェンしてみなよ。いつも男っぽい格好だし、女の子っぽくしてみたら?」
「た、たしかに! でも、服なんて持ってない……」
「たしかあっちに、住人に配る服があったはずよ。わたしもコレ、端切れから作ってもらったんだ~」
テレージアは戦いに参加しないので、暇すぎて軍の馬車をウロウロしている。そこで出会った女性にチヤホヤされて、何着か服をプレゼントしてもらった。
ゆるふわ系の服を着たテレージアは空を舞ってくるりと回ると、魔王とコリンナは目を輝かせる。
「かわいいです~。私も欲しいです~」
「オ、オレも、ちょっと着てみたいかも」
「フフン。じゃあ、これを食べたら行きましょう」
食い意地の張った妖精女王を急かす魔王とコリンナであったが、案内役が居なくては服を調達できない。仕方なくバクバク食べるテレージアを、恨めしそうに見続けるのであった。
テレージアの食事が終わると、フリーデもちょうど食べ終わり、ウトウトとし始めた。なので魔王とコリンナはフリーデの手を引いて歩き、空を舞うテレージアの案内で、とあるテントに入った。
そこで「キャーキャー」と叫ぶ女性に次々と服を着せ替えさせられる。どうやら、美人の魔王と、かわいらしい少女二人に舞い上がっているようだ。
魔王達はと言うと、魔王以外はたじたじ。魔王はいろんな服を着れて楽しそうだが、コリンナは戸惑っている。フリーデは……寝てるな。寝てるのに、無理矢理着せ替え人形にされている。
そうして長い時間服を選んでいた魔王達は、勇者の眠るテーブルに戻った。
しかし勇者は起きる気配がないので、魔王が魔法で作った水をぶっかけて起こす。
「わ! な、なんだ!?」
驚きながら目覚めた勇者はキョロキョロしたのも束の間、魔王に目を留める。
「サシャは何を着ても似合うな~」
「うっ……一目でバレてしまいました~」
魔王の格好は、いつも下ろしていた髪をポニーテールにまとめ、スーツ姿に眼鏡を掛けた秘書スタイル。出来るだけ元の姿から変えたのだが、勇者には一発で見破られてしまった。
「オ、オレはどうかな?」
「……コリンナか? かわいらしくなったな~」
「やった」
手をグッと引いて喜ぶコリンナの格好は、何がなんだかわからなくなって、テレージアと同じくゆるふわ系。しかし仕草が男っぽいので、少しもったいない。
ちなみにフリーデは森ガール。寝ている内に着替えさせられ、本人は何を着せられているかわかっていない。
「で、あたしはどうよ? 褒め称えなさい!」
無い胸を張るテレージア。
「……どこか変わったか??」
「ムキー!!」
しかし羽虫程度にしか見ていない勇者には、違いがわからなかったようだ。怒ったテレージアは勇者の顔にドロップキックをお見舞いしていたが、ノーダメージ。虫に刺されたほども効かなかった。
それから服飾テント近くに移動して、服を替えては勇者の前に現れるファッションショーが始まった。
魔王達がわいわい騒いでいると、姫騎士も魔王達のファッションショーに加わる。ただし、魔王に対してだけ勇者のテンションが変わるので、姫騎士とコリンナは納得いかない顔をしていた。
それに付き合わされていた勇者はと言うと、美女を侍らせていたので、兵士達の羨望の眼差しが突き刺さっていた。まぁ頑丈な勇者には効かないし、魔王を見る事に忙しかったので、気付いていない。
その事もあって、何事かと人々が集まり、ファッションショーは男も女も関係なくテントを囲み、大きな輪となった。
しかし、そんな騒ぎが起こっていたならば、あの人も黙っていない。
「うぅぅ。楽しそうだし~」
サシャだ。ファッションショーは、もう、勇者一人に見せるモノではなくなってしまい、壇上に立ってポーズを決める魔王達を見てうずうずしている。
「クリスティアーネ殿下のドレス姿を見れるとは……うぅぅ」
ヨハンネスは何故か涙している。微かな恋心を押し殺していたのかもしれない。
「なぁに~? あんたクリクリに惚れてたの~?」
「そ、そんな不敬な事は考えていない!」
サシャに頬をつつかれるヨハンネスは、慌てて否定する。よっぽど弱味を握られたくないんだろう。
「あははは。バレバレだっつうの」
「うっ……誰にも言わないでください」
「黙っていてあげるから、ウチに協力するしぃ!」
ヨハンネスは、怪しく笑うサシャがよからぬ事を考えていると気付く。
「ま、まさか……あの場に立つつもりなのか??」
「こんな楽しそうな事に参加しないわけないっしょ~!!」
「いや、こんな大勢の前に姿を現したら、勇者殿にバレてしまうぞ!」
「そこをなんとかするのがあんたの仕事だしぃ!!」
「む、無理だ~!!」
こうして飛び入り参加のサシャを加え、ファッションショーは続くのであった。
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