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21 帝都攻め 2
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しおりを挟む双子勇者の活躍で、楽に城壁内に侵入した姫騎士軍は、ジリジリと前進する。双子勇者に倒された帝国兵が転がっていれば後方に送り、城の守りを固める帝国兵とは戦闘を行う。
ただし、横から勇者が疾走して跳ね飛ばされて隊列が瓦解し、竜巻のようなサシャも通り過ぎるので、姫騎士軍の出番は少ない。
そうして順調に進んだ姫騎士軍は、城を囲んで停止。城内攻略の最終確認をする為に、主要メンバーを集めるのであった。
* * * * * * * * *
ところ変わって帝都城地下……
顔のような岩のある空洞で、皇帝は近衛騎士を伴って、宰相の作業を見守っていた。
「く、くそ! 離せ~~~!!」
わめき散らす奴隷の男は、兵士によって無理矢理魔法陣の近くに連れて行かれて座らされる。それを見ていた宰相は、皇帝のほうに振り返る。
「陛下。準備が整いました。いつでもいけます」
宰相の言葉に、皇帝は冷たく命令を下す。
「やれ」
その低い声を聞いた宰相は、兵士に男を押すように指示を出し、兵士は男の背中を力強く蹴った。その蹴りで、男は魔法陣の中心に倒れ込む。
「な、なんだ!? ぐ、ぐあぁぁ~~~!!」
倒れた男が体を起こすと魔法陣が輝いており、身動きが取れなくなる。それと同時に男の肌が土色に変わり、みるみる痩せ細っていった。
そうして約1分後には男の呻き声は無くなり、皮と骨だけになって完全に生き絶えるのであった。
その光景を眉ひとつ動かさずに見ていた皇帝は、静かに口を開く。
「何も起こらないではないか」
皇帝に睨まれた宰相は、返事もせずに、ゆっくりと顔のような岩に近付く。
「聞いておるのか……」
宰相が岩に触れていると、皇帝は怒りのまじった声を出した。
「聞こえていますとも。くふ、くふふ」
口調を変えて笑う宰相に、一同不思議に思うが、皇帝だけは冷静に問いただす。
「これを古代兵器と説明したが、貴様は余に嘘を言ったのか?」
「いえ、間違いなく古代兵器ですよ。くふふ」
「では、何故動かないのだ?」
「乗り込む者が居なければ動きません。それも、少々変わった遺伝子を持つ者でありませんとね」
「遺伝子??」
「ああ。あなた方は知らない言葉でしたね。まぁ簡単に言うと、製作者、またはそれと近しい者でないと動かせないのです」
饒舌に語る宰相の言葉に、いまひとつ呑み込めない皇帝達。なので宰相は、より簡単に説明する。
「つまり、私以外、動かせません」
ここで皇帝は、宰相の正体を疑う。
「何故、貴様なら動かせる? まるで自分が製作者とやらだと言いたいようだな」
「半分正解です。くふふ」
宰相は嫌な笑いを漏らしながら喋り続ける。
「私は製作者のクローン……この言葉も通じないのでしたね。複製品と考えてください。それも、魂のみ複製品です。もちろん頭脳はそのままですので、この体の遺伝子配列をいじる事も造作もありません。まぁ機材が乏しいので時間は掛かりましたがね」
「製作者の子供のようなものか……」
「そう考えてくれて差し支えありません。もっとも我々は端末と呼ばれていましたがね。それでは通じないので、表に出る場合は使者と名乗ったりしています」
「使者……それで、主は貴様に何をさせようとしているのだ?」
難しい話になんとか食らい付く皇帝は、喋りながらハンドサインで近衛兵を自分の周りに集める。
「ああ。そんなに警戒しないでください。私の受けた使命は、この兵器の復活のお手伝いだけですからね。人間とばかり戦争し、なかなか必要としてくれる皇帝が現れなくて、ようやく役に立てましたよ」
やれやれといった表情をする宰相……いや、端末。
「では、貴様は味方なのか?」
「どうでしょう?」
「どういう意味だ?」
「この国に伝わるお伽噺を覚えていませんか?」
皇帝はお伽噺の一文、「万の敵を討ち滅ぼし、帝国に、万の希望をもたらした神」を思い出し、それと同時に石板の一文、「兵器、万の死者、万の?望、神」を思い出す。
すると、端末は心が読めるが如く、タイミングよく口を開く。
「そう。それです。ただし、それを教えたのは私です。しかも、都合の悪い部分は隠しましたがね。この古代兵器が『万の絶望』を振り撒いた破壊神だと言うと、復活しようとしませんでしょ?」
「破壊神だと……」
「もう大変でしたよ」
聞いてもいないのに、これまでの経緯を話す端末。
遠い昔、この世界を破壊し尽くした兵器があった事から説明し、その記憶が薄れた頃に、何度も体を入れ替えていた端末が伝説を改竄して普及した。
しかし長い年月もの間、地下深くに封印された事で掘削する技術もなく、探したところで諦める者が続出。そんな物に頼らなくても、帝国には勇者や軍隊がいるので、危険に晒されないので探す事もしなくなった。
端末も端末で、乗っ取った体が王族に近付ける者も居れば、近付く事も許されない場合も多く、本格的な探索がなかなか出来なかったとのこと。
ようやくこの体で長年の成果が実り、「破壊神が眠る絶対に開けてはならない扉」と書かれた扉を発見し、結界と共に破壊して中へ入ったのだ。
全ての説明を喋り終えた端末は、嫌な笑みを浮かべながら皇帝に問う。
「それで……どうします?」
「帝国を滅亡に導く物の復活など、できるわけがなかろう」
皇帝は、ここで白旗を上げる事がベストだと即断するが、端末は子供がいじけるような顔をしながら説得する。
「それでは、帝国はどちらにしても亡んでしまいますよ? いいのですか? 私だって、この数千年遊んでいたわけではありません。失敗を反省し、対策を持っております。勇者に勝つにはこれしか方法がないのですから、やるべきです!!」
ペラペラと喋る端末に、皇帝は決断する。
「貴様のような怪しい者を信用できぬ。近衛……こやつを捕らえよ」
「「「「はっ!」」」」
皇帝に命令された近衛騎士は、端末を囲むように歩を進める。
「喋り過ぎてしまいましたか……。少し興奮していたようですね。本来ならば、人族と敵対せず実験するように言われていたのですが仕方がありません。ここまで来て、実験を捨てるわけにはいけませんからね。科学者としての本懐を果たしましょう」
近衛騎士が迫る中、端末は覚悟を決めて、顔のような岩に飛び乗る。
近衛騎士は端末の運動能力に驚いたものの、自分達も岩に急いで登ろうとする。
「では、皇帝陛下。我々の研究成果をよく見ていてください。きっと満足いく結果となるでしょう」
深々とお辞儀をする宰相は、岩から伸びた光に吸い込まれる。
その数秒後、岩は振動し、亀裂が入り、岩を登っていた近衛騎士は振り落とされる。
亀裂はさらに大きくなり、地下空洞にまで及ぶと、皇帝達は慌てて逃げ出すしかできない。
その後方では、巨大な物体が地上を目指して土を掻き分けて行くのであった。
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