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21 帝都攻め 2
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しおりを挟む「くふっ、くふっ、くふふふ」
巨大なゴーレムのような姿をした端末の気持ち悪い笑い声を聞いたサシャは、警戒を強める。そうしていると、笑い声は喋り声へと変わる。
「素晴らしい! さすが勇者の攻撃……それよりも、このバディー!! あれほどの攻撃を喰らったのに、傷ひとつないとは!!」
喜ぶ端末に、空に浮くサシャはツッコム。
「どこが傷ひとつないんだしぃ。胸がへこんでるしぃ」
サシャのツッコミはそれほど大きな声では無かったのだが、端末は顔を動かしてサシャを見た。
「そうなのですか? 痛みが無かったので、自分ではよくわからないのですよ。ここですか??」
丁寧な口調で返事をする端末に、サシャはまたツッコム。
「てか、あんたなんなんだしぃ? ウチとやる気なんだしぃ?」
「ええ。勇者と戦えるとは、絶好の機会ですからね。存分にデータを取らせていただきます」
「敵って事でいいんだしぃ?」
「そうです。いちおう帝国側に居るので、敵で間違いないですよ」
「じゃあ、よくわからないけど、倒させてもらうしぃ!」
「ええ。私もこの体の性能を堪能させていただきます」
二人のお喋りが終わると、サシャが先手を打つ。
「行け! 【雷鳥】だしぃ!」
サシャが無詠唱で使った魔法は、雷で作られた巨大な鳥。雷の速度で端末に接近したが、右手で簡単に払われてしまった。
「うっそ……わ!」
それだけでなく、サシャも驚く程のスピードで目の前に現れ、大きな拳を振り落とした。
「あっぶな……デカイくせに、どんだけ速く動くんだしぃ……」
どうやらサシャは、空中で加速してギリギリ避けていたようだ。
「速い? まだまだ準備運動ですよ。くふふ」
「笑っているとこ悪いんだけど、ウチも様子見だかんね?」
「それは楽しみです」
「言ってろ! 楽しむのはウチだかんね!!」
サシャは動きにくいマントを投げ捨てたと同時に、服装を本気の戦闘服にチェンジ。
サシャの戦闘服は、勇者の洞窟で手に入れた知識で作られているので、いつでも身に付けられる。ただし、別の服を来ている場合、その下に戦闘服が現れるので、メチャクチャごわごわする。なので、今回は上の服も破り捨てた。
「うぅぅ。けっこう気に入ってたのに~」
やや悔しがりながら破り捨てた服の下からは、とても戦闘服とは思えない装備が現れる。
JK御用達のブレザーだ。
勇者の洞窟で見付けたファッション雑誌に載っていた制服に、サシャは一目惚れ。ドワーフやマジックアイテムの匠、服飾の専門化を困らせながら作らせた逸品。
もちろん防御力も性能も、元の世界でトップに君臨する伝説のブレザー。もう一着、同じ機能を持つセーラー服もあるが、気分によって使い分けているようだ。
「こうなったら……あんたで憂さ晴らしするしぃ!」
何やら怒りの方向がおかしいが、サシャは腰に差した刀を抜いて、地上スレスレを飛行する。そして踊りながら端末の右足横を通り過ぎた。
すると、右足は粉微塵に切り刻まれ、端末はゆっくりと右に倒れて行く。
「うっし! 絶好調だしぃ!!」
踊りながら千の斬撃を放ったサシャは、刀を掲げて端末が倒れ行く姿を見ている。
しかし、サシャの予想とは違い、端末は倒れなかった。
「なんだしぃ……」
突如、斬られた足の付け根から、植物のような、血管のような細い管が飛び出し、無くなった足を再現させたのだ。
「超速回復? いやいや、増殖かな? てか、体は岩っぽいけど、中身は生物??」
謎の物体に、サシャは様々な考えを口走るが、答えは端末が教えてくれる。
「しいてあげるなら、増殖ですかね? もちろん有機物も無機物も保有する体ですので、超速回復も使えますよ」
「有機物も……」
どうやら物体の正体は、有機物と無機物のハイブリッド。しかも、増殖する特徴も保有しているようだ。
「それにしても、素晴らしい剣技ですね」
「あんたに褒められても嬉しくないしぃ!」
「是非ともマネをしたいのですが、この体では、少々不便ですね。ならば、こうしましょうか」
端末の50メートルを超える体は、見るからに縮んで行く。
「ウチがそれを待ってやると思うしぃ?」
しかしサシャは、勇者らしからぬ事を言って、端末の周りを踊りながら飛び回る。すると端末は切り刻まれ、さらに縮む速度が加速する。
そうしておよそ3メートルの塊になったところで、サシャは離れた地面に降り立った。
「チッ……まったく手応えがないしぃ……」
サシャの刀は確実に端末を捉えていた。斬った感触もあった。なのに、端末の生命活動に支障をきたしていない。それどころか、切り刻まれた体の一部も端末に集まり、質量はそのままだが、合体したと言っても過言でない事になっている。
「くふふ。お待たせしました」
そして3メートルの人型になった端末の手には、サシャと似たような刀が一体化した。
「小さくなってどうするつもりだしぃ。たんに弱くなっただけだしぃ」
「あなたはそんな事を思っていないでしょ? くふふふ」
その通り。端末は縮んでも、強さも質量もそのまま。サシャもそんな事はわかりきっているから、自分を鼓舞するような言っただけだ。
「さて、こんな感じでしたかね?」
突如端末は踊り出し、サシャに刀を振るう。サシャは驚いたのも一瞬で、同じように踊りながら刀を受ける。
辺りには斬撃音が響き渡り、その都度、衝撃波が発生して遠くに居る者の腹に響く。
お互い様子見のようだが、それでもサシャの剣技が勝り、三回に一回は端末が斬られる。しかし端末には斬られた意識が無い。コンマ数秒後には傷は塞がっているからだ。
そうしてサシャに斬られる事が五回に一回になり、七回に一回になり、十回に一回になり、しまいには、一度も斬られなくなって、刀を合わせる音しか無くなった。
「この~~~!!」
そして鍔迫り合い。動きの止まったサシャと端末は、刀をギリギリと合わせながら会話する。
「おやおや。ここまで来るのに、もう少し時間が掛かると思っていましたが、計算違いでしたか」
「ハッ……本気のウチじゃないだけだしぃ!」
「まだ上があるのですか。それは、私の予想を上回りますか?」
「当たり前だしぃ!!」
サシャは強がって叫ぶが、事実は……まだ上がある。なのでサシャは、端末を押し飛ばして距離を作ろうとするが、質量が元のままの端末では、力勝負はサシャに部が悪い。
サシャもその事に気付いているからか、押すと同時に蹴りも入れて、端末を足場にして後ろに飛んだ。
「【身体強化】だしぃ!!」
サシャの本気。足に力を入れたサシャは、踊る姿も見せないまま、端末を切り刻んで塵とするのであった。
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