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22 破壊神
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しおりを挟む時は少し戻り、双子勇者と端末が戦っていた頃、帝都は恐怖に陥っていた。
『大丈夫だ! 二人の勇者が戦っているのだ! 必ずや敵を倒してくれる!!』
何度も爆音や爆風が帝都に届き、東の地がピカピカと点滅する中、姫騎士は民衆を励まし続けていた。
民衆は地獄のような光景を目の当たりにして恐怖していたが、姫騎士の声と避難誘導に従い、西に移動する。
姫騎士が馬に乗って民衆を励ましながら最後尾に移動していると、馬車の上で怪我人の治療している魔王の姿を発見したので、並走しながら声を掛ける。
「魔王殿。少しは休憩してはどうだ?」
魔王は治療魔法で兵士の傷を治してから、額に浮かぶ汗を拭って、姫騎士の顔を見る。
「ふぅ~……まだいけます」
「いや。戦いが始まってから、ずっと働いていると聞いてるぞ」
「姫騎士さんだって休んでないんでしょ? 戦っていない私がへこたれるわけにはいきません!」
「だが……」
二人が喋っていると、突如、東の空に竜巻が突き刺さった。するとその光景を見た魔王は、心配そうな顔になる。
「お兄ちゃんとサシャ様、大丈夫でしょうか……」
「あの二人なら大丈夫だろう。何せ、私達より動いていたのに、息ひとつ切らしていなかったのだぞ」
「そうだといいのですが……」
「はぁ……普通の人間の私には、とてもマネできない。私も少し休むから、魔王殿も休んでくれ」
「え?」
姫騎士は馬から馬車に飛び移り、魔王の隣に座る。ちなみに馬は、怪我が治った兵士に引いてもらっている。
「さあ、これでどうだ? 私は休んでいるぞ」
「もう……姫騎士さんはズルイです~」
どうやら姫騎士は、魔王を休ませるために休憩するようだ。さすがに上司にそんな事をされた魔王は、渋々休む事にする。
コップに魔法で水を注ぎ、一時の休憩をしてお喋り。その内容は、ほとんど勇者の事であったが、楽しそうに喋っていた。
そうしてしばらく休んでいると、二人の話をつまらなそうに聞いていたテレージアが、何かに気付いたようだ。
「竜巻が消えてるわよ?」
テレージアに言われて姫騎士と魔王は東を見る。
「本当だな……」
「そういえば、しばらく音も聞こえませんでしたね」
「という事は……」
「勇者が勝ったんじゃない?」
姫騎士のセリフを奪ったテレージア。そのドヤ顔は、二人は見ていない。そして、テレージアを無視した姫騎士と魔王は、顔を見合わせる。
「私は確認して来る!」
「待ってください! 私も連れて行ってください!!」
「魔王殿を?」
「もしかしたら、お兄ちゃんもサシャ様も怪我をしているかもしれません。治せる人が居たほうがいいはずです!」
魔王は姫騎士の手を取って説得する。
「逆もあるかもしれない……危険だ」
「なおのことです! 治療してくれる人が居れば、逆転だってできます!!」
「……わかった」
魔王の覚悟に負けて、姫騎士は同行を許可する。
「じゃあ、あたしも行こっかな~」
「好きにしろ」
「止めてよ!!」
どうやらテレージアは、魔王達の件がやりたかったようだ。姫騎士におざなりに返事されたのでご立腹。
しかし、姫騎士は各種に連絡を取らないといけないので忙しく、テレージアの相手は魔王に任せていた。
ひとまず避難誘導はペティーナに任せ、ヨハンネスに後続の騎士を指揮してもらう。その騎士達の配備を待てない姫騎士と魔王は、各々馬を操り、東に駆けて行く。ちなみにテレージアは、魔王の胸に乗り込んでいる。
二人は急いで馬を駆け、無人の帝都の脇を抜け、砂埃の舞う荒野に入った。
「凄いですね……」
地面はボコボコ。亀裂がそこかしこにある荒野は、激しい戦闘があったと見て取れる。その光景を見た魔王の声に、姫騎士が返答する。
「確かにな……少しスピードを落とそう」
姫騎士も地面を見て、馬の安全を優先して慎重に進む。そうしてゆっくり進むが、勇者とサシャの姿は見当たらず、時間が過ぎていく。
「お兄ちゃん……どこに居るのでしょう?」
「……あれだけの戦闘だ。疲れて寝ているのかもしれない」
魔王の質問に、姫騎士はよからぬ事が頭に浮かんだが、口には出さなかった。
「ま、まさか……」
しかし、魔王にも同じ考えが浮かぶ。だが、テレージアがパタパタと空を舞って、その暗い空気を打ち消す。
「あははは。あの勇者が死ぬわけないでしょ? 考えすぎよ。ちょっと上から見て来てあげるわ」
テレージアは笑いながら空を飛び、魔王達から離れると、険しい顔に変わった。どうやらテレージアも、勇者達の事が心配のようだ。目を凝らし、必死に探している。
そうしてしばらく経つと、テレージアが血相変えて戻って来た。
「居た! 居たわ! あっちよ!!」
テレージアは焦りながら喋り、先導して空を飛ぶ。そして勇者達に近付くと、真上をパタパタと飛んで魔王達に大声で知らせていた。
姫騎士と魔王は勇者達の姿が目に入ると、馬から飛び降りて駆け寄る。
「お、お兄ちゃん……」
「勇者殿! サシャ殿! おい!!」
魔王は血塗れで倒れている双子勇者を見て固まり、姫騎士は揺すって安否を確認する。
「嘘でしょ? あの勇者が怪我するなんて……」
この惨状に、先に到着していたテレージアでさえ、地面に膝を突いて放心状態になっていた。
「お、お兄ちゃん……お兄ちゃん!!」
固まっていた魔王は、気を取り直すと勇者を揺すり、生死の確認をする。
「お兄ちゃん? 嘘ですよね??」
しかし反応が無い。姫騎士は勇者の反応がないからか、サシャを揺すっている。
「生きてるぞ! 二人とも、まだ息がある! 魔王殿! テレージア! 治療魔法だ!!」
「は、はい!!」
「うん!!」
これほどの血を見た事の無い二人よりは、姫騎士のほうが免疫があったので、双子勇者の状態を的確に判断できたようだ。
「で、では、傷の酷いお兄ちゃんから……テレージアさん」
「そうね。やるわよ!」
テレージアと共に呪文を詠唱する魔王は、勇者の頭に手を触れると、ガシッと掴まれた。
「サシャ……サシャを先に……」
勇者が動いたのだ。しかし、ほぼ無意識。それでも、妹を優先させるように頼んでいる。
「で、でも、お兄ちゃんのほうが、傷が……」
「いい。サシャを……サシャを助けてくれ……サシャを……」
「魔王! 悩んでいる暇は無いわ。サシャからやりましょう」
魔王が詠唱をやめてしまったので、テレージアの魔法はキャンセルされてしまった。魔王もこのままでは、二人とも命を失うと感じ、サシャを優先させる。
そうしてテレージアの治療魔法【癒しの風】が完成すると、サシャは温かい光に包まれ、傷が治っていくのだが……
「うそ……なんで完全回復しないの?」
テレージアの魔法は強力なのに、傷が治りきらない。その言葉に、魔王も取り乱すが、姫騎士が力強く割って入る。
「いまは応急手当でいい! 次は勇者殿だ!!」
「そ、そうね……」
こうして勇者も治療するのだが、完全回復しない。それほど二人の傷が深かったのであろう。しかし、命は取り留めた。何度も【癒しの風】を使えば、完全回復するだろう……
テレージアと魔王はそう考えて、もう一度サシャを治そうとするのだが……
「くふっ。くふふふ。勇者が二人とも気を失っているとは、好都合ですね」
突如、気持ち悪い笑い声が聞こえ、手が止まってしまう。
「ライナー兄様??」
そう。姫騎士が言う通り、その正体は、長兄と呼ばれていた人物。だが、背中から黒い羽を生やしていた……
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