183 / 187
25 激闘?
183
しおりを挟む沖に向かった勇者を中心に巨大な爆発が起こり、大陸に向けて津波が発生する。その津波には、サシャが対応。
転移魔法で岸に立ったサシャは、爆発魔法を撃ちまくり、逆向きの津波を作って相殺する。
そうして津波が落ち着くと、サシャの肩に乗るおっさんテレージアはぐふぐふ笑う。
「ぐふふ。あの二人、どうなったかな~?」
「ま、なるようになるんじゃね」
「あれ? さっきまで嫌がっていたのに、どうしたのよ~?」
「ウチの見えないところなら、もういいしぃ」
「な~んだ。つまんな~い」
テレージアは修羅場を見たかったららしく、残念そうな声を出す。
「てか、あんたはいいしぃ?」
「あたし??」
「ウチは遠くの音を聞く魔法を使えてね。あの夜、クリクリの告白も、コリッちの告白も聞いてたんだしぃ~?」
「なっ……」
立場は逆転。テレージアは言葉を失い、サシャは「にしし」と笑う。
「もちろんテレッちの告白もだしぃ。一番ハッキリ言っててかっこよかったしぃ」
「うわ~! 忘れて~~~!!」
「にしししし」
こうして二人は騒ぎながら、勇者の帰りを待つのであった。
一方その頃勇者は、騒ぐキタシにキスを迫っていた。
「や、やめましょ? 私は元々男でしてね。女性が好きなんです」
「ちょ、じっとしてろよ」
「ですから、あなたは魔王とキスをするつもりでしょうけど、実質、男とキスする事になるのですよ?」
「あ~。飲み込んでしまっただろ」
顔を振りまくるキタシの言葉は聞く耳持たず。勇者は口の前にアイテムボックスを開くと、魔界産のトマトを丸々口に含んで軽く噛む。
「ん~~~」
「ですから~! ムグッ!?」
そしてキタシからしたら最悪な出来事が起こる。キタシの顔の動きを読み切った勇者のキス。舌を入れ、固く閉ざした唇を開き、先ほど含んだトマトを流し込む。
「ん、んん~~~!!」
すると、勇者のディープキスで、トマトを飲み込んでしまって苦しむキタシ。そうして全てのトマトを流し込んだ勇者は、キタシから口を離して顔を見る。
「な、なんですかこれは!?」
「どうだうまいだろ? 魔界で精魂込めて作られたトマトの味は」
「味の話をしてません! ぐああ。魂が、魂が体から剥離されていく……ぐああああ」
「剥離?? よくわからないけど嫌がってるみたいだし、もう一個、行っておくか」
「やめ、やめて……ぐあああああ」
勇者は宣言通り、トマトをキタシに注入すると、さらに苦しそうな声をあげる。
何故、キタシが苦しんでいるかと言うと、トマトが弱点……と、言うわけでなく、トマトに含まれている成分が弱点なのだ。
その昔、魔王と結婚した勇者は、キタシの弱点を掴んでいた。キタシの弱点と言うには言い過ぎた。その時にはキタシの姿を確認していなかったので、魔獣の弱点だ。
この魔獣も、キタシに作られていたので、弱点が同じだったのだ。
勇者が魔王と結婚したあとにまずした事は、魔界に魔獣が入り込まないようにすること。研究の末、ある物質を混ぜた水で木を育てると、魔獣避けになる事に気付いた勇者は、死ぬまで育て続けた。
その物質とは、勇者の血。
仮に名を付けるとするならば、勇者成分としておこう。この勇者成分が含まれた木には、端末の体を弾く効果もあり、魔界への侵入を阻止したのだ。
それを知ってか知らずか、勇者は遺言を残す。
自分の死後、亡骸は燃やして灰にし、魔界の肥やしにしてくれと……
その願いに応えた元魔王は、魔界の至る所で散骨し、勇者成分が蔓延する土壌となったのだ。この勇者成分には、魔物の殺戮衝動を減らす効果もあり、野菜を食べた魔物は穏やかになった。
それだけでなく、魔物を元の体に戻す効果もあり、長い年月野菜を食する事で、魔物は人族の体に近付く事となったのだ。
この野菜を少量食べた事で端末の意識が飛び、ラインホルトの意識が表に出た事を魔王が記憶していたので、勇者に魔界産野菜を食べさせろと言ったのだ。
二個目のトマトを飲み込んだキタシは、体から力が抜け、気を失うが、違う人格が目を覚まし、目をパチクリする。
「ん、んん~! んんん~~~!!」
勇者にキスをされたままでは何を言っているかわからないが、魔王が目覚めたのだ。
「どうだ? うまいか??」
「美味しいですけど、ファーストキスが、トマトの味になっちゃいました~~~」
勇者の問いに、涙目で答える魔王。
「ステファニエ!? ステファニエだよな??」
「そうですけど……どどど、どうしてキスなんて」
意識を取り戻したが、動揺が隠せないようだ。
「野菜を食べさせるのに、どうしてもしなきゃダメだったんだ」
「と言う事は……人工呼吸のようなもの……」
動揺は収まり掛けるが、やや残念そうにする魔王。
「それよりアイツは? まだ体の中に居るのか!?」
「あ! はい! 何か居る気がします」
「じゃあ、野菜を……」
勇者は、何故かニンジンスティックを口にくわえて魔王に近付ける。
「も、もう大丈夫です! 一人で食べれます!!」
「そっか。じゃあ、これを渡しておくな」
「ありがとうございます……」
「岸に戻ろう!」
こうして野菜スティックを受け取った魔王は、少し残念そうにしながら、勇者にお姫様抱っこされて岸に戻るのであった。
勇者は鼻をヒクヒクすると、走る進路を変更。サシャとテレージアの待つ岸に飛び乗る。
「兄貴!?」
「魔王!!」
勇者と魔王の登場に、サシャとテレージアは近付こうとしたが、一定の距離を残す。
「ただいま戻りました。それと、心配もおかけして申し訳ありません」
勇者から降りた魔王は、深々と頭を下げる。
「や……やった! 勇者がやったのね!? 魔王~~~!!」
「わ!」
テレージアが泣きながら魔王に飛び付く中、サシャは勇者に近付き、胸に軽くパンチする。
「やるじゃん。ちょっとは見直したしぃ」
サシャに褒められても、険しい顔を崩さない勇者。
「まだだ。まだ、アイツはステファニエの中に居るんだ」
「なんで!? 助けたんじゃなかったしぃ!?」
「よくわからないんだ……とりあえず、ステファニエは野菜を食べ続けてくれ」
「あ、そうでした! カリカリカリカリ」
勢いよく野菜スティックを食べる魔王はさておき、勇者はサシャ達に事の顛末を説明する。
「ふ~ん……じゃあ、一生野菜漬けなんだしぃ」
勇者から話を聞きおえたサシャは、ドラッグ漬けのように呟いて魔王を見る。
「その言い方は、なんだか私がお漬け物みたいだからやめてくださ~い」
だが、魔王は漬け物にされたと思ってツッコム。しかし、生野菜を食べ続ける魔王の体調が悪くなる。
「うぅぅ。アゴが痛くなって来ました。お兄ちゃ~ん」
いや、野菜が硬かっただけのようだ。
「ああ……鍋でもするか?」
「はい! お肉は極少量でお願いします!!」
「あたしも食べる!」
「ウチも腹減ってたんだしぃ」
こうして、まだ全てが解決していないのに、鍋パーティーを始める勇者達であったとさ。
0
あなたにおすすめの小説
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる