銃の知識ゼロの世界で弾丸補充スキルを授かった冒険者、Bランクパーティにクビにされる~銃を手に入れてから狙撃無双で英雄と呼ばれる件~

ma-no

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二章 逃亡生活

061 大規模狩りの終わり

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 フレズベルクと戦い初めて3度目の突撃。通り過ぎたあとには、シモンが頂上のはしに倒れていた。

「シモンはん!」
「お兄さん!」

 そこに心配するプックとユーチェは駆け寄ってしゃがみ込んだ。

「つつつ……」
「大丈夫でっか!?」
「なんとか……いまのはヤバかった~」
「「よかった~~~」」

 シモンは風圧で吹き飛ばされて転がっていただけ。プックたちは同時に安堵の声をあげた。

「それにしても、こんなこと続けていて勝てますのん?」
「勝てる! ヤツの左目を潰してやった! 取り巻きも残りわずかだ!!」
「「「「「うおおぉぉ~~~!!」」」」」

 プックの問いにシモンが大声で答えると、それが聞こえたエルフの士気は爆上げだ。実際問題、100羽近くいた取り巻きは30羽を切っているのだから目で見てわかる違いだからだ。

「あとちょっとってことやな。ほな、きばりいや~」
「ああ! ありがとう! 絶対に勝つぞ~~~!!」
「「「「「うおおぉぉ~~~!!」」」」」
「テンション高っ……」

 シモン、死を3度も乗り越えているからハイになってる様子。プックから満タンの弾倉を2個受け取ると、高々と上げてエルフを鼓舞するのであった。


 ホーンホークはフレズベルクの突撃に巻き込まれまいと離れていたが、体勢が整ったら突撃。この距離ならユーチェの風読みは必要ないので、シモンもユーチェも個別に攻撃をしている。
 他のエルフも遠距離から魔法や弓で攻撃して次々とホーンホークを落とし、プックも目につく集団に向けてサブマシンガンを乱射。撃墜数は2位に躍り出る。

 しかし、その乱射があだに。時々弾は補充してもらっていたが、シモンを優先していたから尽きてしまった。
 なので一度全体を見てから補充しようとしたけど、フレズベルクが見当たらない。まさかと思った場所に視線を持って行くと、プックは焦り出した。

「シモンはん! 上から来ますで!?」
「上だと!?」

 その声を聞いたシモンが見上げると、フレズベルクはすでに突撃モーションに入っていた。

「魔法!? 中央から離れろ!!」

 さらには、空から風の刃の乱射。シモンは皆を避難させて、空に銃口を向けた。

「くそおぉぉ!!」
「キエェェーーー!!」

 シモンは引き金を強く引くが、次の瞬間には風の刃が降り注ぎ、フレズベルクまでも頂上に突撃して、爆発音と凄まじい爆風が吹き荒れるのであった……


「シモンはん!?」

 砂煙の上がるなか、岩肌に隠れていたプックがシモンを呼んだが返事がない。それから視界が少し晴れると、フレズベルクの足元にシモンが転がっている姿があった……

「シモンはんが死んでまう!? 誰か助けてや!!」

 プックのサブマシンガンの弾丸は尽きている。だからエルフに助けを求めたが、全員、血塗れのフレズベルクに恐怖して動けない。

「もうええ! あーしが助けたる!!」

 誰も動かないなら、プックがやるしかない。収納バッグからショットガンを取り出して、フレズベルクの顔面目掛けて引き金を引いた。

「プック……ナイス! 両目は潰れた! あとは剣を突き刺すだけだ! やれ~~~!!」
「「「「「お……おおぉぉ!!」」」」」
「もう一発オマケや!!」

 フレズベルクが散弾を喰らって仰け反ったのを見逃さなかったシモン。最後の力を使って半自動式拳銃を連射しながら怒鳴り散らすと、その声に呼応したエルフは同時に飛び掛かるのであった……


「俺たちの勝ちや!!」
「「「「「うおおぉぉ~~~!!」」」」」

 エルフたちに串刺しにされたフレズベルクが倒れると、残りのホーンホークは来た方向に飛び去る。その姿を見たユドークスたちは勝鬨かちどきを上げた。
 プックはそこに参加せずに、大の字になって倒れているシモンに駆け寄った。

「シモンはん。血みどろやけど大丈夫でっか?」
「なんとか……俺の収納バッグに入ってる回復薬飲ませてくれ」
「チョイ待ちや。しっかし、最後は肝を冷やしたで~」
「痛い。もっと優しく。痛い痛い」

 シモンの収納バッグは背中の腰辺りにあったので、プックはゴロンと引っくり返して回復薬を取り出す。そして雑に飲ませながら、最後の攻撃は何があったのかと聞いている。

「あの風魔法の中を全部避けながら撃ってたんでっか……」

 どうやらシモンはアサルトライフを上に向けて、ステップだけで風の刃をギリギリかわしていたとのこと。しかしフレズベルクの突撃はかわしようがなかったらしい。

「フレズベルクの突撃を避けたまではよかったんだけど、目の前が爆発して、石のつぶてを全身に喰らってこの様だ」
「プッ。プーシー6号を自分の身で体験したんでっか」
「笑うなよ~。デカイ石が何十個も迫るのがスローモーションで見えたんだぞ? しばらく夢に見そうな恐怖体験だ」
「よかったやないか。走馬燈じゃなくて。あははは」

 プックに笑われながら回復薬を飲ませてもらえば、シモンも動けるぐらいは回復した。体力は回復しないので、そのまま横になったまま喋っていたら、ユドークスたちが集まって来て次々に感謝を述べていた。

「こんな狩り、もう二度とゴメンだ」
「やな。このやり方は禁止や。まぁ、これだけ狩ったんやから、1、2ヶ月は肉には困らんやろ」
「全部、保管できるのか?」
「エルフは魔法が得意な者が多いからな。チョチョイと凍らせてやったら問題ないわ」

 今日だけで500羽以上も殺したが、無駄にならないと知ったシモンはホッとすると同時に「エルフ、すげ~」とか思ってる。
 ついでにここに倒れている巨大なフレズベルクはどうするのかと聞いたら、すでに援軍を呼び寄せているとのこと。解体せずに持ち帰るそうだ。

 援軍がやって来たら、ようやく下山。フレズベルクは風魔法で浮かせて、地上に下ろされるのであった。

「楽なのはいいんだけど……このままだと俺たち、英雄みたいに扱われないかな?」
「もう諦めなはれ。こんなに狩ったら隠しようがないわ」
「目立ったら勇者にバレるだろ~~~」

 今日のMVPだからと、フレズベルクの背中に乗せられて下山するシモンとプックであったとさ。
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