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二章 逃亡生活
062 祝勝会
巨大怪鳥フレズベルクの背中に乗って下山したシモンとプックは、地上に着くと大勢のエルフに拍手で出迎えられたので恥ずかしい。
ただし、英雄気分はここまで。シモンたちの経緯を知っているユドークスが解散を告げて、帰りは馬移動となったからシモンは胸を撫で下ろしていた。ここには潜伏目的で来ていたからだ。
村に戻ると、お祭り騒ぎ。大量のホーンホークに浮かれるエルフたちが道を作って戦士の凱旋を褒め称える。
フレズベルクが登場するとその声はさらに大きくなり、頂上で戦ったメンバーには黄色い声援が飛び交っていた。
「鼻の下伸ばしてからに……目立ちたくないんちゃいますのん?」
「雰囲気を楽しむぐらいいいだろ~? 最後尾だから記憶に残らないって」
「エルフの中に人族とドワーフがいたら目立ちまくりやで?」
シモンも馬に乗って手を振っているので、プックの注意。こんなことは人生に二度とないかもしれないからと、シモンは聞く気がなさそうだ。
そうして村の入口まで来たら、ここからシモンたちは徒歩。お馬さんは係の者が牧場に届けてくれる。
村の中央まで進むと、そこにフレズベルクが飾られてエルフが囲み、しばらくすると全員、急ごしらえの壇上に目をやった。
「女王陛下の~。おな~り~~」
コルネーリア女王が現れたからだ。シモンとプックもその後ろに、ユドークスたちと一緒に立たされているので緊張してる。
「皆の者。聞いての通り、数十年振りにフレズベルクが現れたでありんす。その当時は残虐の限りを尽くし、何千人ものエルフに被害があったが、この者たちのおかげで誰1人死者を出すこともなく討伐されたでありんす! 戦士に敬意を!!」
「「「「「わああああ……」」」」」
コルネーリア女王の挨拶から慰労会へと移り、ユドークスから順に労いの言葉が掛けられる。最後はシモンとプックであったが、同時に呼び寄せられて女王を挟むように立たされた。
「一番の功労者はこの人族の男とドワーフの女でありんす。故あって皆には名を明かせないが、2人の協力がなければ、エルフに甚大な被害が出ていたのは確実でありんす。けっして詮索などはせずに、感謝だけしてたもれ」
「「「「「おおきに~~~」」」」」
名は伏せられたが結局めちゃくちゃ目立っているので、シモンとプックは苦笑い。コルネーリア女王と握手をしたら、頭を掻きながら下がって行った。
「さあ、今日は祭りでありんす。いくら食ってもいいが、これからフレズベルクの調理が始まるから、その分は空けておくでありんすよ?」
コルネーリア女王は軽く笑いを取ってから下がるのであった。
ホーンホークの肉は村の至るところで焼かれているから、どこでも食べ放題。シモンとプックもペコペコだから適当に食べようと思っていたけど、ユドークスに拉致られて、コルネーリア女王がいるテーブル席に座らされた。
「お疲れ様であったのう」
「いや、はい……疲れました」
「そう畏まるでない。英雄殿」
「英雄殿って言わないでくれます?」
国のトップから英雄とか言われたら緊張するに決まってる。コルネーリア女王はまだまだ褒めてくれるから、シモンは何も食べていないのにお腹いっぱいだ。プックは気配を消して食べて飲んでる。
「そういえば、ここにいるって言ってよかったのですか?」
コルネーリア女王も潜伏目的でここにいるので、シモンは気になるようだ。
「ホーンホークが次々と運び込まれていたから、フレズベルクもいるのではないかと民も不安になってのう。そんなことになっているのに、女王の妾だけ閉じ籠もっているワケにはなるまい」
「それは~……俺のせいとか言いませんよね?」
「うむ。フレズベルクの逆鱗に触れるような作戦を進言した者と、実行した者には非があるがのう……」
コルネーリア女王が細めた目をユーチェとユドークスに向けたので、2人の顔は真っ青になった。
「ククク。冗談でありんす。フレズベルクはまさに災害なのだから、災害が起こる前に倒せたことは僥倖。さらにおびき寄せる方法もわかったのだから、次に活かせる。これほどの成果を上げた者に処罰を与えるなんて、妾にはできもしまへん」
しかし笑顔で褒められたからには、ユーチェたちからため息が漏れた。
「それでなのだが……シモンの使っている武器、譲ってもらえることはできぬか? もちろんいくらでも出すぞ??」
どうやらコルネーリア女王の本題はここから。場の雰囲気がよくなったところで切り出した。
「すいません……無理です……」
「何故だ? そこのドワーフに頼めば作ってくれるのだろ? フレズベルクに最後に使った武器は、ここの鍛冶場で作られたと知っておるぞ」
「問題はそこじゃなくて……」
「言いにくい話か……皆の者、外せ。妾だけで聞く」
テーブル席に残ったのは、コルネーリア女王、シモン、逃げようとしてシモンに捕まったプックだけ。その他は10メートルは離れて背中を向けている。
国のトップが無防備にここまでやっているのだから、シモンも諦めたように半自動式拳銃を取り出して弾倉を外し、中に残っていた1発の弾丸もガチャガチャと取り出してテーブルに置いた。
「たぶん女王様は、俺の職業のことも耳に入ってるんですよね?」
「うむ。弓使いと聞いてるでありんす」
「それ、嘘です。故郷の王様に言うなと言われていて……」
シモンは自分のジョブは様々な制約とアイテムで秘匿とされていると説明して、銃の話に戻る。
「先ほど説明した俺のジョブ……狙撃手のスキルに、弾丸補充というスキルがあるんです。その弾丸というのが、この小さい物です」
「つまり、これを産み出せる者がシモンしかいないから無理と言っているのか……」
「はい。これを勇者に狙われているんです。ハッキリ言って、これは危険な物です。子供でも大人を簡単に殺せる物です。勇者の世界では、これを使って戦争をしていたと思われます。簡単に増やしていい物ではないと、俺たちは話し合いました。どうか、諦めてください」
シモンが真摯に説明して頭を下げるとプックも続く。するとコルネーリア女王は拳銃に手を伸ばし、何やら考えてから拳銃を置いた。
「あいわかった。フレズベルクと戦える物が五万とあれば、それは争いの原因になりんすな。無理を言って悪かった。忘れてくれでありんす」
「「はいっ」」
説得は成功。シモンとプックは、銃の代わりとばかりにまだ出していない勇者パーティの情報を喋りながら、新しい料理が来るのを待つのであった。
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